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黒い箱の少女はあなたを待つ  作者: 博多っ子
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第十三話《ポツリポツリと雨が降る》

 今日は生憎の雨。最近、快晴ばかりだったのでたまにはいいかもしれない。まあ、気分は少々下がってしまうけど。


 俺、箱娘、白雪は雨の中、散歩中です。

 なぜ雨なのに散歩かというと……


「雨の日の外はまた違った風景があるんだよ!だから中原、散歩に行こう!」


 ……なんて言う事を箱娘が言ったもんだから気がついたら外に出ていました。


 俺はビニール傘をさして、箱娘は黒色のカッパを着ている。白雪ちゃんはいつも持っている白い傘をさしています。


 箱娘は上機嫌に何かを歌いはじめた。


 “でーん”“でーん”むしむし♪かたつむりー♪


 “おーまえのあたまはどこにあるー”♪


 “つのだせ”♪“やりだせ”♪“あたまだせ”♪


 スキップをしながら歌う箱娘。それを後ろから見ている白雪。


「雨なのに元気ですねデスワー」


 白雪は白い傘をクルクルと回しながら少し笑っていた。


「よくデンデン虫の歌なんか知ってるな。俺なんか幼稚園で歌った覚えしかないな」


 久しぶりに聞く歌だ。雨の日にはよく小さい時に鼻歌まじりで歌ったものだ。


「私はこの歌大好きだよ!昔、ある人に教えてもらったから!」


「そうですわねデスワー。私も一緒に教えてもらいましたデスワー」


 白雪は箱娘の手を握り、それに気がついた箱娘はさらに強く握った。


「歌おうぜ!白雪!」

「はい!デスワー」


 二人は、雨音に負けないくらいに声を出す。


 “かーえーるーのーうーたーがー”♪


 “きーこーえーてーくーるーよー”♪


 グワッ!グワッ!グワッ!グワッ!


 ゲロゲロ、ゲロゲロ、グワッ!グワッ!グワッ!



 今度はカエルの歌か!これまた懐かしいな。


「お!中原。雨の日の定番の生物を発見!」


 箱娘が指をさした場所を見てみると……


 地面を這っているその姿は……げ!あの動き、あの形、あの目玉!


「ナメクジじゃねーか!」


「中原はナメクジが嫌いなのか?」

「可愛いデスワー♪」


「いや、無理無理無理!気持ち悪い」


 箱娘はナメクジを手掴みで触り俺の所に持ってきた。


「ほれ!可愛いぞ」


「おい、箱娘!ってぎゃああああ!来るな!触るな!戻しなさい!」


「中原さん、ナメクジに失礼デスワー」


「白雪ちゃん、これのどこがいいの?」


「……ヌルヌルしてる体がいいデスワー♪」


 白雪は箱娘からナメクジを受け取りそっと、もといた場所に戻した。


「この雨を満喫してくださいデスワー。ばいばいデスワー」


 ―――


 ――


 ―


 そして、再び散歩を開始したんだが……


 やばいぞ!やばいぞ!やばいぞ!


 雨と風が凄まじくなってきたぞ!


 風で木は大きく揺れ、雨はバケツをひっくり返したような大雨になってきた。


「箱娘!白雪ちゃん!ちょっと避難するぞ!」


 俺はこの辺りの場所はよく知っている。確か近くに小さい洞窟があったんだよな。


「やべ!雷も鳴ってきたな。少し急ぐぞ」


「了解しました!」

「デスワー」


「よし、二人とも走るぞ」


 そう言って俺は前を向いて走ったが横に箱娘と白雪の姿がない。後ろを振り向くとテクテクとゆっくり走る二人の姿があった。


「お腹が減って力が出ない」


 箱娘がア○パ○マンみたいな事を言いはじめやがったよ!


「私、走るのは嫌いデスワー!だってこれが全速力なんですからデスワー」


 マジかよ白雪ちゃん!


「分かったよ。おい、箱娘!オンブしてやるから早く来い!白雪ちゃんはダッコでいいか?」


「オンブは……………………好きだ!!」


 なぜ間をあけた!


「ダッコは……………………何も思いつきませんわデスワー」


 白雪ちゃああああん!なんか、めんどくさいです!


 俺は箱娘をオンブし、白雪ちゃんはダッコして

 、そして片手に傘を持ちながら全速力で走りまくった。


 なぜ全速力かというと……


 《ピカー!!ゴロゴロ!!》


 すぐ近くで落雷まであってるからだ!


「うひゃあああ!今、近くで雷が落ちたね!」

「雷は恐いデスワー」


「大丈夫!お姉ちゃんが守ってあげるから。私は雷なんか全然恐くないね!」

「箱娘、ちょっと格好いいデスワー」


「今、俺がお前らの分も走ってるんだけど!」


 俺がハァハァと息を荒立てながら走ってるのに箱娘は白雪に姉貴としての威厳を語っていた。


「ハァハァ……あ、あったぞ」


 俺は茂みの中をかき分けて洞窟の中に走り込んだ。


「ゼー、ゼー、ゼー、うぐ、走りすぎて気持ち悪い」


 箱娘と白雪は俺からピョンと降りると、背中を擦ってくれた。


「ご苦労様、中原」

「背中をサスサスしますデスワー」


 少し落ち着いたところで俺ら三人は座りながら外の様子を眺めていた。


「やまねーな」

「ゴロゴロとうるさいぞ雷!」

「雷……嫌デスワー」


 俺の傘は役目を全く果たしていないな。服がビチョビチョだぞ。


「は、は、はっくしゅん!!」


 やべ、夏とはいえ濡れると少し寒いな。


「寒いのか?中原」

「私も傘だけだったから濡れて寒いデスワー」


「よし!こうなったら『集まってポカポカ大作戦だ!』みんな集まれ!」


 箱娘はカッパに付いていた胸ポケットに手を入れる。


「じゃじゃあーん!『大きめなタオル』でーす」


 ポケットから出てきたのはバスタオルだった。

 だから、胸ポケットが異様に膨らんでいたのか!


「何でそんな物を持ってきてるんだ?そして、それは俺のバスタオルなんだけど」


「雨で濡れた時にタオルくらい持ってこないとね!」

「さすが、箱娘デスワー!」

「いや、それ俺のバスタオルなんだけど……」


「気にしない気にしない!」

「そうデスワー。じゃあ、みんなで『ぬくぬく』しますデスワー」


「はあー、分かりました」


 そして、三人でバスタオルにくるんで文字通り、『ぬくぬく』しました。


「ね!タオル持ってきて良かったでしょ!」

「ぬくぬくデスワー」

「まあ、寒くはないな」


 やべ、少し眠くなってきたな。視界がユラユラとかすんできた。


「おい中原、おーい、プヨプヨお腹!」

「静かにデスワー。中原さんは寝ちゃいましたデスワー」


「全く、しょうがないな」

「意外と寝ている姿も可愛いデスワー」


 箱娘はタオルから静かに抜け出してカッパを脱ぎ始めた。


「中原が寝ているうちにワンピースを少しでも乾かそうよ」


「そうですわねデスワー。少し服を絞んないとデスワー」


 箱娘と白雪は洞窟の端に行ってワンピースを脱ぎはじめた。


 そして、ハダカになった二人はワンピースを絞りながら小さな声で喋り始めた。


「この姿……何回見ても嫌だね」

「そうですわねデスワー。でも、このワンピースの『まやかしの魔法』のおかげで私達は人間として生きていけるのですからデスワー」

「そうだね。この姿を見たら中原も私達の事、嫌いになっちゃうよね」

「でも、いつまでも隠してはいられないデスワー。いずれか正体が分かる時が来ますデスワー」


 箱娘と白雪はそのまま黙りこんだまま時間だけが過ぎていった。


 ―――


 ――


 ―


「うーん。ふああああ、よく寝た。あれ?箱娘と白雪ちゃんがいない」


 洞窟の中をキョロキョロ見渡したが二人はどこにもいなかった。


 ふと外を見るとさっきの雨と雷が嘘かのように太陽が顔を覗かせていた。


「お!晴れたな。よかったよかった。それにしても二人はどこに行ったんだ?」


 そう思っていたら、外から箱娘と白雪の声が聞こえてきた。


「いやっほーい!晴れた晴れた。お!ナメクジさん。また会ったな!」

「こっちにはデンデン虫さんがいますわデスワー」


 俺が外に出ていくと二人は森の中を走り回っていた。


「おーい、箱娘!白雪ちゃん!」


「あ、中原。起きたか!」

「爆睡していましたので起こさなかったんですデスワー」


 箱娘と白雪は笑顔で走りながら俺に近づいてきた。そして俺の顔の近くに……


「はい、中原さん。デンデン虫デスワー」

「こっちはナメクジだ!」


「ぎええええええええええ!!」


 俺はまた倒れて寝てしまいました。





―――ポツリポツリと雨が降る。


―――それはとても、とても美しく。


―――それはとても、とても愛しく。


―――私は、その雨音を見つめている。






―――ゲロゲロと蛙達が鳴く。


―――それは泣いているの?


―――それは嘆いているの?


―――それは歌っているの?


―――理由を知らず耳を傾ける。


―――だって、それでも……私の心を癒してくれるから。





《一緒の答え》


「私は雨が好きです」

「私は雷が嫌いです」


「私は歩くのが好きです」

「私は走るのが嫌いです」


「私は今が好きです」

「私は過去が嫌いです」


「私はあなたが好きです」

「私もあなたが好きです」


「それだけでも一緒の答えなら」

「私達の一緒の答えなら」


「私は幸せ者です」

「私も幸せ者です」



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