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072 付与術師協会長を撃退(協会長視点)

「ええ、担当した人から聞いてないのかしら? 付与術師協会の人間は彼女に説明をしている最中に、彼女の特徴的な耳に気づいて、種族を聞いたら即座にテーブルから立ち上がったわ」


 俺の名前はマルコ・デ・ルッソ。錬金術師協会の協会長をやっているが、応接室で始まった付与術師協会の協会長との話し合いはまだ終わらない。

 というか、付与術師協会は大丈夫か? 確かにハーフエルフは成長が遅くて、足手まといと考える奴も少なくないが、それでも種族を聞いて話し合いを打ち切るのは馬鹿だろう。


「……」


「あら、だんまりですか? ちなみにウチの冒険者ギルドの職員は全員知っていることよ。なにせ、帰り際にホールでハーフエルフだなんて聞いてない、こんなことなら来なかったと大声で叫んでいたのだから」


 おいおい、冒険者ギルドのホールでそんなことを言ったのか? マジックバッグが出回ってからハーフエルフの冒険者の需要が増えているってのに。

 しかも冒険者はハーフエルフを足手まとい扱いしているが、職員は魔獣の解体や書類の提出までしてくれるハーフエルフの冒険者を重宝しているんだぞ。


「だ、だとしたら、なぜ錬金術師ギルドで雇ったのだ!?」


「あら? 付与術師協会が錬金術師ギルドの雇用に口を出すっていうの?」


「そ、そうではないが……ハーフエルフを雇うなんておかしいではないか」


「あらあら、担当者だけでなく付与術師協会は協会長までハーフエルフ蔑視なのね。まあ、答えてあげると、別に私はハーフエルフだろうと何だろうとやる気と才能があれば問題ないと思ってるわ」


 本格的に付与術師協会は大丈夫か? 苦し紛れに言ったのだろうが、受け入れている本人にハーフエルフを雇うのはおかしいと面と向かって言うか?

 しかもエレオノーラは察してはいただろうが、自分の価値も理解してなかった稀人のカズを何も言わずに受け入れた人間だぞ。


「ハーフエルフに才能なんてあるわけないだろ!」


「偏見がひどいわね」


「他の誰に聞いたってそう言うわ! そうだろう?」


 付与術師協会の協会長が同意を求めてくるが、ここにいるのはハーフエルフを雇ったエレオノーラ、ハーフエルフの冒険者を担当している冒険者ギルドの担当官、あとは俺しかいない。

 前者の2人は同意するわけがないし、俺にしたって錬金術師協会の中でハーフエルフの職員を雇っているから同意しない。


 確かにハーフエルフは覚えが悪いが、人よりも寿命が長いから先代、先々代から職員として活躍してくれている人もいる。

 そういった人は新人どころかベテラン職員よりも働ける人が多いし、結局のところ寿命なりに成長しているだけの話だ。


「話がそれだけなら帰ってくれるか? ここにはハーフエルフを蔑視する人間はいないんでな」


「な、まだ話は終わっていない! 付与術師……いや、ハーフエルフはもういいが、錬金術師ギルドにはもう1人、付与術師がいるだろう!」


「「は?」」


 思わず俺とエレオノーラの声が重なる。おいおい、何を言っているんだ、この男は?


「マジックバッグを作り出した有能な付与術師だ! そっちのハーフエルフは諦めてやるから、もう1人の付与術師を引き渡せ!」


「何を言っているのかしら? カズのことでしょ? 彼は付与術師である前に錬金術師よ。それも有能な、ね」


「アズマはマジックバッグ作成前から、錬金術師として知られていた人物だぞ? 本人が移籍を断っているのに付与術師協会に入るわけがないだろう」


 そもそもアズマは、錬金術師協会に勧誘してもエレオノーラを捨てなかった男だぞ? それが付与術師協会になんて、もっとないだろう。

 しかも付与術師協会は協会設立にあたって、アズマに協会長への就任を打診して断られ、その後に講師として付与術師に講演することを依頼して断られている。

 そんな状態で付与術師協会に入るなどと、何を考えたら思えるのやら。


「ふざけるな! 彼は付与術師として名を馳せるべきだ! 付与術師の汚名が払しょくされるチャンスなんだぞ!」


「話にならんな。付与術師として生きるか、それとも錬金術師として生きるかは本人が決めることだ。そして、アズマは錬金術師として錬金術師ギルドに所属している。それが事実だ」


「彼を独占するつもりか! 卑怯だぞ」


「本当に話にならないな」


 付与術師協会の協会長が発狂してしまったから、仕方なく壁際に取り付けられたボタンを押す。

 すると、時間をおかずに錬金術師協会に所属している衛兵がやってきて、付与術師協会の協会長を取り押さえてくれた。


「言っておくが、今回のことは協会長会議で議題にさせてもらうからな。ああ、あと帝城の方にも連絡しておく」


「はっ! 貴様一人が喚いたところでバレはしないさ」


 なぜか強気だが、ここには俺だけでなく冒険者ギルドの担当官もいるんだが、それをわかっているのか?


「もちろん、証拠ならあるさ。この応接室にはダンジョンから発掘した録画の魔導具が設置してるからな。これを俺の証言と一緒に提出させてもらう」


 ハーフエルフへの蔑視発言は残念ながら問題にはならないだろうが、正当性もなく別の協会へ人材の引き渡しを要求したのは問題だ。


「なっ!?」


 付与術師協会の協会長が驚愕の表情を浮かべるが、協会にある応接室だぞ? それくらいの備えはあるだろう。

 と思ったが、そういえば付与術師協会は新興の協会だから、そういったセオリーも知らないのかもしれないな。

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