表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しの悪魔は迷探偵  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/66

第61話「静かな矛先」

 終業式まで、あと四日。


 朝の教室は、

 昨日までとは違うざわつきがあった。


 「今日の紙、黒板に貼ってあったらしいぞ」

 「なんか“観察④”とか書いてあったって」

 「白石さんの字に似てるよな、やっぱ」


 声のトーンは軽い。

 でも──

 昨日までの“面白がり”とは違う。


 どこか、

 “誰かを見ている”空気。


 陽斗は席に座りながら、

 その空気を肌で感じていた。


 (……今日は……

  なんか……

  違う……)


 透子はいつも通り、

 静かに席に座っていた。


 でも、

 クラスの視線が

 昨日より明らかに“透子の方へ”向いていた。


 


 ──二時間目の休み時間。


 黒板の端に貼られた紙を見に行くと、

 昨日よりさらに“透子の書き方”に近づいていた。


 《観察④》

 《対象:白石透子》

 《仮説:白石透子は“影”を意識し始めた》

 《結論:白石透子は“動く”》


 陽斗は息を呑んだ。


 (……白石さんが……

  動く……?

  そんなこと……

  書く意味……)


 そのとき、

 後ろから声がした。


 「白石さん、

  本当に書いてないの?」


 女子の声だった。

 責めるような調子ではない。

 ただ、

 “確認したい”という空気。


 透子は紙を見つめたまま言った。


 「書いてないわ」


 その声は、

 いつも通りの冷静さ。


 でも──

 ほんの少しだけ

 “硬さ”があった。


 女子は続けた。


 「だよね……

  でも……

  似てるから……

  ちょっと気になって……」


 透子は答えなかった。


 陽斗は胸がざわついた。


 (白石さん……

  いつもなら即答するのに……

  今日は……

  少しだけ……

  揺れてる……)


 


 ──昼休み。


 陽斗は透子の机に向かった。


 「白石さん……

  大丈夫?」


 透子は弁当を広げながら言った。


 「大丈夫よ。

  ただ……

  少しだけ、

  “面倒”になってきただけ」


 陽斗は息を呑んだ。


 (面倒……

  白石さんが……

  そんな言い方……)


 透子は続けた。


 「相沢くん。

  今日の紙……

  “私が動く”って書いてあったわね」


 「うん……」


 「私を“観察”してる人がいる。

  でも──

  “理解”はしてない」


 陽斗は思わず聞いた。


 「どうして分かるの?」


 透子は窓の外を見た。


 「理解してるなら……

  私が“動く”なんて書かないわ。

  私は……

  そんなに単純じゃないもの」


 陽斗は胸が熱くなった。


 (白石さん……

  自分のこと……

  ちゃんと分かってる……

  でも……

  誰かが……

  それを真似してる……)


 透子は言った。


 「相沢くん。

  今日も放課後、見に行きましょう」


 陽斗はうなずいた。


 「うん。

  一緒に」


 


 ──放課後。


 昇降口に、

 新しい紙が貼られていた。


 《白石透子へ》

 《“影”はあなたを見ている》

 《あなたの“代わり”は、

  すぐそばにいる》


 陽斗は息を呑んだ。


 (……代わり……

  白石さんの……

  代わり……

  そんなの……

  誰が……)


 透子は紙を見つめ、

 小さくつぶやいた。


 「……相沢くん。

  この人……

  “私になりたい”のよ」


 陽斗の背筋が冷たくなった。


 (白石さんの……

  代わり……

  なりたい……?

  そんな……

  誰が……)


 透子は続けた。


 「でも──

  “私の代わり”なんて、

  誰にもできないわ」


 陽斗は思わず言った。


 「僕も……

  そう思う」


 透子は横目で陽斗を見て、

 ほんの少しだけ笑った。


 「……ありがとう」


 夕暮れの昇降口で、

 二人の影が並んだ。


 ──疑いの矛先は、

  静かに透子へ向かい始めていた。

  “影”は、

  確実に近づいている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ