第1部(12)
「初代のお墓、ですか?はい、構いませんが」
シグに聞くと、マップUIである地点が点滅した。
その位置を確認したフラニが声を上げる。
「気持ち悪!どのチェックポイントからも絶妙に遠い!」
「徒歩だとけっこうかかるね」
「足で稼ぐ!だろ!」
忘れずに花を買って、パーティは出発。
◇
道中、道端で宝箱を発見。
「道草する時間くらいあるだろ?1回ピーカブーくじを……」
フラニが言って宝箱に近づく。
ドキドキとしながらゆっくりと宝箱を開ける。
『❝金の延べ棒❞を入手』
「おー!最上級の換金アイテムだぞ!」
ローダーが声を上げる。
「……俺宝箱からアイテムが出て嬉しくないの、初めてかも」
◇
「そういえばさ」
フラニがローダーを向いて言った。
「今日の陰謀論は?」
「そんな特ダネが毎日思いついたら苦労はないぞ!」
ぷんぷん怒りローダーは頬を膨らませた。
「勝手にやめて勝手に怒んなよ……」
◇
「黄金の瞳の速報値、どうなってる?」
トレースがローダーに聞いた。
「34%」
「3日目でそれか……やっぱ無理かもなー俺が行かないと!」
フラニが飄々と言った。
◇
「うおーやっとついた!」
フラニが喜ぶ。
そこは、ターナー一族を始めとし、寄り合ってご先祖が眠るささやかな共同墓地だった。
シグから聞いた通りに、その墓はあった。
『アルフォンソ・ターナー』
花を手向けて、3人が手を合わせる。
トレースは一歩前でかがみ込み、祈りを捧げている。
それからタイミングが見つからないというように、ローダーが切り出した。
「データ解析がおいらの仕事だから言うけど、これも記憶の欠片だぞ。当たりだ」
次はフラニが疑問を口にした。
「なんかこの墓石、綺麗すぎないか?」
初代の、アルフォンソの墓は異様に綺麗だった。近づいて、フラニはまじまじとそれを観察する。
「しっかり手入れされてるのもあるけど……これ、ジョシュハ石だ」
観察の結果をフラニは述べていく。
「経年劣化が少なくて古代から重宝されてる石。でもその分めっちゃ貴重」
墓石から離れながらフラニは2人に言う。
「だから当時ならこの石を使った墓に入るなんて、それこそ国王レベル……」
思い当たる人物は、ひとりしかいない。
彼女が、亡き恋人を思って建てたのだろう。
3人はお互いに目を合わせてから、同時に記憶の欠片であるお墓に触れた。
夕日に暮れる丘の上。
そこで、重たい正装を着た皇帝とアルフォンソは同じ方向を向いている。
立ったまま、2人は何も言わない。
「思えば遠くまで来ちまったな……」
ようやく、アルフォンソが呟いた。
また、2人は黙り込む。
「なあ」
そしてアルフォンソが口を開く。
「あの頃に戻らないか?ホラばかり吐く俺と、それを馬鹿にするおまえ。ひとりの男と、ひとりの女に戻って……」
「それはできない。わたしは皇帝だ」
きっぱりと、皇帝は遮った。
やがてアルフォンソは一際大きな声で言った。
「俺は不可能の花を咲かすよ!」
子どもみたいな顔で、子どもみたいなことを言って、アルフォンソは皇帝の手をとる。
「それって、この世には存在しないっていう……」
皇帝が少したじろいだように、圧される。
「ああ!俺はそれを咲かす!俺がその不可能をやってみせたら、俺が不可能の花を咲かせたなら、俺と――」
皇帝が身を寄せた。アルフォンソの頬に顔をつけ、相手の顔は見ずにこう言う。
「おまえが本当に青いソラネの花を咲かせたら……そのときは、話の続きを聞かせてくれる?」
2人は強く抱き合った。
映像が終わると、フラニの頬に涙が流れていた。
「うーそういうことだったのか!2人はその約束を胸に!ずっと!」
フラニは泣きながらぐだくだ言った。
泣いているフラニを眺めながら、トレースは言った。
「皇帝が最後に言い残した❝ひとつの願い❞……それはきっと……」
「ああ!人間やっぱり最後は愛だな!」
うんうんとフラニはうなずく。
そこで、会話に入ってこないローダーに気づいてトレースは言った。
「どうしたローダー?気になることでも?」
「リアルで動きがあった。LGNがネットワークで動画を公開したぞ」
「動画?」
「見たほうが早い」
ローダーが携帯型の映像再生機を取り出し、画面に流れ始める映像を3人は覗く。
「おう、久しぶりだなおまえたち。今日も元気に落ちてるか?」
一室のソファに、男が座っている。引き締まった筋肉質な体。
「LGN代表、ハロルドだ」
悠々としたその話しぶりからは貫禄が感じられる。
「え?もっと動けって?じゃないと動画証明技術がダメ?」
ハロルドがこちらに向かって手を振る。
「難しい時代だな……ま、本題いくぞ」
手を振るのをやめて、ハロルドは真剣な表情になる。
「LGNからの公式発表。シークエンス❝皇帝を映した鏡❞を調査した結果、これが❝ハズレ❞シークエンスだということがわかった」
ハロルドは語る。
「追って資料は公開するが、真実を映す鏡には破壊不能タグがつけられてることが判明。鏡を割ることは不可能。それがLGNの結論だ」
LGNとして誇り高く。
「つまり鏡は他シークエンスの進行を遅らせるための目くらまし。有志諸君は、ぜひ限りあるリソースを効果的に使ってほしい」
最後にハロルドが宣言する。
「この公開情報に、われわれLGNが署名する」
それからハロルドはもう一度手を振って、映像終了。
「え?じゃあ鏡のシークエンスは行き止まりってこと?」
動揺しながらも、フラニが情報を読み取ろうとする。
「鏡は割れない。ご丁寧にお墨つきでそれを公表してきた。プレイヤーを❝正しい❞方向へ導くのがLGNの使命だ」
冷静にローダーが言った。
「俺たちはどうする?女皇帝とホラ吹き男のストーリーは気になるけど……」
心配そうにフラニが言うのを、ローダーが引き取って言った。
「その先には褒賞も何もないことをLGNは予言している」
そこで、フラニとローダーは、ここまで声を発してないトレースを見た。
トレースはすっきりした顔で言った。
「僕は僕の目標を定めた。僕が決めたことだから、ここから2人は付き合わなくていい」
何を今さら、という顔で2人はトレースにうながす。
一度笑ってから、表情を戻してトレースは言う。
「皇帝の本当の名前を探し出す」
フラニの驚きの表情と、ローダーの笑みの表情。
「そして、不可能の花にその名前をつけてあげるんだ。きっとそれがふさわしいよ」
3人の立ち位置は綺麗な三角形を描き、3人はお互いの顔を見合わせた。
「なるほど、それが一番おさまりがいいぞ」
「ここまで来たら見届けるしかないだろう」
ローダー、フラニと言い、最後にトレースがそのままの感謝を口にする。
「2人とも――ありがとう」
「リヴ世界でこんな目標を立ててるの、俺たちくらいだろうな。かっこよく言えば世界の反逆者だ」
「かっこ悪く言うと風変わりのへんてこパーティだぞ」
緊張がほどけるように、3人は笑い合った。




