066 炊き出し用の料理
「お米で作ったのがおにぎり。これは塩のみと醤油で味付けて具材を混ぜたものの2種類。スープは豚肉と野菜を煮込んだ豚汁。おかずは見た通りウインナーと卵を焼いたものです」
翌日のお昼に宣言通り、炊き出しに使えそうな料理を出している。
おにぎりとウインナー、玉子焼きなら手でつかんで食べることができるし、ある程度は冷めてもおいしく食べられる。
豚汁に関しては根菜類をゴロゴロと入れるタイプで、バランスをとっている。
「どうやって食べるの?」
「おにぎりはパンみたいに手で持って食べてください。お米がべたべたしますので、海苔のところを持つ感じですね。ウインナーと玉子焼きは味付けがしてありますので、そのまま食べて大丈夫ですよ」
手本を見せるように1つ手に取って、食べて見せる。うん、自分で作ったモノだけど、それなりに美味しくできたな。
とはいえ、やっぱり前の世界で食べたものよりは米の質が悪いから、塩にぎりだと味の差が顕著に出るな。
炊き出しに使うのなら味の濃い具材を混ぜ込むか、炊き込みご飯のほうが良いかも。
「ふーん、パンみたいに食器がなくても食べやすいってのはいいわね」
「カズさん、こちらの色がついている方は野菜なども入っているのですね」
「ええ、炊き込みご飯ですね。お米を炊くときに刻んだ野菜と醤油を入れてあるので、炊きあがった状態で味がつくんですよ」
この国ではパンやパスタといった小麦で作られたものが主食になっているので、お米のように調味料と一緒に作り上げて味をつけるということは珍しいのだろう。
「ふーん、ピザと違って味が中まで染み込むのね」
「そうですね。ピザと違って味が均一になるのが特徴ですかね」
「作るのは大変ですの?」
「そうでもないですよ。野菜を刻むのが少し大変ではありますが、お鍋に醤油と野菜、それに水とお米を入れて炊くだけですから」
前の世界だったらあらかじめ刻んだ野菜と調味料が入った商品を使えばよかったけど、この世界にはそんなものはないので自分で野菜を刻まなきゃいけない。
「ウインナーは良いとして、卵を焼いた奴は? オムレツとは違うのよね?」
「僕のいたところではオムレツよりメジャーだった玉子焼きですよ。茶色っぽい方が出汁を含ませたもの、黄色い方が砂糖を混ぜた甘いものです」
玉子焼きも甘いのが好き派と、しょっぱいものが好き派で分かれそうだが、僕はどちらでもイケル派だ。
まあ、この世界では砂糖を入れるほうが作るのは簡単かな? だしパックや顆粒だしも存在しない世界なので、鰹節や昆布からだしを取らなきゃいけないんだよな。
「甘くておいしいです」
「私はしょっぱい方が好きかな」
「口に合ったのなら良かったです。ちなみに僕のいたところでは好みで口論になりましたが、どちらも良いところがあるので喧嘩しないでくださいね」
「「うっ」」
自分の好みが最強と思うのは、どの世界でも共通なのだろうな。まあ、僕も米が主食になっていないことに憤りを感じていたから、気持ちはわからないでもない。
「ほらほら、スープも飲んでみてください。僕のいたところでは箸で食べるものでしたが、使い慣れていないでしょうしスプーンを用意しました」
豚汁だが、スプーンで食べやすいように具材は小さめに刻んである。
ちなみに入れた具材は大根、にんじん、長ネギ、ジャガイモにしてみた。
これも多分、個人の好みがあるだろうけど、今回は簡単に手に入る野菜が中心だ。
「お味噌汁とは違うのね」
「味付け自体は変わらないですけどね。具だくさんのお味噌汁って感じでしょうか」
この国ではお米は食べられていないが、味噌は普通に料理に使われている。
ちょっとお高めのお店で食事をしたときに、コンソメスープと同じ欄に味噌汁が載っていた時にはぶったまげたものだ。
とはいえ、味噌汁はそこまで一般的というわけではなく、味噌は野菜炒めやパンに使う調味料といった認識の人が多い。
「具材がたくさん入っていて食べ応えがありますわね」
「本当ね。スープパスタとは違ってパスタが入ってないのに、お腹がいっぱいになりそう」
「ジャガイモが入っているので、腹持ちは良いですよ。僕のいたところでは、おにぎりと豚汁だけでもご飯として成立していましたし」
貧乏飯としてもそうだけど、ハイキングなんかをするときにはスープジャーに豚汁を入れて、おにぎりだけを持つということもあった。
この世界では根菜類は輸送に気を遣わなくても良いということ、流通量が多くて値段が安いから炊き出しにもぴったりだろう。




