↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神代観測録  作者: 音音
PR
40/44

「死」の国 3

しばらく老人と歩いていると、遠くにいくつかの影が見えてきた。

私は咄嗟に足を止める。

しかし、老人は気にする様子もなく、そのまま影に向かって歩いていった。

影──彼らは、老人と同じような黒い外套を纏っている。

誰も話すでもなく、ただその場に静かに佇んでいた。

老人に気づくと、それぞれが顔を上げ、こちらへ歩み寄ってくる。

「……爺さん」

「やっと戻ってきた」

「その子は?」

幾つもの視線が、私に向けられる。

私を拒絶する目。

何かを見定めるような目。

そして、純粋な好奇心を宿した目。

様々な視線を浴び、私は身を守るように構えた。

老人は一度私を振り返ると、彼らへ視線を戻す。

「この子はどうやら、迷い込んだようだ」

そう言って、私の前に立ち、彼らの視線を遮った。

「……何故、ここに生者がいる?」

一人の男が、私を睨みつけながら問いかける。

その言葉を皮切りに、周囲がざわめき始めた。

「……ありえない」

「この子が、生者ですって?」

「生者はここに来れないでしょ」

次々と声が上がる中、老人が口を開いた。

「この子は、「記憶」の使者だよ」

まるで、お前も知っているだろうと言わんばかりに、老人は先ほどの男を見やる。

しかし、何故この老人は、私が「記憶」の使者だと知っているのだろう。

そんな疑問を察したのかのように、老人が続けた。

「神は定期的に会議を行うのさ」

「なんでですか?」

「……世界の秩序を守るための情報交換、と言ったところか」

どうやら、その会議で「記憶」の使者が旅をしていることを知ったらしい。

これはまさか、「記憶」様の計らいなのだろうか……。

「しかし、生者は此処には来れない筈だ」

男は私を見据える。

「神ですら此処を嫌うのに、使者如きが此処に来れる筈がない」

吐き捨てるような口調だった。

そんなこと、私にだって分かるわけがない。

自分のことさえ、まだ分からないのに。

言い返したい気持ちを押し殺し、私は俯いた。

すると、別の者が口を開く。

「……この子、本当に「記憶」の使者なの?」

「どういう意味だ?」

「そのままの意味よ。微かに感じるわ。彼女から、私たちの死(・)を」

その言葉に、私は耳を疑った。

確かに、「法」の神も、この老人も、私に神の一部が混ざっていると言っていた。

「あなた方は「死」の神なんですか……?」

恐る恐る尋ねる。

「そうだ。私(・)た(・)ち(・)は「死」の神」

老人は、今更気づいたのかと言いたげに目を見開いた。けれど、すぐにいつもの落ち着いた様子に戻る。

この人たちが、「死」の神……。

ごくりと唾を飲み込む。

その正体を知った途端、彼らを取り除く空気が、先程までとは違って感じられた。

まるで珍しいものを見るような視線。

その意味も、なんとなく理解できた気がする。

「それって、つまりこの子は、死の側にもいるってこと?」

別の者が口を開いた。

「それじゃあ、彼女は不完全な存在だよね?」

間を置かず、疑問が重ねられる。

やがて、彼らの視線は、異端者を見るようなものへと変わっていった。

「不完全な者は存在してはならない」

先程から私に反発するような態度を見せていた男が、こちらを見据える。

「だったら、簡単じゃん」

くすくすと笑いながら、一人が口を挟んだ。

「ええ。早いこと消してしまえばいいのでは?」

別の者も、私を値踏みするような目を向ける。

ああ、そうか。

この人たちは、私という存在を消すことさえ、何とも思わないのだ。

それこそが、「死」の神なのだと悟った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。