表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しの悪魔は迷探偵  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/66

第28話「光の足跡・第三形態」

 放課後の一年三組は、昨日の“篠原先輩”の噂でざわついていた。


 「二年の篠原先輩、ヤバいらしいよ」

 「光を操れるって本当?マジシャン?」

 「白石さんと相沢くん、篠原って先輩に会ったって」

 「光の足跡、今日も出るかな……」


 陽斗は鞄を閉めながら、

 透子の席をちらりと見た。


 透子はノートを開き、

 篠原先輩の言葉を何度も書き写していた。


 ──光は“見せたいものを見せる”。


 (白石さん……完全にスイッチ入ってる。

  篠原先輩の言葉、相当引っかかってるんだ)


 胸がざわつく。

 嫉妬とも違う、もっと複雑な感情。


 (僕じゃ……届かないのかもしれない)


 そんな弱気が、喉の奥にひっかかった。


 


 下校のチャイムが鳴ると、

 生徒たちは一斉に廊下へ流れ出した。


 「今日も光の足跡、見に行こうぜ」

 「昨日は出なかったけど……」

 「いや、今日は出る気がする」


 そんな声が飛び交う。


 陽斗と透子も廊下へ出た。


 透子は歩きながら言った。


 「相沢くん。

  今日、光の足跡が出る確率は高いわ」


 「え……どうして?」


 透子は窓の外を見た。


 「夕陽の角度が、

  “第三の条件”に近いから」


 陽斗は息を呑んだ。


 (第三……?

  白石さんはもう、次の段階を読んでる)


 自尊心が揺れる。

 でも、目をそらせない。


 


 二階廊下。

 昨日までと同じ場所。


 生徒たちが集まり、

 ざわざわと期待と不安が混じった空気が漂っていた。


 「出るかな……」

 「今日こそ動画撮る!」

 「白石さん来た……!」


 透子は群衆を押し分け、

 廊下の中央へ進んだ。


 陽斗も後ろに続く。


 その瞬間──


 ぽつり。


 床に光の点が落ちた。


 「出た……!」

 「今日も……!」

 「うわ、動いてる!」


 光の点は、

 昨日までと同じように前へ進む──

 かと思われた。


 だが。


 光の点は、

 突然“横”へ跳ねた。


 陽斗は息を呑んだ。


 (横……!?

  そんな動き、今までなかった)


 光の点は、

 まるで“意思を持つ生き物”のように

 左右に揺れ、

 時折止まり、

 また急に進む。


 「なにこれ……」

 「気持ち悪……」

 「幽霊じゃん……」


 生徒たちがざわつく。


 透子は光の動きを凝視し、

 眉を寄せた。


 「……ありえない」


 陽斗は透子の横顔を見た。


 (白石さん……動揺してる?

  いや、違う。

  “怒ってる”んだ)


 透子は小さくつぶやいた。


 「反射でも、屈折でも、散乱でも……

  こんな動きは説明できない。

  これは……」


 光の点が、

 突然“円”を描いた。


 陽斗は背筋が凍った。


 (円……!?

  足跡じゃない……

  もう“足跡の形”すらしてない)


 透子は息を呑んだ。


 「……意図的すぎる」


 光の点は、

 円を描いたあと、

 ゆっくりと“文字”のような軌跡を残した。


 ──えっ?これは…く?


 陽斗は目を疑った。


 (文字……?

  いや、そんな……)


 透子は震える声で言った。


 「……“く”じゃない。

  これは……“曲がり角の記号”。

  光学実験で使う……」


 その瞬間、

 廊下の端に“影”が動いた。


 陽斗は振り返った。


 (誰か……いる?)


 だが、

 影はすぐに消えた。


 光の点は、

 最後にひとつだけ強く光り──

 ふっと消えた。


 静寂。


 透子はしばらく動けなかった。


 陽斗はその横顔を見つめながら、

 胸が締めつけられた。


 (白石さん……

  こんな顔、初めて見る)


 透子は小さくつぶやいた。


 「……篠原先輩じゃない」


 陽斗は驚いた。


 「え……?」


 透子は震える声で言った。


 「篠原先輩の技術じゃ……

  “この動き”は作れない。

  これは……」


 透子は廊下の奥を見つめた。


 「……もっと“近く”にいる」


 陽斗の背筋が凍った。


 (近く……?

  僕たちの……すぐ近く?)


 透子は拳を握りしめた。


 「相沢くん。

  犯人は──

  “私たちを見ている”。」


 その声は、

 光よりも冷たく廊下に響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ