070 これからの対応
「で、どうだった? エリーザの進捗は」
錬金術師協会に報告に行くと言っていた師匠が帰ってきて、みんなで夕食を取っている最中にエリーザさんの進捗について聞かれた。
「そうですね。今日は付与術師のレベルを聞いて、付与魔法を魔力を使い切るまでつかかってもらった感じです」
「すみません、レベルが低くて」
「ん? エリーザのレベルっていくつだったの?」
「1でしたよ。なので、攻撃力上昇と防御力上昇を付与してもらっていました」
エリーザさんはレベルが低いことを気にしているけれど、師匠に聞いた話では使わない天職のレベルを上げている人は稀だというから、そこまで気にすることでもないんだよな。
僕と師匠のように両方の天職を使いこなしている人は少なくて、ソフィアさんのように使わないほうの天職はレベル1だったりレベル2だったりするのが普通とのことだ。
「そう。まあエリーザも、そこまで気にしなくていいわよ。カズと同じように魔法付与やスキル付与を覚えられたら、すぐに取り返せるんだから」
「そうですね。師匠の言うように魔法付与でマジックバッグが作れるようになれば、即戦力ですから。……まあ、気になるのはその時点で付与術師協会が文句を言ってきそうですが」
「その辺は錬金術師協会にお願いしてきたわ。協会長はぶつぶつ文句を言っていたけれど、とりあえずは協力してくれるそうよ」
協会長……最近はあっていないけれど、元気にしているのかな?
「カズさん、そもそも他の天職の協会がギルドに干渉することは禁止されていますわ。協会同士の話し合いを行い、その後で協会からギルドへと話を持っていくのですわ」
「そうなんですか?」
「まあ、そうね。もしも付与術師協会がウチのギルドに文句を言って来たら、それを理由に出禁にすることができるわ。それは他の天職のギルドでも同じことよ」
「ギルド間で問題が起きた場合には、まずは協会に報告をし、同じ天職なら協会が対象ギルドと話し合い、違う天職なら協会同士で話し合いですわ」
なるほど。ルールがきちんと作られているのか。そういえば、他のギルドや協会の人が乗り込んできたことってなかったしな。
「ちなみに、文句だけじゃなくて制作の依頼に関しても協会を通す必要があるわ。個人の依頼はギルドの裁量で受けていいけれど、大量の製作になる他ギルド、他協会からの依頼はギルド個人で受けるのはダメね」
「確かにエリーザさんや、ご近所さんが依頼に来ることはあっても、商会やら他の協会からの依頼はなかったですね」
マジックバッグに関しては帝城が仕切っているから当然なのだけれど、行商なり商人なりにポーションを大量に作ってほしいという依頼もなかったな。
まあ、ポーションに関しては協会からの依頼があるから、協会が必要な人に卸しているというはわかっていたけれど。
「だから、もしも他のギルドや協会の関係者が文句や依頼を言って来たら、私に相談してね。協会に報告を上げるから」
「わかりました」
ちなみに師匠がギルドにいないときはクローズにして、誰も入れないようにしていて、その間に依頼をしたい人は玄関のポストに依頼書を投函する形になっている。
そもそも錬金術師ギルドとしては、協会からの依頼を受けているだけで維持できるようになっているからね。
「ああ、そうそう。エリーザが付与術師協会から勧誘を受けた時に、他の人はいなかった?」
「冒険者ギルドの受付の人が立ちあってくれましたよ」
「私の知っている人?」
「はい、わたしの担当の人なので」
「ああ、あの人ね」
「師匠?」
「一応、冒険者ギルドの方にも話を通しておかないといけないからね。付与術師協会が勧誘の途中だったとか、付与術師協会への加入が住んでいるとか、訳の分からない文句を言ってきた時のために証人を確保しておくのよ」
「ああ、それなら担当の人が見ていますのでわかりますよ。わたしがハーフエルフだと分かった途端、話を打ち切って帰っていった人に怒っていましたから」
なるほど。普通の感覚を持っている人なら、そんなことは言わないだろうけれど、クレームを言う人って自分の過去の行いを正当化していることがあるからな。
師匠やエリーザさんが、勧誘を打ち切ったのは付与術師協会だと宣言しても、当事者の言葉だからと無視される可能性はある。
そこで第三者の証言があれば、付与術師協会は認めなくても、世間的にこちらの正当性が認められる可能性が高くなるってことか。
「そんなわけで明日は冒険者ギルドに顔を出すわ。ソフィアはいつも通り空間魔法の修行、カズはエリーザの付与魔法を見てあげて。エリーザ、申し訳ないけれど冒険はもうしばらく待ってね」
「「はい」」
「わかっています。わたしのために骨を折ってくださってありがとうございます」
ソフィアさんと僕が返事をする傍ら、エリーザさんは恐縮そう師匠に告げていた。




