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073 事の顛末

「というわけで、付与術師協会の協会長が乗り込んできたけど、無事に撃退したから」


 突然、錬金術師協会に呼び出された師匠が帰ってくると、事の顛末を話してくれた。


「いやいや、軽く言っていますけど、危なかったんじゃないですか?」


「そんなことないわよ。最近は減ったけれど、他の協会やギルドが乗り込んでくるってのは、結構あることなのよ。ねえ、エリーザ」


「そう……ですね。冒険者ギルドでも、素材の扱いが悪いとか依頼した品が届かないとかで、商人協会が冒険者協会に乗り込んでくるって聞きました」


 は~、物騒な世の中だな。……いや、僕のいた世界が平和過ぎたのかな?


「ま、なんにせよ撃退したから、これ以上エリーザが付与術師協会に煩わされることはないわよ」


「師匠。それなんですが、本当に大丈夫なんですか? 今回乗り込んできた協会長は大丈夫でしょうけど、他の協会員の人とかギルドの人とか」


「大丈夫大丈夫。今回のことは帝城に報告がいくから、協会長は役職を下ろされるし、最初に勧誘に来た協会員も処分が下るわ。それに、付与術師協会には私のギルドへの接触禁止令もね」


「そこまで重大なことなんですか?」


 言っちゃ悪いが、今回のことはライバル企業にやってきて暴言を吐いただけのこと、他の企業や世間からの風当たりは悪くなるかもしれないが、そんなに悪いこととも思えない。


「普通だったらそうでもないけど、今は帝城の方でもハーフエルフの雇用を促進しようって雰囲気になってるからね」


「そうなんですか?」


「ええ。エリーザが順調に天職のレベルを上げているから、ハーフエルフでも教育の仕方では戦力になるって周知されたみたい。それに寿命を考えれば長い間、雇用ができる存在だしね」


 なるほど。確かに帝城が雇用促進を考えている種族に対して、あからさまな暴言を吐いたのなら問題にはなるか。


「あと、付与術師協会の協会長はカズのことも軽んじたからね」


「……僕ですか?」


「ええ。エリーザのことは口実で、本当はカズを付与術師協会に取り込みたかったみたいなの」


「いや、断りましたよね。付与術師協会に入るって件は?」


「ええ。錬金術師協会にも付与術師協会にも、そう伝えてあるんだけど、付与術師協会の協会長は理解していなかったようね」


「待ってください。カズさんだと何か問題なんですか?」


 おや? そういえば、エリーザさんには僕が稀人だと伝えたっけ?


「エリーザ、伝えていなかったけれど、カズは稀人様なの」


「……稀人様?」


「様付けされるほど偉いものでもないですけどね。神様のおかげで、この世界でもう一度生きることを許されただけですよ」


 個人的には死んだ感覚はないので、生まれ変わりというよりも、この世界に映してもらったという感じだけど。

 書物や伝承を調べる限りでは稀人というのは、異世界転生者だと伝えられているので、やはり元の世界の肉体は死んでいて、戻ることはできないのだろう。


「稀人様……確かに、そう考えれば辻褄が合います」


「合いますかね?」


「合います! この世界の誰もが考え付かなかった魔導具の改良や新しい魔導具の作成!」


「そう言われると、すごいことをしているように感じますが、いずれ誰かがやりましたよ」


 マジックバッグに関しては錬金術師と付与術師の両方の天職が必要なので難しいかもしれないが、魔導具の改良に関しては世界のどこかで他の誰かがやっていてもおかしくはない。

 異世界転生者だから、稀人だからできたことだと考えるのは楽だけど、魔導具の改良が進まなかったのは現状を良しとする人が多かったからだからな。


「……なるほど。稀人様に手を出したのなら、帝城からお咎めがありそうですね」


「そういうこと。まあ、カズは稀人様って言われるの嫌みたいだから、いつも通りに接してあげて」


「別に嫌ってことはないですが、自分がそこまで上等な存在だとは思えないだけですよ。僕は僕でしかないですからね」


 自分で臨んだこととはいえ、派手な魔法が使えるわけでもなければ、剣を使ってバッタバッタと敵をなぎ倒せるわけでもないので自覚がない。

 僕に出来ることは錬金術で魔導具やポーションを作って、日々をダラダラ過ごすことくらいだ。


「でも、新商品を考えているんでしょ?」


「新商品ではないですよ。これはエリーザさん専用の魔導具です」


「……わたしの?」


「ええ。付与術師のレベルも上がって魔法付与とスキル付与が使えるようになったので、そのお祝いですね」

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