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第五話 愛人登場

 翌朝。


 よく晴れた空の下、わたしはクロードと共に馬車で王国騎士団の訓練場へと向かった。


 訓練場は王都の端に位置している。


 石壁で囲まれた訓練場の横には、騎士団の独身寮も建っている。


 少し年季は入っているものの、掃除は行き届いているようですっきりとした佇まいだ。


「訓練場って屋外なんですね」


 クロードに連れられてやってきた訓練場は、私が想像していたよりもずっと広い。


 ぐるりと辺りを見回すと、山の上に位置する王城も良く見えた。


「野外訓練場の他に、ここより少し狭いが屋内の訓練場もある。大雨が降っても訓練を休むわけにはいかないからな」


 早朝の訓練場は空気が澄んでいて、それでいて力強さも感じさせる不思議な雰囲気だった。


 クロードに色々と説明してもらいながら歩き回っている私たちの様子は、はたから見れば仲の良い新婚夫婦に見えるかもしれない。


 まあ、実際は嫌々連れてきた夫と、ここを小説のネタにしてやろうと意気込んでいる妻なんですけど……。


 武器庫や寮の入り口なども見学させてもらい再び訓練場に戻ってくると、そこには朝の訓練に参加する騎士たちが続々と集まり始めていた。


 彼らは私たちの姿を捉えると、駆け足で寄って来た。


「副団長! 今日は奥様と一緒なんだな!」


 最初に声をかけてきたのは、結婚式にも来てくれた大柄で声の大きい男だった。


 男はニカッと白い歯を見せ、親し気にクロードの肩を叩いた。


「いいじゃないか、新婚! うらやましいぜ!」


 男はクロードの肩をバシバシと叩く。


 クロードはあからさまに嫌そうな顔で肩を払った。


 新婚だとからかわれるのが嫌なんじゃなくて、私と一緒のところを見られるのが嫌なんだろうなぁ。


 すると続々と他の団員たちも声をかけてきた。


 結婚式に来た人もそうでない人も、皆クロードに対しても私に対しても好意的だった。


 クロードは私にとっては嫌な奴だが、騎士団の仲では信頼され慕われているのだろう。


 男同士の友情を垣間見て、少しほほえましい気持ちになる。


 主人公は他の団員にも慕われているっと。小説にはこのシーンも入れよう。


 私がそんなことを考えていると、ひときわ美しい顔の青年が、タタタッと軽快な足音とともにこちらへ駆け寄ってきた。


「クロード様! おはようございます!」


 なんと華のある青年なんだろう。


 彼が登場して微笑んだ瞬間、ぱあっと場が華やいだのが分かった。

 

 サラサラとした金髪のクロードに対し、この青年はふわふわとした茶髪で、まるで子犬のようだ。


 鼻の上にはそばかすがあり、髪が長ければ少女に見えなくもないだろう。


 冷たい印象のクロードに対し、とても可愛らしくて人懐こい雰囲気だ。


「おはよう、イヴ」


 イヴと呼ばれた青年に話しかけるクロードの顔が、ふっと和らいだのを、私は見逃さなかった。


 顔だけじゃない。声も、信じられないくらい甘く優しいものだった。


 まあ、こんな可愛い後輩がいたら誰だって甘やかしてしまうか。

 

 すると美しい青年は私の目をまっすぐに見てニコリと微笑んだ。


「初めまして、奥様。僕はイヴ・シャルルと申します。お会いできて嬉しいです」


 イブは無邪気に笑うと、私の両手をぎゅっと握った。


「こら、イヴ! 近寄りすぎだ」


「ごめんなさぁい。だって、奥様に会えたのが嬉しくって!」


 たしなめるクロードに対し無邪気に笑うイヴ。


 二人の仲の良さがうかがえる。


 突然男の人に手を握られてびっくりしたが、これだけ可愛らしい男の人なら怖くないかも。


 むしろクロードが冷たい分、騎士団の人たちが私に好意的であってくれるのは嬉しい。


 これから仲良くしてね、と私が言おうとすると、それよりも早くイヴは私の耳元に口を近づけて呟いた。


「思ったより大したことない女で安心した。これからの結婚生活でクロード様に愛されることなんか夢見んなよ」


 イブの呟きは、私にギリギリ聞き取れるくらいの声量だった。


 周りには聞こえていないのだろう。


 他の団員は皆ニコニコして私とイヴを見守っている。


「おーい、イヴ、さすがに近寄りすぎだろ! いくらお前が騎士団の姫ポジションって言っても、クロード様の奥様から見れば立派な男なんだからさ!」


「ごめんなさーい。奥様、仲良くしてね!」


 イヴは私の手をぎゅうっと握った。


 男に渾身の力で握られると、骨が砕けそうな程に痛い。


 私は思わず声を上げそうになったが、ここで負けてたまるもんか!


 私も顔に笑みを浮かべ、イヴの手をぎゅぎゅぎゅっと握り返した。


 イヴがわずかに顔をしかめた。


 こっちの反撃は予想外ってわけ?


「こちらこそ、仲良くしてね」


 お互い笑顔で睨み合いながら、ぎゅうぎゅうと手を握りつぶし合う。


 私の頭の中に、昨日の文学サロンでの婦人たちとの会話が蘇る。


 クロードの愛人が男だなんて、半分以上冗談のつもりだった。


 でも、女の勘が言っている。


 このイヴとかいう男、嫉妬に狂った目をしてる。


 それにクロードの優しい眼差しと声。


 あれは可愛い後輩に対するものじゃない。


 愛する恋人に対するものだ。


 コイツがクロードの愛人で間違いない。


 ご婦人たち、予想が当たってしまいましたわ……!


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毎日17時10分更新です。

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― 新着の感想 ―
静かに読み進めていましたが、ここで限界が来てしまいましたwww く、腐ってやがるwww もう、ガチモンのBL展開待ったなしじゃないですかwww 小説のネタがゴロゴロ転がっている現場って何なんですか…
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