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推しの悪魔は迷探偵  作者: 双鶴


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43/66

第43話「噂と、悪魔と、仲良し」

 図工室ミステリーが終わって二日後の月曜日。

 一年三組は、事件そのものよりも──

 “陽斗がいじめられていた理由” の方で盛り上がっていた。


 村井がぽろっと漏らした

 「相沢はいじめられてた」

 という言葉は、瞬く間にクラス中に広がり、

 さらに尾ひれがついた。


 「相沢ってさ、白石さんと仲良いから嫉妬されてたんじゃね?」

 「だよね、あれ絶対そうだよ」

 「白石さんと話してる男子、他にもいるけど……

  相沢だけ“特別扱い”っぽいし」


 陽斗は机に突っ伏した。


 (なんで……

  なんでそうなるんだよ……

  僕はただ……

  巻き込まれただけで……

  特別扱いなんて……

  されてない……はず……)


 胸がざわつく。

 透子の家に行ったこと、

 抱きつかれたこと、

 弟呼ばわりされたこと──

 全部が頭の中でぐるぐる回る。


 (あれは……

  なんだったんだ……

  僕は……

  どう思われてるんだ……)


 そんな陽斗の机に、

 女子の影が落ちた。


 「ねぇ相沢」


 顔を上げると、

 女子三人がニヤニヤしながら立っていた。


 「心当たりないの?」

 「いじめられてた理由だよ」

 「白石さん絡みじゃないの?」


 陽斗は慌てた。


 「え、えっと……

  そんなこと言われても……

  白石さんを好きな男子なんて

  たくさんいるだろうから……」


 女子たちが「ほぉ〜」と盛り上がる。


 そのときだった。


 「っていうか」


 透子が、

 教室の後ろから歩いてきた。


 空気が一瞬で変わる。


 透子は陽斗の前に立ち、

 淡々と、しかしはっきりと言った。


 「そもそも、あなたは私が好きなの?」


 「…………えっ?」


 教室が爆発した。


 「きたぁぁぁぁ!!!」

 「白石さん、ド直球!!」

 「相沢、逃げられないぞ!!」

 「これもう公開告白じゃん!!」


 陽斗の頭は真っ白になった。


 (な、な、な、なんで……

  なんでそんなこと……

  みんなの前で……

  言うんだよ……!?)


 透子は表情を変えずに続けた。


 「あなたが私を好きだから

  いじめられるなら──

  あなたの気持ち次第なんじゃない?」


 (…………悪魔だ)


 女子たち「キャーーーー!!!」

 男子たち「相沢……頑張れ……」


 陽斗は震える声で言った。


 「だ、だって……

  恋愛じゃなくて……

  た……ただの……

  ただの仲良しだろ……」


 教室が揺れた。


 「仲良し!? 仲良しなんだ!?」

 「相沢、それはそれで羨ましいぞ!!」

 「白石さんと友達じゃなくて仲良しって言えるの強すぎ!」

 「いやでも“恋愛じゃない”って言ったぞ!」


 透子は小さくうなずいた。


 「なら大丈夫じゃない?

  それがハッキリすれば

  いじめはなくなるわ」


 そう言って、

 透子は自分の席へ戻っていった。


 陽斗は机に突っ伏した。


 (……白石さん……

  あなたは……

  なんでそんな……

  爆弾を落としていくんだ……

  僕の心臓が……

  もたない……)


 女子たちは

 「すごい恋愛劇を見た!」

 「白石さんのあの言い方、絶対何かある!」

 「相沢の返しが青春すぎる!」

 と胸キュン状態。


 男子たちは

 「相沢……強く生きろ……」

 「お前、もう逃げられないぞ……」

 「白石さんにあれ言われて“仲良し”は逆にすげぇ」

 と哀れみと羨望の混ざった目で陽斗を見ていた。


 陽斗は机に顔を埋めたまま動けなかった。


 (……僕は……

  白石さんの……

  なんなんだ……?)


 その答えは、

 まだ誰にも分からなかった。


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