第34話「真相を語る」
朝の一年三組は、昨日の“犯人対峙”の噂で満ちていた。
「三浦が犯人だったって本当?」
「光の足跡、全部あいつが……?」
「白石さん、どうやって気づいたんだろ」
「相沢も一緒にいたらしいぞ」
ざわめきは大きい。
だが、昨日までのような恐怖はない。
“終わった”という安堵が、教室の空気を少しだけ柔らかくしていた。
陽斗は席に座りながら、
透子の方を見た。
透子はノートを閉じ、
静かに立ち上がった。
「相沢くん。
今日、全部話すわ」
陽斗は息を呑んだ。
(全部……
光の足跡の仕組みも、
三浦の気持ちも……
白石さんは全部“言葉”にするつもりなんだ)
胸がざわつく。
誇らしさと、
置いていかれるような感覚が混じる。
放課後。
透子は一年三組の前に立ち、
黒板にチョークを置いた。
教室は静まり返っていた。
「光の足跡の“真相”を話します」
その声は、
いつもより少しだけ柔らかかった。
陽斗は胸が熱くなった。
(白石さん……
こんなふうにクラスに向き合うの、初めてだ)
透子は黒板に線を引きながら言った。
「まず、光の足跡の“仕組み”です」
──光の足跡の仕組み──
① 夕陽の入射角
② フェンスの反射
③ 窓ガラスの屈折
④ 床の散乱
⑤ 三浦くんが仕込んだ補助レンズ
⑥ 私たちの“位置”
クラスがざわついた。
「位置……?」
「俺たちの立ち位置ってこと?」
透子はうなずいた。
「三浦くんは、
私と相沢くんが“どこに立つか”を読んでいました。
だから光は、いつも私たちの前に現れたんです」
陽斗は息を呑んだ。
(僕たちの位置まで……
三浦……どれだけ見てたんだ)
透子は続けた。
「第一形態──歩幅。
これは“気づかせるため”の光」
「第二形態──走幅。
これは“違いに気づくか”を見る光」
「第三形態──曲線と記号。
これは“意味を読み取れるか”を試す光」
「第四形態──図形と焦点。
これは“私に届いているか”を示す光」
クラスは静まり返った。
透子は黒板に最後の線を引いた。
──犯人の意図──
“気づいてほしい”
“見つけてほしい”
“届いてほしい”
透子は静かに言った。
「三浦くんは……
自分の存在を“光”で伝えようとしたんです」
陽斗の胸が締めつけられた。
(存在……
僕だって……
白石さんに見てほしい)
透子は続けた。
「三浦くんは、
誰にも気づかれない自分が嫌だった。
でも、言葉では伝えられなかった。
だから光を使ったんです」
クラスの空気が少しだけ重くなる。
透子は黒板を消し、
静かに言った。
「でも──
三浦くんの光は、
確かに私に届いていました」
陽斗は息を呑んだ。
(昨日の言葉……
本気だったんだ)
透子は続けた。
「光は、
“誰かに届く”ためにある。
三浦くんの光は、
確かに私を動かしました」
クラスの空気が少しだけ温かくなった。
透子は席に戻りながら言った。
「これで……
光の足跡の事件は終わりです」
陽斗は透子の横顔を見つめた。
(白石さん……
すごいよ
僕は……
ただ隣にいただけなのに)
透子は陽斗の方を向き、
小さく言った。
「相沢くん。
あなたがいたから、
私はここまで来られたのよ」
陽斗の胸が熱くなった。
(……そんなこと言われたら
もう……
好きになるしかないだろ)
夕陽が差し込み、
教室を静かに照らしていた。
光の足跡は消えた。
だが、
その光は確かに誰かに届いていた。




