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062 お米の地位

 オリアーニ嬢……おっと、ソフィアさんだ。ソフィアさんに料理を教えるようになって1週間ほど。

 とりあえず横で見ていなくても包丁が使えるようにはなったけれど、レシピを覚えるのは大変なようだ。

 ソフィアさんは書記の天職持ちだから、本さえ読めば覚えられるかと思ったが、料理知識を前提としているレシピが多すぎてわからないらしい。


「すみません、カズさん」


「良いんですよ。錬金術もそうですけど、意外と手を動かすことが好きなので」


 というわけで、今日も今日とてソフィアさんと一緒に料理を作っている。

 朝食は任せられるようになってきたけれど、夕飯はできるだけバランスよくとるようにしているので1人だと難しいんだよな。


「今日は何を作りますか?」


「そうですね……パスタとサラダ、それに魚でも焼きますかね」


「パスタ……良いですね。レシピを読んでも、よくわからないんですよね」


「そうですか?」


 ソフィアさんはそう言うけれど、パスタに難しい部分とかあったかな?


「茹でる際にお塩を適量入れること、とあるんですけど、適量ってどのくらいですか?」


 ああ、なるほど。そういう部分か。この世界の料理のレシピは料理人の天職持ちが読むことが前提になっているから、そういった基礎的な部分が抜け落ちてるんだよな。

 ちなみに天職持ちだと感覚で分量が理解できるんだよな。僕も錬金術をするときには分量なんて気にしないし。


「パスタは1人前に対して、お湯1リットルとお塩小さじ1杯が基本ですね」


「お湯は多くて、お塩は少ないですね」


「ええ、パスタをあまり食べない友人にも言われたことがありますね」


 ちなみに僕は大学時代に1人暮らししていた時は、お金がなくてパスタばっかりだった時があったから覚えていた。

 まあ、その後に電子レンジで簡単に作れるキットが大流行りしたので、実際にお湯をたっぷり沸かして茹でるってことは少なかったけど。

 とはいえ、この世界では電子レンジは作れそうにないし、役に立つ知識ではあったのだろう。


「勉強になります」


「まあ、そこまで厳密なものではないので適当で大丈夫ですよ。前の世界では片手鍋に適当に水を入れてパスタを茹でてる人も多かったですし」


「ん? 片手鍋ってパスタが入らないんじゃないですか?」


「下側が柔らかくなったら無理やり突っ込んだり、あるいは折って茹でるという人もいましたね」


 個人的には好きじゃないやり方だけど。前者だと茹で過ぎの部分と硬い部分が出来てしまうし、折ってしまうと食べるのが難しいんだよな。


「……そんなことしたら、パスタ好きの人に怒られますよ」


「ええ、前の世界でもパスタが主食の人とケンカになっていましたよ」


「パスタが主食? カズさんは違うのですか?」


「ええ、僕のいた国ではパンやパスタではなく、お米が主食でしたから」


「お米……失礼ですけど、家畜の飼料ですよね?」


 そう、この世界では……というよりも、この国では米は主食ではなく家畜の飼料として消費されている。

 どうも、この国の気候では上手に育てられないらしく、米が主食の国に比べると味が一段落ちるらしい。

 確かに前の世界のブランド米と比べると味は落ちるけれど、それでも米が食べられる嬉しさに比べれば何ということはない。


「価値観を変えるのは難しいですけど、あれはあれで美味しいんですよ」


「そう……なのですか?」


「ええ、師匠とは別に夕飯を食べる時は、お米ばかり食べていますね」


 魔石では炊飯機を作るのは難しいが、鍋で炊く方法やフライパンで作るピラフやパエリアのレシピも知っているので問題はない。


「……今度、一緒に食べても良いですか?」


「お米を……ですか?」


「はい。カズさんが美味しいというのなら、味を知っておきたいんです」


「別にかまいませんけど」


 お米は家畜の飼料として販売されているので値段が安いし、大量に仕入れて下ごしらえしているので食べる人が増えたところで問題はない。

 ただ、初めて食べるのなら白米で食べてもらうよりも味がついている方が食べやすいので、その辺を考えてレシピを考えないといけないかな。


「やった。じゃあ、楽しみにしていますね」


「ええ、こちらでもソフィアさんが食べやすいようなレシピを考えておきます」


「ん? お米の食べ方ってそんなにあるんですか?」


「そうですね。そのままの状態で味の濃いおかずと一緒に食べることもあれば、あらかじめ味をつけておくということもやりますし、具材や調味料と炒めることもありますよ」


「パスタとは違うんですね」


「そうですね。パスタやパンとは違った楽しみ方ができる食材ですよ」

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