第132話「傀儡の微笑」
能研ハウス前――
戦場は二つに分かれていた。
ソウヤ、イレイダとペイン。
雛儀とラルゴ。
激しい戦闘が続く中、結衣たちは負傷者の救護を行っていた。
「結衣先輩!」
「こっちは大丈夫!」
結衣は回復能力を発動しながら周囲を見渡す。
「みんな、無理はしないで!」
ドォォォォン!!
ラルゴの拳が地面を砕く。
雛儀は帝凰剣で受け流しながら距離を取る。
「なんて力……!」
ラルゴは表情一つ変えない。
「逃げる。」
「壊せない。」
再び拳を振り上げる。
Storonger(怪力)
轟音と共に巨大な瓦礫が宙を舞う。
雛儀は剣で切り裂きながら突き進む。
「はぁぁぁぁッ!!」
帝凰剣が一直線にラルゴの胸元を狙う。
キィィィィン!!
火花が散る。
今度は浅く切り裂いた。
ラルゴは初めて傷口を見下ろす。
「……。」
「切れた。」
雛儀は息を整えながら微笑む。
「あなたも、無敵ではありません。」
一方。
ペインとの戦い。
「遅い!」
ペインの拳がソウヤへ迫る。
しかし。
「そこだ!」
ソウヤはレイの戦闘技術を活かし、懐へ潜り込む。
ドゴォッ!!
拳がペインの脇腹へめり込む。
「ぐっ!」
ペインは一歩後退する。
イレイダも間髪入れず飛び込む。
「逃がすか!」
鋭い蹴りが炸裂。
ドォン!!
二人の連携が少しずつペインを追い詰め始めていた。
「ハハハ!」
ペインは笑う。
「最高だ!」
「もっとだ!」
その時だった。
「ふふ……。」
戦場に、妖艶な笑い声が響く。
全員が振り向く。
一人の女性。
長い髪を揺らし、優雅に歩いてくる。
その後ろには、十数体の人形。
どれも人間のように自然に歩いていた。
「あなたたちが能研?」
女性は優しく微笑む。
「久しぶね。」
「私は――」
人形たちが一斉に構える。
「アランダ。」
「neuropastum(傀儡)の能力者よ。」
アランダは人形の頭を優しく撫でる。
「この子たち、寂しがり屋なの。」
「だから。」
「お友達が欲しいのよ。」
その瞳が、結衣を見つめた。
「あなた、優しそうね。」
「私のお人形にならない?」
結衣の背筋に寒気が走る。
「結衣!」
ソウヤが叫ぶ。
しかし、その隙をペインは見逃さない。
「よそ見はナンセンスッだぜ!!」
ドゴォォッ!!
拳がソウヤを吹き飛ばす。
「がはっ!」
イレイダが舌打ちする。
「チッ!」
「厄介なのが増えやがった!」
屋上
ネリクマはアランダを見つめる。
「アランダか……。」
マランは静かに目を閉じる。
「予定通りだ。」
ネネが不安そうに尋ねる。
「まだ終わらないの?」
「終わらない。」
「グランは。」
「これだけで終わらせる男じゃない。」
アランダは優雅に指を鳴らす。
パチン。
その瞬間。
十数体の人形が一斉に能研メンバーへ襲い掛かった。
「きゃあっ!」
結衣が咄嗟に後ろへ跳ぶ。
燕が前へ出る。
「結衣さん!」
「ここは私が!」
小雨も左目の眼帯へ手を掛ける。
「私も……戦います。」
能研は三つの戦場へ分断された。
ソウヤ・イレイダ VS ペイン
雛儀 VS ラルゴ
燕・結衣・小雨 VS アランダ
そして、そのすべてを遠くから見つめるマランの視線は、なおネリクマから離れなかった。
第132話 完




