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厄災の王女の結婚~今さら戻って来いと言われましても~  作者: 春風由実
第二章 囚われの王妃

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1.サヘラン王国の大使

二章開始です♡


 アウストゥール王国の王城、謁見の間に漂う空気が重苦しい。

 まだ冷静さを保つ重臣の幾人かは、妃の輿入れ以来の空気だなと考えることもあった。


 玉座に足を組んで座るゼインは見るからに機嫌が悪く、壁際にずらと並ぶ重臣らの多くも堂々と客人らを睨みつけている。


 ゼインと対峙する場所に立つのは若い男女。

 サヘラン王国の大使役だ。


 アウストゥール王国はまもなく国王の婚姻式を控えている。


 国を挙げての祝い事の際、他国の大使がやって来ることはこの世界の通例である。

 その役を王族が担うこともあるのは事実。

 しかし多くの国は、それほど重要かつ利用価値のある人物を遠く異国の地に送ることはない。


 各自国の辺境地でさえ管理は大変なのだ。

 どこの国の上層部も、遠く離れた国には信用は出来ても有事に簡単に切り捨てられる人材を送ろうと考えるもの。



 これまでのことも合わせ、サヘラン王国がアウストゥール王国に見せる振舞いは異常だ。



 アウストゥール王国が戦争を終えてめでたく隣国になったとはいえ、それぞれの王都ははるか遠く。

 サヘランの王都から辺境までがすでに長い道のりで、そこからアウストゥールがこの度併合した一国を丸っと越えて、その辺境からアウストゥールの王城までの移動を考えると、サヘラン王国は此度わざわざ王族を送ってきたと考えられた。


 確かに理由はある。

 ゼインの妃フロスティーンは、元はサヘラン王国の末の王女だ。


 両国の友好の証として婚姻を提案したのはサヘラン王国で、重臣らでさえ多くが反対の意を示す中その話に乗ったのがゼインだ。

 大国であるサヘラン王国のいわくつきの姫を貰い受け、これを然るべき機に有効活用出来たなら、と当時は腹黒く計算していたゼインであったが──。



 今や彼にとってサヘラン王国の認識は、もはや敵国同等。



 ただでさえアウストゥール王国内では謀叛を企んだ愚かな貴族たちの粛清が続いた後だ。

 後始末を終えて、やっと婚姻式の準備に集中出来ると思われたそのとき、王城には不穏な空気が舞い戻っていた。

 あの妃の輿入れ時を思い出せば、サヘランからは嫌々大使役を任された人物が一人やって来るくらいだろうと考えていたところに、書簡が届いたからだ。


 これが浮かれていたゼインの気を逆撫で、婚姻式前の婚姻という国王自ら国の儀礼に反するという暴走を引っ張り出したことは、重臣の中でも特にこの国の制度に明るい者だけが知る事実となる。

 ある重臣が、戦争中の方がまだ楽だったのでは?と思ったこと。それは彼だけの秘密。



 そして今、目のまえで堂々と立つ二人の男女が、さらにゼインの気を逆撫でた。



 フロスティーンの輿入れのとき、馬車は一台。

 伴う者は、少ない騎士に侍女がひとりだけ。

 しかもその少なさで、全員がフロスティーンの味方ではなかった。

 輿入れ道具はフロスティーンでも軽々持てる鞄ひとつだ。


 その暮らしの中身がどうあれ、城で生まれ育ち外を知らなかったフロスティーンが、あの痩せた身体で厳しい長旅を一人耐えたことを思いやれば、目のまえの二人との対比により、ゼインはふつふつと胸の奥から絶えず湧く怒りをどうにも出来なくなってくる。


 一方で重臣らは、別のところから発生する怒りを抑えられず、各々その身を燃やしていた。



 此度やって来たサヘラン王国の大使らの一団……、そう彼らはまごうことなき一団だった。


 大使二名に馬車は十八台。

 荷には道中の食糧や祝いの品を含むと主張するが、それだけを運ぶ馬車はうち十台。

 二名の大使それぞれが一台の馬車を使用して、十人を超える供の者たちは残りの馬車を広々使った。

 そして彼らと荷を守るため、馬に乗る騎士たちが周囲を固めやって来たのだ。

 

 これでも国境で揉めて馬車も従者も騎士も馬も数を減らしたあとだ。

 アウストゥール王国に喧嘩を売りに来たのだとゼインは捉えたし、重臣らも考えは同じく、アウストゥール側はこの場の誰もが憤っていた。






読んでくださいましてありがとうございます♡

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