表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しの悪魔は迷探偵  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/66

第30話「光の足跡・第四形態」

 放課後の一年三組は、昨日の“第三形態”の衝撃がまだ抜けていなかった。


 「昨日のあれ、マジでやばかったよな……」

 「足跡じゃなくて、なんか記号みたいだったし」

 「白石さん、ずっと見てたよね……」

 「今日も出るのかな……」


 ざわめきは、もう“怪談”ではなかった。

 明確に“事件”として扱われ始めていた。


 陽斗は鞄を閉めながら、

 透子の席をちらりと見た。


 透子はノートを開き、

 昨日の光の軌跡を正確にスケッチしていた。

 その線は、まるで数学の図形のように整っている。


 (白石さん……完全に戦闘モードだ。

  篠原先輩のデモンストレーションも、

  昨日の第三形態も、

  全部“挑発”として受け取ってる)


 胸の奥がざわつく。

 嫉妬とも違う、もっと複雑な感情。


 (僕は……ただ横にいるだけで無力なのに)


 


 下校のチャイムが鳴ると、

 生徒たちは一斉に廊下へ流れ出した。


 「今日も出るかな……」

 「白石さん、もう来てる?」

 「動画撮る準備しとこ」


 そんな声が飛び交う。


 透子は席を立ち、

 陽斗にだけ聞こえる声で言った。


 「相沢くん。

  今日、光の足跡は“第四形態”に入るわ」


 陽斗は思わず聞き返した。


 「だ…第四……?」


 透子は淡々と答えた。


 「犯人は段階的に“難度”を上げている。

  今日の夕陽の角度なら、

  次の形態が出る条件が揃う」


 陽斗は息を呑んだ。


 (条件……

  白石さんはもう、犯人の“思考”を読んでる)


 自尊心が揺れる。

 でも、目をそらせない。


 


 二階廊下。

 昨日までと同じ場所。


 生徒たちが集まり、

 期待と恐怖が混じった空気が漂っていた。


 透子は群衆を押し分け、

 廊下の中央へ進んだ。


 陽斗も後ろに続く。


 その瞬間──


 ぽつり。


 床に光の点が落ちた。


 「出た……!」

 「今日も……!」

 「うわ、動いてる!」


 光の点は、

 昨日までと同じように前へ進む──

 かと思われた。


 だが。


 光の点は、

 突然“直角”に曲がった。


 陽斗は息を呑んだ。


 (直角……!?

  そんな動き、光じゃない)


 透子は光の動きを凝視し、

 眉を寄せた。


 「……やっぱり」


 光の点は、

 直角に曲がったあと、

 一定の間隔で“折れ曲がり”ながら進んでいく。


 まるで──


 図形を描いているように。


 「なにこれ……」

 「足跡じゃない……」

 「図形……?」


 生徒たちがざわつく。


 透子は小さくつぶやいた。


 「……三角形」


 陽斗は驚いた。


 「えっ……?」


 光の点は、

 床の上に正三角形を描いていた。


 透子は息を呑んだ。


 「光学実験で使う“基本図形”。

  反射角の基礎……

  犯人は、私に“気づけ”と言っている」


 陽斗は背筋が冷たくなった。


 (気づけ……?

  白石さんに……?

  なんで……?)


 光の点は三角形を描き終えると、

 今度はその内側に**円**を描き始めた。


 陽斗は震えた。


 (円……

  三角形の中に円……

  これって……)


 透子は震える声で言った。


 「……インサークル。

  三角形の内接円。

  光学の“基礎中の基礎”。

  犯人は……」


 光の点は最後に、

 円の中心に**一点の強い光**を落とした。


 透子は息を呑んだ。


 「……“焦点”」


 陽斗は理解が追いつかない。


 (焦点……?

  なんでそんな……

  これ、もう足跡じゃない)


 透子は拳を握りしめた。


 「相沢くん。

  これは“署名”よ」


 陽斗は驚いた。


 「署名……?」


 透子は光が消えた床を見つめた。


 「犯人は、

  “私は光学を理解している”

  “あなたに解けるはず”

  そう言っているのよ」


 陽斗は息を呑んだ。


 (白石さんに……

  解けって……

  犯人は、白石さんを……)


 透子は静かに言った。


 「相沢くん。

  犯人は──

  “私に気づいてほしい人”よ」


 陽斗の胸が締めつけられた。


 (気づいてほしい……

  白石さんに……?

  じゃあ……犯人は……)


 透子は廊下の奥を見つめた。


 「明日、犯人は“決定的な一手”を打つわ」


 陽斗は息を呑んだ。


 (決定的……

  もう逃げられない……)


 透子は小さくつぶやいた。


 「……犯人は、

  “私の近く”にいる」


 その声は、

 光よりも冷たく廊下に響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ