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068 エレオノーラの頼み(協会長視点)

「今度はハーフエルフをギルドに入れるのか」


「別に規則上は問題ないでしょ? それとも、どこかから文句でも来るのかしら?」


 俺の名前はマルコ・デ・ルッソ。錬金術師協会の協会長をやっているが、稀人様を保護した錬金術師ギルドのギルド長、エレオノーラがまたも問題を持ってきた。


「規則上は問題ないが、ハーフエルフを錬金術師ギルドに入れるなど前代未聞だぞ」


「問題ないなら他の人に先見の明がなかったってことでしょ?」


「そもそも、そのハーフエルフも錬金術師ではないというじゃないか」


「魔導具に必要な人材なんだから、ギルドに引き入れても問題ないでしょう。ソフィアだってそうだし、他のギルドだって書類仕事専門の人間や受付の人間がいるでしょう」


 ぐっ! ああ言えばこう言う! 確かに他のギルドでも錬金術師の天職を持っていない人間はいるが、それとは違うだろう!

 他のギルドでは、あくまでも錬金術師が出来ない仕事をしているのであって、魔導具づくりに関わらせるのに天職持ちじゃないなんて、おかしいと言われるだろう!


「本当にギルドに入れるのか? 足手まといになるぞ」


「カズのおかげで経営は軌道に乗ってるの。別に1年や2年、使い物にならないくらいじゃ問題ないわ」


「まあ、確かにお前のギルドが協会内でも一番の稼ぎ頭だが……」


「だから心配ご無用。協会長は他のギルドから文句が来た時と、付与術師協会から文句が来たときに対応してちょうだい」


「……おい、付与術師ってのはなんだ!」


「あら、言ってなかったかしら。ギルドに入れるハーフエルフ……エリーザは冒険者だけど付与術師の天職持ちなのよ」


 おいおい、聞いてないぞ。


「付与術師協会から奪ってきたのか?」


「失礼ね。向こうがハーフエルフだと言うと勧誘を止めたのよ。本人も冒険者を続けたいから、付与術師一本はムリって言ってるしね」


「冒険者を続けるのなら、なおさらギルドに入れる意味がないだろう」


「いいのよ。少しでもカズの負担が減ればそれで」


「そこまで負担がかかっているのか?」


「まあ、そこそこね。私じゃ手伝えないし、潰れてからじゃ遅いもの」


 稀人様の発見した魔導具に付与魔法で魔法を付与するというのは画期的だが、分業になることから人材の確保が難しいのだよな。

 だというのに、帝城をはじめ貴族からも注文が殺到しているから、ついついエレオノーラのギルドに頼ってしまうのが実情だ。


「むう、だからといって注文は減らせないぞ」


「だからこそのエリーザの雇用よ。協会長が心配しているのも、複数のギルドに依頼をかけて完成品にバラつきが出ることでしょう。依頼品の検査は私がやるから、品質の保証はするわ」


 ぐう、見抜かれている。確かに、エレオノーラのギルドに依頼をかけやすいのは、魔導具製作から付与まで一括で行えるからだ。

 以前に魔導具製作は錬金術師ギルドに、付与は付与術師協会に依頼したところ、付与術師協会からは魔導具の質に文句が入り、客からは完成品の稼働に文句がついた。

 錬金術師ギルドは新しい魔導具ということで、どこまでの質を保てばいいかわからず、付与術師協会は新興の協会だからか納期だったり客への対応が悪かった。


「それは助かるが……」


「だから、エリーザのことで他のギルドや付与術師協会から文句が来たら対応をお願いしてるの。自分たちがやらなかったり、ハーフエルフだからって捨てたのに、文句を言いそうでしょ?」


「まあ、それは確かにな。……しかし、錬金術師ギルドはともかく、本当に付与術師協会はハーフエルフだっていう理由で勧誘を止めたのだな?」


「エリーザからは、そう聞いているわ。それが行き違いだったとしても、先にギルドに入れたのは私だから文句を言うのは筋違いでしょ」


 まあ、そうだな。田舎で家業を継ぐのが当然という村ならともかく、大きな町、とりわけ帝都では職業選択の自由がある。

 ギルドや協会に入るのは個人の自由だし、たとえ親や後見人であっても本人の意思を無視して職を決めることはできない。

 本人が協会にやってきたわけではないが、エレオノーラが持ってきた書類に不備はないし、本人の署名も問題はない。


「わかったわかった。ハーフエルフがギルドに入会することも認めるし、他からの文句も協会としての職務の範疇なら防いでやる」


「偉そうだけど、それは協会長として当然のことよ」


 それはそうだが、そもそも他のギルド長はそんなこと要求してこないからな。

 とはいえ、これでエレオノーラのギルドの生産性が上がるのならば、協会としてもありがたいことだからな。

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