第十五話《遊園地に行ってみた!お化け屋敷編》
遊園地に来て、ジェットコースターや、コーヒーカップに乗って身心ともに取り乱していた白雪。
ジェットコースターでは頭が壊れ、コーヒーカップでは箱娘の暴走で少し吐いてしまったらしい。
そんな白雪が今、お化け屋敷に挑もうとしている。しかも、箱娘と白雪は幽霊が嫌いらしい。本当に大丈夫なのだろうか?しかも、今から入るこの場所をお化け屋敷と認識していないので失神でもしてしまうのではないのか?
まあ、いい。だって、すごく面白そうだから!
お化け屋敷の外装はなかなか良く出来ている。ボロボロの旧校舎をイメージした本格的なお化け屋敷だ。田舎の使われていない廃校を意識して造った感じです。
「げ!お化け屋敷ってフリーパス券が使えないのか!えーと、一人千円……地味に高い」
「え!中原さん。この魔法の券はここでは効力を発揮出来ませんの?デスワー」
「中原……私は入りたい!そしてハイテンションになるのだ!」
白雪はポーチからフリーパス券をしまい悲しそうな顔をし、箱娘はそんな事をお構い無しに横の受け付けへ歩いていった。
「中原、お金をカモーン」
「しょうがない。一回だけだからな」
「箱娘!中原さんにありがとう、でしょ!デスワー。なんかすみませんデスワー」
白雪は箱娘の頭に突っ込みをいれ、頭を下げる。
「さて、お金も払ったし中に入るぞ」
「どんな乗り物かなー」
「なんか、怖い建物デスワー」
入口に入った俺達は上靴置き場で足を止める。
「本当にここが乗り物なの?デスワー」
「そうだね。ただのボロボロな建物じゃん」
天井は剥げ落ち、床には上靴がいっぱい散らばっている。
「なんか靴がいっぱい落ちてるよ」
箱娘が落ちている上靴を一つ拾った瞬間、奥の廊下から小さい声が聞こえてきた。
『わ……たし……の上靴……どこ……』
「な、なんか聞こえたぞ白雪!」
「そうですか?デスワー。別に何も……」
白雪がそう言って廊下の方向を向いた瞬間!
『ワーターシ……ノクツハ……ドコ。ねえ!どこなの!』
目をカッと開き、口が裂けた少女が白雪の目の前にいきなり現れた。
「………」
白雪は無言でその少女を見ていた。いや、頭がフリーズを起こしているのだ。
「………い………いやあああああああ!出た!出た!デスワアアアアアア!」
白雪は箱娘の手を引っ張り、近くの階段を駆け上がる。
「幽霊デスワアアアアアア!口がクワッって開いてましたデスワアアアアアア!」
「ちょっと!白雪。手を離して。引きずってるから!私を引きずってるからああああ!!」
箱娘を引きずりながら逃亡する白雪。箱娘は色んな場所へ頭をぶつけながら行ってしまった。
『ウワグツ……ウワグツ……ワタシノウワグツ』
そして、俺の前にはまだ、上靴少女が俺を脅かそうと頑張っていた。
「あのー、連れが先に行ってしまったので失礼します。お仕事頑張って下さい」
『……はい。すみません。まさかあんなに驚くなんて。こっちもビックリしちゃいました』
お化け役の少女はそう言って床にあった隠し部屋に身を潜めた。
「さてと、どこに行ったんだ?かなりのスピードで逃げていったからな」
俺はアクビをしながら階段を上がっていく。
そして、白雪と箱娘は……。
「はぁはぁ……びっくりしたデスワー」
「私のほうがびっくりしたよ!頭をぶつけて、体は引きずられたんだけど!」
「すみませんデスワー。いきなり目の前に幽霊が出たから取り乱してしまいましたデスワー」
「確かにそうだね。この建物は一体?そしてここはどこ?」
箱娘と白雪がいる場所は音楽室。
ピアノに、昔の音楽家の絵。周りには机と椅子が並べられていた。
「さっさと出ましょうデスワー。気味が悪いデスワー」
「そうだね。早く中原と会わないと」
箱娘達が音楽室を出ようとした瞬間、出口の扉がいきなり閉まった。
「な、今度は何!デスワー」
「この!この!開けええええええ。はあはあ……駄目だ。開かない」
《ピロローン♪》
次はいきなりピアノの音が鳴りはじめる。
「誰もいないのにあの楽器……動いてますデスワー。これは夢ですよねデスワー」
「いや、白雪。これは現実だ」
ピアノの音とともに机と椅子が空中に浮かびはじめた。
「つつつつつつ机と椅子が浮かんでます!デスワー」
「白雪ったらここここここ怖がりすぎだよ」
箱娘と白雪はお互いに抱き合いその光景を見ていた。
『ココカラサレー。サラヌナバ……エイエンニ……ノロッテヤル……』
部屋のスピーカーから男の声が聞こえてくる。
「去ります!去ります!」
「ううう、もう、帰りたいデスワー」
半泣き姿の白雪を見て、箱娘はドアに手をかけた。
「あ、開いた!白雪、逃げるよ!」
「中原さああああん。どこにいるんですかデスワー」
ダッシュで廊下を走り抜く。しかし、今度は目の前に白い服を着た女性が仰向けに倒れていた。
「えーと、そこの人。大丈夫か?」
「し、死んでいるの?デスワー」
箱娘は倒れている女性にゆっくりと近づき、体を恐る恐る触る。
『た、た、た、た、たたたたたたたたすすすすすすすけてえええええええ!!』
いきなり箱娘のワンピースを掴み、叫ぶ女性。顔は真っ赤な液体で濡れており、歯は真っ黒。手の爪は剥げていた。
「うわあああああ!!白雪!助けてええええええ」
「もう、いやあああああああデスワー!」
白雪は持っていた白い傘を振り上げ、女性の頭に狙いを定める。
『え?ちょっと、お客さん!何を!……ちょっと待って!……やめてやめてやめて……ガハ!』
傘が頭に直撃した女性はタンコブをつくりそのまま失神してしまいました。
「逃げるよ、白雪」
「怖かったデスワー」
―――
――
―
箱娘と白雪がいきなりいなくなったので、俺は一人でお化け屋敷を探索している。
「あの二人、どこに行ったんだ?意外に広いから全然見つからないんだけど」
俺が辺りを見回しながら歩いていると、白い服を着た女性が廊下に倒れていた。
「あー、よくあるパターンだな。近くにいったら脅かすシナリオか」
俺は女性のすぐ横まで近づいたが女性は何もしてこなかった。
「何もしてこない。何これ?仕事放棄?」
全く、ちゃんと仕事をしろよ。寝てるのかな?まあ、いいや。先に進もう。
―――
――
―
「ここは、トイレだな」
「早く外に出たいデスワー」
箱娘と白雪がいるのは三階の女性用トイレ。蛇口からは水滴、床は汚れており、トイレのドアが一つ閉まっている。
「なんでほかのドアは開いているのにあのドアは閉まっているのかな?」
「そんな事どうでもいいデスワー。早く出ましょうデスワー」
箱娘と白雪がトイレから出ようとした瞬間、閉まっているドアの奥から少女の声が聞こえてきた。
『しくしく……しくしく……誰か……ここから……出して……しくしく』
その声に体が固まる二人。お互いに目を見て硬直している。
「だ、誰か閉じ込められているのかな?」
「わ、わ、私はそんなの知らないデスワー」
『しくしく……お母さん……苦しいよ……しくしく……誰か出してよ……』
「やっぱり誰か閉じ込められているんだ!よし、白雪。ファイト!」
「私が行くんですの!デスワー」
『……お母さん……しくしく……お父さん……しくしく……』
その少女の声を聞いた白雪は勇気を振り絞りドアに近づいた。
「だ、大丈夫ですよデスワー。今、開けてあげるからデスワー」
白雪はドアノブに手をかけてゆっくりとドアを開けた。
「ちゃんと開きましたデスワー。ほら、一緒に……」
しかし、開けたドアの先には誰もいなかった。それを見た白雪はまた硬直してしまう。
「どうした?白雪。早く泣いている子を連れ出して行くよ」
「……いない……デスワー」
「え?どうしたの?」
「誰もいません!デスワー」
白雪は箱娘の手を引っ張って、全速力で走り出した。
「ここは一体何なのデスワアアアアアア!!」
「腕がもげる!腕がもげる!お尻引きずってる!お尻引きずってる!」
箱娘は廊下にお尻を引きずられながら叫んでいた。しかし、そんな事は白雪の耳に全く入ってこない。
そして、白雪が走っているすぐ前に、光が漏れるドアを発見した。
「そ、外デスワー!」
「お尻が焼けるううううう!」
ドアを開け、中に入った二人は見てしまった。
部屋にいた幽霊達の姿を。
顔がない男の幽霊。顔が血で真っ赤に染まっている女の幽霊。ランドセルを背負っている少女の幽霊。傘に目と口がついて浮いている幽霊。そして、その他多数の幽霊達。だが、ちゃんと幽霊達は《ゴール》と書かれた紙を二人に見せていた。
しかし、箱娘と白雪は……
「お……し……り……が……焼け……た……」
「……ブクブクブク……」
箱娘はお尻のダメージによりノックアウト。
白雪は恐怖で口から泡を吹きノックアウト。
『お、お客さん!大丈夫ですか!』
『誰か人を呼んできてくれ!』
慌てる幽霊役のスタッフ達。
「あ、やっと見つけた。おーい、箱娘、白雪ちゃん。ん?二人とも何で寝てるんだ?あのー、連れなんで。すみませんね」
倒れている二人を肩に乗せ、俺は『あ、大丈夫ですから。すみませーん』と言って逃げ出した。
―――
――
―
「は、お尻!」
「いやああああああ!は!ここはどこ!デスワー」
ベンチに寝ていた箱娘と白雪は一緒に意識を取り戻した。
「お!やっと起きた……え?何?」
いきなり箱娘と白雪が俺に抱きついてきた。
「中原、お尻があああああ!私のお尻がああああ」
「怖かったですデスワー。ここは外なんですねデスワー」
箱娘が言っているお尻の意味は分からないが、白雪はよっぽど怖かったらしい。
「二人ともいなくなったから俺は一人で寂しかったよ」
「中原!あれは何なんだ!」
「そうですデスワー。幽霊がたくさんいましたデスワー」
「当たり前だろ。だってお化け屋敷ってそういう場所なんだから。あ、やっぱり分かってなかった?」
「じゃあ、あの幽霊は?」
箱娘は目を丸くしている。
「幽霊に変装している人間だよ。ははは!全く、お子様だなー」
それからはスローモーションのようだった。
箱娘の空中蹴りと、白雪の傘が俺を地面に叩きつけた。
「ぐふ!」
「それを先に言え!」
「デスワー!」
お化け屋敷より……お前らのほうが……怖いぜ……
白雪
「ううううう!怖かったデスワー」
箱娘
「私はお尻が『焼きお尻』になるところだった」
中原
「焼きお尻?焼きおにぎりみたいだな」
箱娘
「味は保証しないよ」
中原
「いや、冗談だから。お尻をこっちに向けるな」
白雪
「まだ、震えが止まりませんデスワー」
箱娘
「震えより私のお尻が真っ赤になってるんだけど!」
白雪
「……たいしたお尻ではないでしょうデスワー」
箱娘
「む―――、私のお尻をなめるなよ!」
中原
「はあー、喧嘩するなよ」
箱娘、白雪
「中原のせいだ!」
「そうですデスワー」
中原
「理不尽だ」




