063 料理準備
「さて、今日はお米を使った料理を作ります」
「はい」
ソフィアさんがお米を食べてみたいというので、実際に作ってみることにしたのだが、なぜか師匠も一緒にいる。
どうやらソフィアさんから、食べて嫌だったのならともかく食べずに嫌っているのはダメだと叱られたらしい。
「本当に作るの?」
「師匠がいない間に1人で食べているので、人が食べても問題がないことは確認済みですよ」
師匠が不満そうに言うので答えたが、そもそも素材鑑定でもお米は食用と出るから師匠だって食べられることは知っているはずだ。
「それはわかってるけど、私の中に根付いた価値観がさぁ」
「お姉さま、もしも本当にお米が美味しく食べられるのなら、貧民への対策になるんですよ」
「わかったわかった」
ああ、ソフィアさんは自分が美味しく食べるかどうかよりも貧民への炊き出しとかで考えているのか。
「まあ、今日は手間をかけますので貧民対策になるかどうかはわかりませんけどね」
ちなみに今日作ろうと思っているのはオムライス。街の中で鶏を育てている家を発見したので、生でも食べられる新鮮な卵を手に入れることが出来るようになったのだ。
とはいえ、前の世界と違って薬を使っての洗浄じゃなくてお湯だけの洗浄しかしてないらしいから、生で食べるのは歓迎しないと言われたけど。
まあ、オムライスなら火を通すし、昔ながらのかっちり焼いたものにすれば問題ないだろう。
「まずは、お米を炊くところから始めます」
「ふーん? これがお米。なんか市場で見たものとは違うわね」
「市場では玄米。もみ殻が就いた状態で取引されていたので、製粉所に頼んで脱穀だけしてもらいました」
この世界では物流が発達していないので、穀物類は基本的に収穫直後の状態で運ばれている。
そのため、街の中では風車や水車を利用した製粉所が存在し、お米を持ち込んで脱穀だけお願いした形だ。
ちなみに精米に関しては素材抽出で糠だけを抽出したらできた。本当に錬金術は便利だなぁ。
「それにしても白いですわね。領地で見かけたお米はもっと茶色でしたわ」
「脱穀してもお米には糠と呼ばれる茶色い層があるので、そこをそぎ落としてあるんですよ」
玄米は栄養があると聞くし、実際に食べてみたこともあるけれど、やはり精米後の白米の方がおいしい。
ちなみに師匠もソフィアさんも、お米が珍しいらしく手に取って観察している。
「まずは、お米を洗います」
「洗うんですか?」
「ええ、前の世界では研ぐと呼んでいましたが、ボウルにお米と水を入れてゴシゴシと手で洗っていきます」
「洗うって割には洗剤とかは使わないのね」
「食べ物ですから。汚れやゴミ、あとはとり切れなかった糠を取り除くイメージですね」
ちなみに、お米を研ぐ詳しい理由は知らない。昔は今言ったような理由だったっぽいけど、そもそも前の世界では無洗米とかあったしなぁ。
「まあ、お米は準備に1時間くらいかかるので、今日はすでに炊き上がった状態を用意していますが。これですよ」
師匠もソフィアさんも興味津々だったが、そもそも吸水の時間や炊く時間を考えると料理を作る時間が無くなるので、今回は集まる前に炊いておいた。
「「白い」」
「調理前に食べてみますか? ほとんど味はないので美味しいと感じないかもしれませんけど」
言いながら小皿に一口分のお米を置いてスプーンと一緒に差し出す。自分の分を食べてみたけれど、やはり前の世界のブランド米と比べると美味しくないが、食べられないことはない味だ。
「うーん、味がない?」
「噛んでいると、ほんのりと甘いですけど、パンと比べると味がないですわね」
前者は師匠、後者はソフィアさんの感想だが、パン食文化の人間が白米を食べたらこんな感想になるよな。
「パンは作る時にバターや牛乳、下手をしたら砂糖まで混ぜてあるので、穀物を炊いただけのお米は味が薄く感じるんですよね」
「これが好きなの? 変わってない?」
「国民食でしたからね。味の濃いおかずと食べてたってのもありますが、そもそもおいしくなるように品種改良とかもしていましたので。とはいえ、師匠やソフィアさんには合わないでしょうから、ここから味を付けていきますよ」




