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魔女の末裔、怪盗となり月夜に舞う  作者: ぽよみ30号
浪速の竜は退がらない

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花哭美蘭


突如として笑顔が消えた美蘭は、二人に厳しい目線を向けながら話し始める。



「あーしら『同盟』っしょ?なのに『連携は不可能』?詩音、それ本気で言ってるん?」



美蘭は続ける。



「そんでよーすけくんさ、鳥峰家ってことは異能は近接戦闘の肉体派っしょ?花哭家あーしらはどっちかってとサポート系だから、絶対組んだ方が効率良さげだよ?」



「で、ですが姉上!鳥峰家と組むなんて……!」



詩音は姉を止めようと前に出たが、美蘭は右手の指先についている鋭いネイルたちを一つに束ね、詩音の頬に突き刺した。



「うごおっ!!」



詩音は姉のネイルのあまりの鋭さと痛さに悶絶し、その場に倒れた。



「パパ達がやってる家同士の因縁だとか、人間に勝ったあとにどっちが上に立つか、とかしょーもないいざこざを、あーしらまで持ち込んでどーすんの?」



美蘭は陽介の方に振り向き、驚いた顔を浮かべている陽介の腹にもネイルを突き刺した。



いだっ!!」



「この前はWitch Phantomとかいう野良魔族に、陽奈ちゃんが引き分けたんでしょ?ってことは、鳥峰家の戦闘力に負けない魔族が敵側にいるってことじゃん?これってマジ激ヤバだからね?」



美蘭はビルから下を見下ろし、黒いスーツを着た男たちが、自分たちについた種を強引に引き抜き、潰し終わったのを見た。



「それに、ああやって詩音の寄生種やどりだねを引き抜いたり、潰したりするような頭おかしめな人間だっているわけじゃん?魔族同盟パパたちがナメてるだけで、敵側はあーしらが思ってるよりもずっと強いよ。あ、ヤバ、目合っちゃった」



美蘭は、下にいる黒い服の集団のなかの一人──長身で眼鏡をかけた、一際目つきが鋭い男と目が合い、慌てて頭を引っ込めた。



「だから、詩音さ──」



美蘭は倒れている詩音を見下ろし、自分の魔具である剪定鋏せんていばさみを懐から取り出し、詩音の眼前に突き付けた。



「このままじゃ──負けるよ?魔族同盟あーしたち。あんたたちが馬鹿にしてる、人間なんかに」



「「…………」」



詩音と陽介──魔族同盟を代表する二家の長男は、美蘭の話に言葉が出なかった。


父親たちが、そして他の家の代表たちもがまだ感じていない危機感──しかし確かに自分たちが感じていた違和感を、美蘭は言葉にしてみせたのだ。



「……では姉上。我々が協力するとして──具体的な作戦は?」



「え?あーしは無理だよ?作戦とかそんなんは」



「は?」



「あーしは今の魔族同盟あーしらが『なんかヤバめ』って思ってるだけで……作戦とかそんなんは無理」



「……すげえな、お前の姉ちゃん」



苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる陽介に、詩音は「謹んで謝罪する」と小さく頭を下げた。



「あ!でも作戦テーマはあーしが決めっからね!!テーマは『みんな仲良くアゲアゲで行こ!』で!!」



「「…………」」



詩音と陽介は美蘭に対して「意味が分からない」といった顔を浮かべたが、二人は同じ顔を浮かべた。

つまり、美蘭を通して初めて二人の気持ちは一つになった。


美蘭は花哭家の後継候補でもなければ、扱える魔具も強力とは言えない。


だが彼女が持つ「コミュニケーション能力」は魔族同盟に大きな力を与え、そしてこれから彼らを相手に戦う月詠家にとって、非常に厄介なものとなるのだ。





───────────────────




「…………」



竜司は組員たちの種を潰し終わったあと、種が全て上から撃ち込まれたような角度であったことに気がつき、この種を自分たちに向けて撃ち込んだ者を探すために上を向いた。



(……なんや?あいつ)



すると、派手な化粧をした金髪の女と目が合った。


竜司と目が合った女は慌てて隠れるように頭を引っ込める。


竜司の勘は、その女が今回のこの種の件に関わっていると判断した。



「よし、ビルの屋上に行ってあの女から話を──」



竜司が仲間たちにそう言おうとしたそのとき。



「グオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!」



豪月組の組員たちから離れた場所で、種を撃ち込まれた人たちが次々と植物の怪物のような姿へと変化し始めた。



「ッ……組長、あれ……!!」



「あァ。ワシらは潰しといてよかったのォ……」



「もしも潰してなかったら……」



「今頃ああなっとった、ちゅーことやな……」



剛田と竜司の会話を聞き、種が体に当たった組員たちは戦慄した。


もしも竜司と剛田、骨川が自分たちの種を潰してくれていなければ、自分たちは今頃あの植物の怪物へと変身させられていたのだ。



「二手に分かれるぞ!ワシと骨川、剛田はこのビルを登る!残りはあっちであの植物のバケモンをなんとか取り押さえェ!元々は一般人カタギの方たちや、絶対怪我させたらアカンで!」



「ま、待ってくれ!兄貴!俺もそっちがええ!!」



虎助は植物の怪物と戦わされるのは嫌だと思い、慌てて竜司に声をかけた。

虎助は、竜司あにがビルに登るのは高いところから現場全体を見ながら組員に指示を出すためだと考えた。



「虎助……!」



竜司は感心した。

ビルを登れば、おそらくこの事件の犯人と相対することになる。


人間をあんな怪物へと変えてしまう力を持つ犯人と戦う──それは、地表であの植物の怪物たちを相手にするよりもずっとずっと危険な戦いに身を投ずるということ。


虎助の男としての覚悟を、竜司は買った。



「よし、ほんなら虎助もワシらと一緒に行くぞ」



「あァ。急ごうや兄貴」



このままだと植物の怪物たちがこっちに来てしまう。虎助は急いでビルを登って安全地帯へと行きたいと考えた。



「おお、虎助……!」



竜司は、虎助が急いで犯人の元へと行きたいと言うのを見て感心した。


弟はこの件を一刻も早く解決したいと燃えている。あの臆病な弟が、いつのまに成長したのだろうか。



「よし、行くぞ!」

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