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工作のリリンク



 リリンクはひとまず、荷物を室内に運び込む。

 大きさ的に重そうな箱なのに、大した物ではないのか……それとも農作業で自然と鍛えられたおかげなのか、運ぶ事に苦労はしなかった。



 箱をリビングに置き、テープを切り開ける。

 そして中身を覗いた瞬間━━





「……ヒッ!」



 この時、誰もいなくてよかったとリリンクは心の底から思った。


 中には様々な太さや長さの、肌色の物体がたくさん入っていたのだ。……一瞬、バラバラ死体に見えて心臓が止まりかけた。




 ドクドクと脈打つ心臓を押さえながらよく見ると、それはバラバラのパーツのようで、組み立てる事で完成するものだと思われた。



 しかし、ここまで見ても差出人に思い当たる人物がいない。

 没落し辺境に来た以降、人との関わりを絶っている。第一、ここにリリンクがいることを正確に知る人はいないはずである。


 とりあえず、リリンクは訝りながらも、パーツを組み立てる事にした。


 ご丁寧にも組み立て方が書かれた紙が同封されており、それをもとに作業を進めていく。




 結果、出来たのは人形であった。

 背は高く、体のラインは女性だが、顔はのっぺらぼうであり、色気もクソもないマネキンのようなものが出来上がった。


「これで終わりか……?」


 時間をかけて組み立てたというのに、これで終わりだというのか……。残念にも程がある。


 そう思いながら空となった箱をもう1度見ると、底にはもう1枚、別の紙が潜んでいた。


「なんだ、続きがあるじゃないか」


 リリンクは紙を拾うと、内容をじっと読む。

 そして、眉間に皺を寄せた。


 最後に必要だったのは、おそらく今はリリンクにしか扱えないであろうモノ。


 魔法オタク(マジックナード)と揶揄(やゆ)された、今は亡き祖父が遺した力だった。




 リリンクは本棚から1冊の本を取り出し、付箋(ふせん)が貼られた箇所を開く。

 それは祖父が書き残した、研究成果をつぶさに記すノートであった。


 リリンクはそれをもとに、最後の工程を開始する。




「天に命運、地に血路。空は煙(けぶり)、草は灰に。なれど剣は共にあり。我が戦意を誇りとし、今一度天啓をお貸しください……」


 リリンクはぶつぶつと呟く。

 これ自体は魔法ではなく、前準備……祝詞(のりと)のようなものである。

 この世界は、魔法は過去のものとされ、こうでもしないと扱えないほど廃れていた。

 リリンクの祖父……リンク・アルフ・ハレリアはこれを研究していたので、周囲の貴族からは変人扱いされていた。



 それでつけられた蔑称が『マジックナード』であった。



「目覚めよ我が正。奮起せよ我が負。この祈り聞き届けたならば、この者に命の奔流を与えたまえ━━!」



 ━━刹那、人形を中心に風が吹き荒れた。


 室内に発生した突風に、リリンクは守るように腕で顔を覆う。その隙間から、信じられない気持ちで人形の変化を見た。




 のっぺらぼうだった顔は、銀色の瞳と長髪に彩られ。


 裸だった体はやがて、衣服を身にまとう。


 リリンクの前に、白いエプロンと黒のワンピースというオーソドックスなメイド服を違和感無く着こなす、少女が現れた。



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