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【連載版】王太子でも聖女でも悪女でもなく、一番の策士が『剣術バカ(嘘)』の私の婚約者の件  作者: 千秋 颯@3/6「選ばれなかった令嬢~」アンソロ発売!
第三章 さよならに嘘の嘘を添えて

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第56話 古代魔法の研究

 その後。

 シャルル様の計らいで彼の研究室内で休息を取らせてもらっていた私は書類などの整理を始める彼の傍で考えを巡らせる。


(大会中、『夢の香霞』を警戒しているグザヴィエ殿下は事前に決めていた人以外を傍に置く事は避けている。私が殿下へ近づけば洗脳の可能性を疑われるだろうし、既に御命を狙われている状態の殿下の心労を増やすべきではない。そもそも、これでは証拠が不十分という事もある)


 シャルル様から預かった手紙にはフォンタニエ伯爵が不仲であるはずのシャルル様を家へ呼び戻す旨の文章が綴られている。

 しかし、何を目的として呼ばれたのかなど、具体的な話が記されていないのだ。


(きっと万が一にでもこれが流出してしまう事を警戒したのでしょうね)


 彼の文面からは家族であるシャルル様を一切信用していないような空気感を感じた。

 恐らくは、自分の都合や利益の為、彼を利用する事しか考えていないのだろう。

 そしてシャルル様もまた、実の父である伯爵に心を許していない。

 双方の関係が如何に凍り付いたものであるのかを、私は改めて理解した。


 現状でフォンタニエ伯爵を捕らえる事は出来ないが、シャルル様の証言は警戒し、調査を進めるには充分な理由と成り得る。


(それに先のシャルル様の言葉から察するに、フォンタニエ伯爵が狙っている研究は彼が手伝っているもの……昨日のフランソワ教授の言葉も鑑みれば、その研究はきっと国が依頼したというもの。であるならば、グザヴィエ殿下であればこの話を聞いただけである程度見当がつけられるはず)


 彼は次期国王だ。

 国規模で動いている政策等に於いて、彼に秘匿される話はない。


(問題なのは、二日目の大会終了後、すぐにこれを殿下にお伝えしたとして、フォンタニエ伯爵の調査が一日で終わる訳がないという事。たとえ今日、ラガルド殿下やフォンタニエ伯爵に動きがなかったとして、最終日にラガルド殿下やフォンタニエ伯爵が研究結果の盗難を考えているとしても、それを直接的な方法で阻止する事は不可能)


 急遽の対策として監視の目は増やしてもらえるだろう。

 学園側で対応が遅れてしまう事でも、王太子からの口添えと国が直接動くとなれば即日で対処可能だ。


(けれど、大勢を配置するという事は同時に……『夢の香霞』を使用された場合に大きな影響を受けるという事でもある)


 どう動こうと、懸念が残ってしまう現状に私は小さく息を吐いた。

 最終的な判断はグザヴィエ殿下に任せるしかない。

 私が出来るのは、自分が得た情報をお伝えする事。


(それと……)


「シャルル様」

「ん? 何だい」

「警戒すべきは外部の者だけではない可能性があります。どうかお気を付けください」


 束ねた書類の縁を机の上で叩いて揃えていた彼は、私の言葉を受けてその動きを止める。

 それから書類の束をそっと机に置き、真剣な面持ちのまま私を見つめる。


「内部犯の可能性があると?」

「あくまで可能性の話ですが。もし、この剣術大会の期間中に研究棟で良からぬことが起きると確信しているのであれば……その間だけでも、誰も信用すべきではありません」

「……俄かには信じがたい忠告だな。普段から研究棟に出入りできる立場の者が絡んでいるのだとすれば大会中などよりも、狙っている研究室の主だけが不在の時を選んで複数回にわたって侵入を繰り返したほうがいい。盗むのではなく研究成果の情報を複製して所持する手段の方が気付かれるリスクも減らせるからね」


 シャルル様の見解は尤もだ。

 ただしそれは一般的な話。

 例外的な要素――『夢の香霞』が絡んでいない場合の話だ。


(聖女の暗殺、『夢の香霞』の所持者……これらの情報は重要機密。私の口からは話せない。だからこそ、私が彼に出来る助言はこれだけ)


 私はただ静かに訴えかけるように、シャルル様の視線に応える。

 口を閉ざしたまま、視線だけで訴えかける私の顔を観察したシャルル様は、ふと視線を外して頷いた。


「承知したよ。どうやら根拠がない忠告ではないらしい」

「ありがとうございます」

「それと、この際だから頼みたい事だが……研究棟周りの警戒は君の方に任せてもいいかな。内部犯を疑えというのであれば猶更、研究棟内の警戒を高めるべきだろう。ああ、勿論君自身に見張れというのではなく、君が手配した護衛達の手を借りたいという意味だ」

「勿論です」

「助かるよ。オレが見つけた魔法陣はあれだけだが、他にも仕掛けられている可能性だってあるし……そもそも、研究員が一枚噛んでいるのであれば、元々学園から認められている魔法陣を使う可能性だってある」

「……そうですね。では、二時間おきに内部と外部の状況を共有する時間を設けましょう。定期的に顔を合わせる時間を用意しておけば、互いの管轄内で何かが起き、顔を見せられなかった際にもう片方が直ぐ応援へ向かうなりの対応が可能になるはずです」

「賛成だ。幸い、オレも論文を書き上げたばかりで手が空いているし、研究の手伝いの方もメインの研究員が今日の夕方に戻るとかで、明日までない。事情を説明すれば明日だって時間は貰えるだろう」


 私達は互いに手を組む方向で話を纏める。

 その際に彼の研究員としての予定を明かされ、ふとある疑問が浮かんだ。


「ところで、シャルル様ご本人は、一体何の研究を?」

「ああ、そうか。話していなかったな」


 国から依頼されているという研究先の話は簡単に明かせないだろうが、シャルル様ご本人の話であれば聞けるかもしれないという、世間話のつもりで投げた問い。

 シャルル様も特に気にした様子はなく、簡単に教えてくれた。


「古代魔法についてだ。主に、三魔法器の大元となる魔法の研究だな」

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