「死」の国 4
「……ならば、取り除けばいい」
老人が静かな声で告げた。
その言葉に、私は思わず顔をあげる。
いつの間にか、私は「死」の神々に囲まれていた。
「取り除くだと?」
「いいね、いいね!面白そう!」
「死以外を取り除けば、不完全ではなくなるだろう?」
老人はそう言って、どこか悲しげな表情を浮かべた。
その顔から、彼が数えきれない程の死を見届けてきたことが伝わってくる。
「死以外を取り除くことに、私も賛成だわ」
別の「死」の神が、老人の言葉に同意する。
「無意味な死はごめんよ。後始末も面倒くさいのに」
そう言って、彼女は大きくため息をついた。
「それに、彼女はまだ生きてる。ここで死ねば、生を全うできないわ」
その言葉を最後に、彼らの間では、私から「死」以外を取り除くことが決まりつつあった。
私の意思など、初めから考慮されていない。
「……嫌です」
無理だと分かっていても、口にせずにはいられなかった。
私は、自分の存在を否定されるためだけに旅をしている訳じゃない。
自分が何者なのかを知りたい。
そして、ありのままの自分を好きになりたい。
「私は……私はまだ、自分のことをよく知りません」
声が震えているのが分かった。
それでも、言葉を続ける。
いや、止められなかった。
「それでも、この混ざっている姿こそが!!」
奥歯を噛み締め、私は声を張り上げた。
「私という存在なんです!!!」
頬を伝う涙の熱さを感じる。
泣いたところで、何も変わらない。
それでも、自分の存在を否定される筋合いなんてない。
「それを拒むのであれば、お前に待つのは死のみ」
そう言って、「死」の神は、頭上から鎌を振り下ろす。
ああ、神々との繋がりが消える___……。
その時だった。
世界を覆い尽くす程の光が、突如として溢れ出した。
「死」の国が、一等星のような眩い光に飲み込まれていく。
不思議と恐怖はなかった。
どこか落ち着くような、それでいて、懐かしい感覚。
「ダメだよ」
少年のような声が響いた。
「まさか……何故?」
老人は驚きを隠せない様子で、その場で立ち尽くしていた。
鎌を振り下ろそうとしていた「死」の神も、身動きをひとつ取れずにいる。
まるで、見えない何かが彼らの動きを封じているかのようだった。
「それじゃあ、面白くないじゃないか」
その声とともに、大きな手が私の身体を掴む。
そして、私は光の方へと連れ去られた。




