名付け親のリリンク
ひょんな事から没落し、辺境にて隠遁生活をしていたリリンクのもとに、差出人不明の荷物が届いた。
開けた中身はバラバラの死体……ではなく人形。組み立てると女性のフォルムのマネキン人形が出来上がった。
そして、同封されていた説明書によると、最後に必要なのは魔法オタクと揶揄された祖父リンクが遺した魔法の力。リリンクがそれを発動させると、人形が銀髪銀瞳の美少女メイドへと変貌したのだった━━
◇
風はやがて緩やかになり、変化を遂げた姿がはっきりと晒された。
「━━はじめましてリリンク様」
容姿に比例した美しい声で、元のっぺらぼうのメイドがお辞儀をする。リリンクはそれを呆然と見つめた。
「私はリンク様との盟約により遣わされた側仕え……まぁメイドみたいなものです。これからよろしくお願いいたします」
そう言って、美しく微笑む。まさに人間離れした美貌だが、リリンクは美貌より言動が気になった。
まるでここに住み着くような台詞……なので、こう言うしかない。
「うちには使用人はいらないよ。オレはここで呑気に暮らしてるし、基本的に自給自足だから稼ぎは多くない。お前を雇ってやれる余裕は無い」
だから出ていけと、はっきり、お断りを告げた。
ハレリア家は侯爵家だったが、今やほぼ金無しの貧乏人である。父と母は何処かへ。息子は呑気な辺境生活であり、誰1人雇う余裕は残っていないのである。
……もっとも、人間不信になっているリリンクにとって、「他人」は金があってもいらないものであるが。
「ご安心を。先ほども申した通り、私の存在はリンク様との盟約によるもの。反故にするわけにはいかない……私にとって大切な約束が課せられているのです。よって賃金は不要です。ただ貴方様のお世話をさせていただければ」
少女はもう1度、深くお辞儀をした。
その大切な約束の事は何も明かさないが、とにかくここにいたいらしい……。
まさか美人局か何かだろうか……。もしそうだとしたら、そこらの木で首を括って死のうと本気で思った。
1人そんな事を考え無言になっていると、少女は何か思い出したように声をあげた。
「そうだリリンク様、名前。私に名前をつけてください」
メイドは唐突に言い出す。名前が無いから名付けて欲しいとの申し入れであった。
これにリリンクは少し驚いた。彼女は祖父と知り合いのようだから、名前くらいあると考えていたのだ。
「無いのか名前。なんか適当に名乗れば?」
面倒なリリンクは素っ気なく言うが、少女は拗ねたような表情を見せた。
「それは困ります。今後の活動が出来ません……」
ここに来て急に少女らしい行動をするので、リリンクは少し焦った。
とりあえず考えてみる。そして、
「それじゃ……マドラックス。マドラックスでどうだ?」
パッと脳裏に出てきた、適当に考えた名前を口にした。
すると、メイドはあからさまに不満げにため息をついた。
「リンク様に似ず……可愛げの無い名前ですね。まぁ、それはそれで気に入りました。今後はマドラックスと名乗らせていただきます」
「何でそんな偉そうなんかなぁ……」
リリンクは頭を掻く。
こうして、家に住み着く事となったメイド、マドラックスとの生活が始まったのであった。
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