069 付与魔法講座
「というわけで、付与魔法を教えていきます」
師匠の提案により、エリーザさんが錬金術師ギルドで同居することになったので、僕が付与魔法を教えることになった。
「はい、お願いします」
「エリーザさんは、どのくらい付与術師のレベルを上げていますか?」
「レベル1までです」
「では、攻撃力上昇と防御力上昇が使えるということですね」
「はい」
付与魔法のレベル1は攻撃力上昇と防御力上昇……字面だけを見ると、かなり便利そうだけれど、実際は効果時間の短さがネックで使いにくい魔法だ。
「冒険中に使ったりはしますか?」
「危険だと分かっている場所に向かう際には使うこともありますが、効果時間が短すぎるので冒険中に使うことは、ほとんどないですね」
「危険だと分かっている場所?」
「はい。危険なモンスターの縄張りだったり、ダンジョン内のボス部屋などですね」
「なるほど」
やっぱり効果時間の短さがネックか。1日とは言わずとも、半日……いや、数時間でも効果時間があれば、便利に使えそうな魔法ではあるのだけどな。
「カズさんは、どうやって付与術師のレベルを上げたんですか?」
「僕ですか? 天職は使えば使うほどレベルが上がると聞いたので、暇があれば適当なものに付与していましたね」
「適当なものですか?」
「ええ。包丁とか、まな板とか、その辺の目についたものに付与していましたよ」
「……魔力がなくなると不安になりませんか?」
「? 別に。そもそも錬金術も魔力がなくなるまで使うのが日常でしたし」
「そう……なんですね。わたしは魔力がなくなると不安になってしまうんです。だって、いざ使わなければならない場面が出てきたら困るじゃないですか」
あ~、前の世界で友達がそれだったけど、ゲームとかで大切なアイテムとかが使えない人みたいなものかな。
まあ、エリーザさんは冒険者だし、補給のない冒険中がメインの生活だとリソースを残す習慣が染みつくのかもしれない。
「まあ、不安にならない範囲で積極的に使ってみるのをオススメしますよ」
「そう……ですね」
「他にも気になることがありますか?」
「ええと……冒険中だとパーティーメンバーから何か言われるかもしれません」
ああ、なるほど。冒険中に魔力を勝手に使っているとパーティーメンバーから文句を言われるのか。
「うーん、それでしたら付与術師のレベル上げは街中限定ということにしてはどうでしょう? ギルド内なら付与魔法を使っているところを見て文句を言う人もいませんし」
「そうでしょうか?」
「ええ、少なくとも僕は文句を言いませんし、師匠やソフィアさんも天職のレベル上げを頑張っている姿を非難することはありませんよ」
もしかしたら、街中でも何か言われているのかもしれないな、これは。
ハーフエルフは立場が弱いという話しだったけれど、まさかここまでとはな。
「そうですね。今は錬金術師ギルドに間借りしている身ですし、カズさんの言うとおりにしてみようかと思います」
「ええ、それで文句を言われるようでしたら、師匠が何とかしてくれるでしょう」
ちなみに僕に出来ることはない。力がないということもあるけれど、そもそも表に出ていないので僕が錬金術師ギルドに所属していることを知っている人が少ない。
なので、僕が抗議をしたところで、なんだコイツはって目で見られるのがオチだ。
「では、付与魔法を教えてもらっても良いでしょうか?」
「ええ。……とはいっても、僕もそこまで詳しいわけではないですけどね。レベル3になるまでは、とにかく暇があれば付与魔法を使うことです」
「はい」
「僕が実際にやってみた限りでは、効力が発動していなくても経験値は溜まっているようなので、危なくないものに付与するのも手ですよ」
「効力が発動していなくても?」
「ええ。正確には効力は発動しているけれど、意味がない場合ですね。まな板に攻撃力上昇を付与すると意味がないように思えますが、実際には打撃力という意味での攻撃力が上がっています」
まな板に攻撃力上昇を付与したところで意味はないけれど、殴打するための武器として使えないこともない。
実際に攻撃力上昇を付与したまな板と、付与していないまな板で、対象物に殴り掛かった場合、攻撃力上昇を付与したほうが打撃の威力が上がっていた。
「なるほど」
「ええ。なのでレベル1の間は、とにかく適当なものに付与魔法をかけまくるのが良いですね。僕は料理をするので包丁とまな板によく使っていましたが、その辺にあるペンや木の枝でも良いと思いますよ」




