辺境のリリンク
没落してから、(そこまでたってないけど)幾星霜。
立派な城に住む貴族生活より、人と会話しない辺境生活の方が性に合っていると気付くのに、そう時間はかからなかった。
ポツンと建つ家に、振り返れば森という、知り合いはおろかまず人がいない辺境地。
目の前には手ずから耕した畑があり、その畑の真ん中で、鍬を手に持ち農作業中だったリリンクは曲げっぱなしだった腰を起こし叩いた。
「さて、だいぶ進んだし、そろそろ休むか」
額を流れる汗を手の甲で拭いながら、リリンクは農具を倉庫にしまって家へ入っていった。
リリンクの生活は、昔からこうではなかった。
リリンク・フレン・ハレリアとは昔の名前。数年前までは王国の中央部に近い領地を治めるハレリア侯爵家の1人息子であり、当然父の跡を継ぐための教育を受けていた。
しかし、度重なる不幸と他貴族の裏切りにより侯爵家は没落。あっという間に領地を追い出されてしまったのである。
人里離れた場所に居を構えなければならなくなった、とんだ転落人生だとはじめは嘆いたが、心身共に傷を負った自分にとって、自然溢れるこの環境はストレスフリー。素敵な安住の地であった。
息子の自分が農具片手にこんなにも逞しく生きているというのに、父と母は一体どこをほっつき歩いているのやら……。もう何ヵ月も帰ってこない両親を米粒程度に思い出しながら、リリンクは今日も生きていた。
◇
贅沢な暮らしは失せたが辺境の平穏を享受しているさなか、リリンクのもとに一抱えある荷物が届けられた。
玄関先にポツンと置かれたそれに宛名は書かれておらず、差出人も不明……。
誰かが直接置いたようであり、見るからに怪しい荷物。リリンクは爆弾かもしれないと訝り、しばらく触ろうともしなかった。
━━しかし数日後、リリンクはついに怪しい箱の開封を決意した。
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