第134話「精神侵入」
能研ハウス――
激戦はさらに激しさを増していた。
ソウヤとイレイダはペインと激突し、
雛儀はラルゴの怪力を受け止め、
結衣、燕、小雨はアランダの人形部隊と交戦している。
しかし――
その戦場を、もう一人の幹部が静かに見つめていた。
屋上
小柄な少女。
右目を覆う眼帯。
ネネ。
「……。」
彼女は戦場を見つめ、小さく呟いた。
「グラン……。」
「始めるね。」
マランは何も言わず、その様子を見守っていた。
ネネはゆっくりと眼帯へ手を掛ける。
「ごめんなさい……。」
眼帯が外される。
閉じられていた右目が開く。
紫色に妖しく輝く瞳。
Mental operatore――精神操作。
その瞬間。
ネネの視線が一直線にソウヤへ向けられた。
「……っ!」
ソウヤの身体が突然止まる。
「ソウヤ!」
イレイダが叫ぶ。
ソウヤは頭を押さえ、その場に膝をついた。
「ぐっ……!」
「どうしたの?」
ペインは笑いながら距離を取る。
「急に動きが止まった。」
「つまらないよ。」
ソウヤの視界が揺れる。
景色が歪む。
聞こえるはずのない声。
見えるはずのない景色。
「これは……。」
ソウヤの意識は、精神世界へ引きずり込まれていた。
精神世界。
真っ白な空間。
そこに立つ一人の少女。
ネネだった。
「私は、マスタークラウンのネネ。」
ソウヤは構える。
「お前……。」
ネネは悲しそうに微笑む。
「私...戦いたくない。」
「でも。」
「グランの命令だから。」
右手をゆっくり掲げる。
「眠って。」
ソウヤの身体が重くなる。
「くっ……。」
意識が薄れていく。
その瞬間。
「ソウヤ。」
聞き慣れた声が響く。
レイ。
精神世界へ姿を現す。
「レイ!」
レイはソウヤの前へ立つ。
「ここは。」
「俺たち二人の世界だ。」
ネネは驚きの表情を浮かべた。
「人格が……二つ?」
レイは静かに笑う。
「違う。」
「俺たちは。」
「一つだ。」
ソウヤも隣へ並ぶ。
「ああ。」
「俺たちは負けない。」
現実世界。
ソウヤの瞳が再び開く。
「戻った!」
イレイダが安堵する。
ペインは笑った。
「へぇ。」
「ネネちゃんの精神操作を破るんだ。」
屋上
ネネも驚いていた。
「初めて……。」
「破られた。」
マランは静かに口を開く。
「相手が悪い。」
「ソウヤは、一人じゃない。」
ネリクマはその言葉を聞き、マランを見つめる。
「……。」
マランは視線を戦場へ戻す。
「だから。」
「簡単には負けない。」
その言葉には、敵を認めるような響きがあった。
アランダも状況の変化に気付く。
「まぁ。」
「精神操作まで破るなんて。」
neuropastum――傀儡。
さらに五体の人形を前へ出す。
「だったら。」
「もっと楽しませてちょうだい。」
燕が前へ出る。
「結衣さん!」
「小雨さん!」
「ここは私が受けます!」
結衣は頷く。
「援護する!」
小雨も静かに左目へ手を添えた。
戦場はさらに混沌としていく。
その混乱の中――
グランは遠く離れた場所で静かに笑っていた。
「いいぞ。」
「能研よ。」
「少しずつ壊れていけ。」
――第134話 完




