表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しの悪魔は迷探偵  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/66

第47話「階段のガラスと、笑う影」

 階段の踊り場に貼られた“立入注意”の黄色テープが、

 昼下がりの光を受けて揺れていた。


 「ここ……だよね……?」


 陽斗は階段のガラスを見上げながら、

 背筋に冷たいものが走るのを感じていた。


 (ここで……

  三浦さんは“もう1人の自分”を見た……

  笑っていた……

  自分じゃない自分が……)


 透子はガラスに近づき、

 指先で表面を軽くなぞった。


 「……普通の強化ガラスね。

  鏡面加工もされてない。

  反射率は低い」


 陽斗は思わず聞いた。


 「じゃあ……

  三浦さんが見たのって……

  どういう……」


 透子はガラスの向こう側を覗き込み、

 淡々と答えた。


 「“反射”じゃないわ。

  これは……

  “像を見せられた”の」


 陽斗は息を呑んだ。


 (見せられた……?

  誰に……?

  どうやって……?)


 


 透子は階段の段差に座り、

 ノートを開いた。


 「三浦さんの証言を整理するわ」


 陽斗も隣に座る。


 透子は淡々と読み上げた。


 「① ガラスに映ったのは“自分と同じ顔”

  ② しかし本人は笑っていないのに、映像は笑っていた

  ③ 目が合った気がした

  ④ その瞬間、寒気がした」


 陽斗はごくりと喉を鳴らした。


 (……怖い……

  でも……

  白石さんは全然怖がってない……

  むしろ楽しそう……

  なんで……?)


 透子は続けた。


 「まず、①と②。

  これは“反射”では説明できない。

  本人と違う表情をする反射なんて存在しないから」


 「じゃあ……

  どうやって……?」


 透子はノートに線を引いた。


 「可能性は三つ」


 陽斗は息を呑んだ。


 (出た……

  白石さんの“可能性三択”……

  これが始まると……

  事件は本格的になる……)


 透子は指を三本立てた。


 「一つ目。

  “映像を投影された”」


 「投影……?」


 「そう。

  ガラスに映像を映す技術はある。

  でも、学校の階段でそんな機材を使うのは不自然」


 (確かに……)


 「二つ目。

  “ガラスの向こう側に誰かがいた”」


 「えっ……

  でも向こうは壁だよ?」


 「そう。

  だからこれも違う」


 (じゃあ…… 残るは……)


 透子は三本目の指を立てた。


 「三つ目。

  “本人の動きを観察して、

   それを模倣した人物がいた”」


 陽斗は背筋が凍った。


 (模倣……

  つまり……

  “もう1人の自分”は……

  誰かが演じていた……?)


 透子は続けた。


 「三浦さんは“笑っていないのに笑っていた”と言った。

  つまり──

  “笑っている三浦さん”を知っている人物が、

  その表情を再現した可能性がある」


 陽斗は震えた。


 (そんな……

  そんなこと……

  誰が……

  なんのために……?)


 透子はガラスを見つめたまま言った。


 「相沢くん。

  この事件……

  “観察者”がいるわ」


 「観察者……?」


 「そう。

  図工室のときと同じ。

  誰かが“人の動きや表情”を

  細かく観察している」


 陽斗は喉が乾いた。


 (また……

  誰かが……

  僕たちを見てる……?

  なんで……

  なんでそんなこと……)


 透子は立ち上がった。


 「次は三浦さんの“動線”を調べるわ。

  どこから来て、どこで止まって、

  どの角度でガラスを見たのか」


 陽斗は慌てて立ち上がる。


 「えっ、今から……?」


 透子は振り返り、

 小さく笑った。


 「相沢くん。

  調査は“現場が一番新しいうち”にするものよ」



 (……悪魔が戻ってきた

  でも……

  ついていくしかない……)


 


 三浦の動線を再現し、

 階段の角度を測り、

 ガラスの反射を確認し、

 透子は淡々とメモを取っていく。


 陽斗はその横で、

 ただ必死についていくしかなかった。


 (白石さん……

  やっぱりすごい……

  僕なんか……

  足手まといじゃ……)


 透子はふと陽斗を見た。


 「相沢くん。

  あなたがいないと、

  私は“人の気持ち”が分からないの」


 「え……?」


 透子は淡々と続けた。


 「私は“現象”は読めるけど、

  “人の心”は読めない。

  だからあなたが必要なの」


 陽斗の胸が跳ねた。


 (……必要……

  僕が……

  白石さんに……?)


 透子は階段を見つめた。


 「この事件……

  “人の心”が関わっている。

  だから──

  相沢くん、あなたが必要よ」


 陽斗は小さくうなずいた。


 (……僕は……

  白石さんの……

  役に立てる……?)


 透子は言った。


 「さぁ、次は“笑った三浦さん”を探すわ」


 「えっ……?」


 透子は静かに言った。


 「三浦さんが“笑っているところ”を

  知っている人物──

  それが犯人よ」


 陽斗は息を呑んだ。


 (……笑っている三浦さん……

  それを知っている人……

  つまり……

  “近い人”……?)


 透子は歩き出した。


 「相沢くん。

  ついてきて」


 陽斗は慌てて追いかけた。


 (……やっぱり悪魔だ

  でも……

  僕は……

  この悪魔と一緒に……

  真相を追いたい……)


 ──階段の“もう1人の自分”事件は、

 核心へ向けて動き始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ