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第17話 アザールのゴールドラッシュ!ダザル鉱山

とあるダンジョンの最奥の薄暗い部屋の中。

ネリアはパソコンの液晶画面を睨みつけながら、背後に立つ人物へと声をかける。


「ミーエル。これ、次のツアーの資料ね」


「かしこまりました」


ミーエルが笑顔でファイルを受け取り、内容を確認する。


「今回のツアーは――」


【ツアー名】アザールのゴールドラッシュ!ダザル鉱山

【お客様】男性10名

【付与能力】採掘能力向上

【ご要望】掘り当てた鉱石は、アザール観光が現世の現金で買い取りいたします。

【旅程】

1〜3日目 ダザル鉱山で採掘

4日目 アザールから現世へ、現世解散


「……団体ツアーですか……」


ミーエルは少し困ったような笑顔になった。


「今回はツアー客全員に、『採掘能力向上』のスキルを付与するから大丈夫でしょ。まぁ……鉱山に危険はつきものだけどね」


ネリアは軽い口調で話す。


「規約の注意事項には『危険な作業が伴います』と、大きく記載してありますし、同意書もいただいていますから大丈夫ですかね。それではネリアさん、行ってまいります」


ミーエルは笑顔で一礼すると、部屋を後にした。


【1日目】

現世から集まった、いかにも訳ありそうな男たち10名。

彼らがいたのは、無数のドワーフや亜人たちがせわしなく行き交う、活気に満ちた『ダザル鉱山』の入り口だった。


「皆様、本日はアザール観光をご利用いただき誠にありがとうございます。皆様にはこちらのダザル鉱山にて、この『レルマ石』を採掘していただきます」


ミーエルが手のひらに載せた、鈍い銀色に輝く鉱石を示しながら説明する。

すかさず、男たちの中から一人がギラついた目で手を挙げた。


「おい、ガイド。その鉱石が採れたら、本当にそっちが現世の金で買い取ってくれんだよな?」


「はい、もちろんでございます。100グラムにつき、現世の現金一万円で買い取らせていただきます」


「100グラムで1万……!?」


「ってことは、キロ単位で掘れば大金持ちじゃねえか!」


男たちの間に、一気に欲望のざわめきが広がる。


「それでは、皆様が採掘を行う場所まで、現場監督でドワーフのモイゲンさんに案内していただきます」


ミーエルの紹介で前に出たのは、がっしりとした体躯に立派な髭を蓄えたドワーフの職人、モイゲンだった。

彼は男たちを鋭い目で見回すと、ダミ声で警告を発した。


「おい、 あんたらにいくつか注意しとく!鉱山の中じゃあ『落盤』と『ガス溜まり』には絶対に気をつけろ! 掘ってる最中に変な音がしたり、妙な匂いがしたりしたら要注意だ。それから、本道から外れた『脇の穴』には近づくな。俺たちが掘るのを断念した場所や、魔物が掘り進めた穴が混ざってる。最後に、レルマ石以外で珍しそうな鉱石を見つけたら、すぐ俺に教えろ。……じゃあ、ついてきな!」


モイゲンの案内に従い、男たちは坑道へと入っていく。


鉱山の中はしっかりと木組みで補強され、壁に埋め込まれた魔石が青白い明かりで道を照らしていた。しかし、モイゲンの言う通り、所々には木組みのされていない脇穴がぽっかりと口を開けていた。


「着いたぞ。あんたらはここを掘ってくれ!」


モイゲンが指差したエリアを見て、一人の男が不満げに眉をひそめた。


「……おいおい、ここ、本当に鉱石が出るんだろうな? 掘っても何も出ない場所じゃないだろうな?」


「ムッ!」


モイゲンはへそを曲げたように鼻を鳴らした。


「素人のあんたらのために、鉱脈が出やすそうな場所をわざわざあてがってやったんだ! 贅沢言うんじゃねえ!」


男たちは文句を言いつつも、3人が採掘、3人が木組みでの補強、3人が出た土砂の運搬というように、手分けして作業を開始した。


ガキィン! ガキィン!


「おい、こりゃあすげえ! サクサク掘れるぞ!」


「土砂の袋も、楽に運べるな!」


アザール観光から付与された『採掘能力向上』の恩恵は絶大だった。

男たちは効率よく、またたく間に掘り進めていく。


その様子を少し離れた場所から見ていたモイゲンは、不安そうに大きなため息をついた。


「おい、ミーエルさんと言ったか。あんな素人連中だけで作業させて、本当に大丈夫なのかね?」


ミーエルはいつものように、にこやかな笑顔で答える。


「ええ、注意事項は事前にお伝えしておりますし、能力も付与してありますので、おそらく大丈夫だと思います。……私自身は鉱山についてそこまで詳しくありませんので、何か想定外のことが起きた際は、すぐにモイゲンさんをお呼びしますね」


「……まぁ、それならいいが。じゃあ俺は持ち場に戻るよ。何かあったら必ず呼んでくれよ!」


モイゲンが踵を返そうとしたその時、作業の輪に加わっていなかった男がミーエルに近づいてきた。


「ミーエルさん。俺はここじゃなくて、モイゲンさんの作業について行ってもいいか?」


ミーエルは微笑みながら答えた。


「かまいませんが、モイゲンさんのお手伝いをして鉱石が採れたとしても、アザール観光で買い取りはできません。よろしいですか?」


「ああ、わかった」


男は短くそう答えると、すたすたとモイゲンの後ろを歩いていった。


その日の作業は、事故もなく無事に終了した。

しかし、期待していたレルマ石らしきものは、結局出なかった。


夜、男たちは手配された宿屋の食堂で、夕食をとっていた。


「いやー、もらった能力のお陰で作業自体は楽だったが、さすがに疲れたな」


「ぶっちゃけ胡散臭いツアーだと思ってたが、現世のクソみたいな仕事に比べたら、一攫千金の夢があるだけマシだよな」


7人の男たちがそれぞれ話を交わす中、そこから少し離れた席で、3人の男たちが頭を突き合わせ、何やらこそこそと密談を交わしていた。


【2日目】

「皆様、おはようございます! それでは今日も一日、頑張りましょう!」


翌朝、ミーエルが爽やかに号令をかけると、昨晩こそこそと話していた3人組が前に進み出た。


「ミーエルさん。俺たち、正規の場所じゃなくて、別のルートを掘ってもいいか?」


ミーエルは一瞬だけ目を細めたが、すぐにいつもの笑みを浮かべた。


「かまいませんが、正規のルートから外れた場合、何かトラブルがあった際にもすぐに手助けできない可能性があります。本当によろしいですか?」


「ああ。ここにいられる日にちも限られてるんだ。少しでも稼げる可能性を高くしたいからな」


「かしこまりました。」


昨日と同様、モイゲンについて行った男は、ドワーフたちのエリアへ向かった。

ミーエルと残された6人の男たちは、昨日の作業現場へと向かう。


一方、別行動を選んだ3人組は、途中で見つけていた脇穴へと足を踏み入れていた。


「おい、本当にこっちの方が鉱石が出るんだろうな?」


『顎髭の男』が、不安げに周囲を見回しながら『坊主頭の男』に尋ねる。


「間違いないって。昨日、ちょっと中を見たら、奥にデカい岩盤があったんだ。鉱石なんてのは、ああいう岩の塊の中にこそ眠ってるもんだろ? しかも、その岩盤、心なしか銀色がかって見えたんだよ」


『眼鏡をかけた男』もニヤリと笑って同調する。


「ドワーフの連中が掘れなかった場所でも、俺たちには付与能力がある。楽勝で掘り崩せるってことさ」


しばらく進むと、確かに通路を塞ぐように巨大な岩盤が現れた。3人がツルハシを構え、思い切り振り下ろす。


ガキィン!


「よっしゃ! 能力のおかげで、簡単に掘れるぞ!」


「よし、この調子でどんどん掘るぞ!」


3人は歓声を上げながら岩盤を削っていくと。


ビシッ……!


静かな洞窟内に、不穏なひび割れの音が響いた。


「ん?……なんだ、今の音は――」


言葉を言い切るよりも早く、岩盤全体に一瞬で無数の亀裂が走った。


ドゴォォォン!!!


凄まじい轟音と共に、天井の岩塊が一気に崩落した。

木組みによる補強を全くしていなかった脇穴は、一瞬にして大量の土砂と巨岩で埋め尽くされ、3人の身体は押しつぶされた。


その凄まじい崩落音を聞きつけ、ミーエルは優雅な足取りで、モイゲンは顔を真っ青にして慌てて現場へと駆けつけてきた。


「おい、ミーエルさん! まさかツアー客の奴ら、この脇穴の岩盤を掘りやがったのか!?」


「はい。3名のお客様が、ご自身の判断でこちらの脇穴に入っていかれました」


「馬鹿野郎! あそこの岩盤は地層が脆くて危ねえから、俺たちでも手をつけなかったんだぞ……!」


モイゲンが脇穴の中を覗き込むが、そこは完全に塞がれていた。


「……こりゃあ、もう助からんな。おい、他の奴らにも、絶対に勝手な真似はするなと伝えてくれ!」


「かしこまりました」


ミーエルは笑顔で綺麗に一礼すると、正規の現場で働く6人の元へと戻った。

そして、3人が落盤で亡くなったことを淡々と告げ、改めて注意を促した。


「というわけですので、皆様は安全第一で作業をしてくださいね! それでは、私はこれからお茶の時間にしようと思いますので、何かありましたら呼んでください」


「…………」


あまりにも軽いガイドの対応に、6人の男たちは言葉を失い、黙々と作業に戻るしかなかった。


その日の午後、作業を続けていた『歯抜けの男』がツルハシの先で土砂を退けていると、足元にキラリと光るものを見つけた。


「……おい、見てみろこれ!」


歯抜けの男は、近くにいた『オールバックの男』をこっそり呼び寄せ、手のひらを見せた。

そこには、美しく妖しい輝きを放つ小ぶりの宝石がいくつか転がっていた。


「おぉ……! これ、ドワーフのオヤジが言ってた珍しい石ってやつじゃねえか?」


「なあ……見たところ、そんなに量があるわけじゃねえ。……他の奴らに内緒にしねえか?」


「そうだな……。ガイドにこっそり話して、俺たちだけで買い取ってもらおう」


2人は周囲を警戒しながら、その宝石をポケットの奥深くへとしまい込んだ。


夜、宿屋の食堂に集まった6人の男たちは、昼間の落盤事故による恐怖と疲れ、そして成果が出ない焦りから、誰一人として口を開かなかった。

歯抜けとオールバックの男は、ミーエルに宝石を買い取ってもらう交渉のタイミングをじっと見計らっていた。

しかし、どういうわけか小太りの男がミーエルの席で、モイゲンを交えて話し込んでいて、2人は話しかけるタイミングを掴めなかった。


「チッ、今日は諦めて明日にするか……」


2人はそのまま各自の部屋に戻って眠りについた。

深夜、すべての明かりが消え、静まり返った宿舎の部屋。

男たちのポケットの中で、しまわれていた宝石の表面に小さな亀裂が入り「パカリ」と割れた――。


【3日目】

翌朝、集合場所には歯抜けの男とオールバックの男の姿がなかった。

しかし、ミーエルは気にした風でもなく、いつも通り笑顔で号令をかける。


「皆様おはようございます。今日が採掘ができる最後の日となります。皆様、安全第一で頑張りましょう!」


その時、宿屋の主人が顔を真っ青にし、息を切らせて走ってきた。


「ガ、ガイドさん! 大変だ、ちょっと来てくれ!!」


ミーエルが主人に連れられ、2人の部屋へ向かうと、そこには地獄のような光景が広がっていた。

ベッドの上で硬直している歯抜けとオールバックの男。

彼らの目、鼻、口、耳――ありとあらゆる身体の穴から、おぞましい数の芋虫が這い出していたのだ。2人の衣服のポケットからは、パカリと綺麗に割れた宝石の殻が転がり落ちていた。

宿の主人が怯えながら話す。


「卵が宝石に似た『宝蟲たからむし』だ……! 体温で温められて、孵化したんだな……。体内に入り込んで、中から食っちまってる……」


「ちゃんと事前に確認させていただければよかったんですが……」


ミーエルはふうと小さくため息をついた。


ミーエルが残りの4人の元へと戻ると、隠し持っていた宝石が魔物で、それが原因で死んでいたことを伝えた。

4人は死んだ2人が「自分たちだけで儲けようとしていた」という事実を知り、激しい怒りを露わにした。


「あのバカどもが! 自業自得だ!」


「俺たちを裏切ろうとするからバチが当たったんだ!」


「残されたのは俺たち4人だけだ。おい、俺たちは最後まで一蓮托生だぞ!」


4人は互いに鼓舞し合い、執念を燃やして最後の作業へと取り掛かった。


作業中、4人は自然と現世での身の上話を語り合い始めた。


「……なぁ、あんたはどうしてこのツアーに来たんだ?」


「俺か?……現世で借金があってな。一発逆転を狙ってんだ」


「はは、みんな同じようなもんだな。そうじゃなきゃ、こんな怪しいツアーに誰が来るかってんだ!」


「違いない!」


4人が自嘲気味に笑い声を上げた、その瞬間だった。


ガチィン!!!


今まで聞いたこともないような硬い音が響き渡った。

4人が驚いて周りを掘り返すと、そこには壁一面に、まばゆい銀色の輝きを放つ巨大な鉱脈が顔を出していた。


「や、やったぞ……! 『レルマ石』の鉱脈だ!!!」


「おい、誰か早くミーエルさんを呼んでこい!」


一人の男がミーエルを現場へと連れてきた。

ミーエルは鉱脈を確認すると、パッと顔を輝かせた。


「皆様、おめでとうございます! 間違いなくレルマ石です。モイゲンさんを呼んで参りますので、これ以上は掘らずにそのまま待っていてくださいね」


ミーエルがツカツカと去っていく。


残された4人は「はぁ……」と大きなため息をつき、安堵した。


「これで俺たち、大金持ちだな……」


「ああ……ん?」


全身に入れ墨を入れた男が、ふと鉱脈のすぐ脇に目を留めた。

そこにも、銀色の石の頭が見えていた。


「おい、こっちの脇の壁にも銀色の石が見えるぞ!」


「本当だ! 掘ってみようぜ」


興奮で我を忘れた4人は、ミーエルの忠告を無視し、ツルハシを手に取って脇の壁を激しく掘り始めた。


「一体、現世の金でいくらになるだろうな!」


「そうだな――おい! 何か変な匂いしねえか?」


「確かに……」


そう話し、男が顔をしかめた瞬間、急激な目まいに襲われてその場に崩れ落ちた。

4人は次々と意識を失い、冷たい地面へと倒れていった。


しばらくして、ミーエルはモイゲンと、モイゲンのところで作業していた男を連れて、現場へと歩いていた。


「俺が出そうなところをあてがってやったが、やっぱり出たか!」


「はい、ありがとうございます。残った4人の方に利益を還元できそうで何よりです。――そちらはいかがですか、段野様?」


段野(ツアー3回目)が答えた。


「モイゲンさんから、宝蟲のような鉱山に出る魔物について色々と教えてもらっていたよ。この整備された坑道も、人工のダンジョンみたいでおもしろいな」


そんな会話を交わしながら現場へと近づいたその時、モイゲンの足がピタリと止まった。

彼は鼻をヒクヒクさせると、2人の前に両手を広げた。


「ん?……待て! この匂いは……ガスか!!!」


モイゲンが悲鳴のような声を上げる。


「吸ってると意識が飛んで死んじまう! 急いで離れるぞ!」


しかし、ミーエルは焦るモイゲンの横を、ツカツカと何事もないように通り過ぎていく。


「おい! 危ねえって言ってるだろ!」


「女神の加護があるので大丈夫ですよ。お客様の様子を見てきますね」


ミーエルは涼しい顔のまま、ガスの充満する奥へと進んでいった。


「どうなってんだ……あのガイドの女」


驚愕して開いた口が塞がらないモイゲンの横で、段野だけが「うん、うん」と一人で深く納得したように頷いていた。


ミーエルが奥に行くと、そこには4人の男たちが無残に倒れていた。

全員が完全に死亡しているのを確認したミーエルは、彼らがみつけた本鉱脈とは別に、強引に掘り進められた脇の壁の形跡に目を留める。


「みつけた鉱脈だけでも充分だったのに……。残念です」


ミーエルは4人の遺体をそのままにし、外へと向かった。


外に出ると、坑道内にいた他の作業員たちも一斉に避難してきていた。

段野は邪魔になるだろうからと、一足先に宿屋に戻っていた。

避難してきた人々の中からミーエルの姿を見つけ、モイゲンが必死の形相で駆け寄ってくる。


「4人はどうだった!?」


「残念ですが、間に合いませんでした」


「そうか……。ガスが抜けるまでしばらくこの穴は使えんな」


モイゲンは頭を掻きながら他の作業員たちに指示を出し、安全のために4人がいた穴を塞ぐと、別の穴へと向かっていった。


【4日目】

翌朝、現世への帰還を前に、宿屋の前には段野とミーエルの2人だけが立っていた。


「今回はレルマ石の鉱脈が見つかったものの、9名の方が亡くなってしまいました……。残念です」


「そうだな……」


「段野様は今回、鉱脈の取り分はありませんがよろしかったのですか?」


ミーエルが不思議そうに段野の聞く。


「もともと異世界の坑道を見たかっただけだからな」


「そうですか。今回のツアーはいかがでしたか?」


「ふっ……俺にかかれば楽勝だったな。それとモイゲンさんから、このピッケルをもらったんだが、現世に持って帰ってもいいのか?」


段野がポケットから取り出したのは、宝石の原石を崩すための、小ぶりだが非常に精巧な作りのピッケルだった。


「はい。ドワーフ製の上等なピッケルのようですね。――それでは、そろそろご帰還のお時間です。段野様、またのご利用をお待ちしております」


ミーエルが深く一礼すると、段野の身体は光の粒子となって消え去り、現世へと帰還していった。


ツアーを終えたミーエルは、ダンジョンの奥にある部屋へと戻ってきた。

「ミーエルおかえりー。どうだった鉱山は?」


ネリアが相変わらずパソコンの画面を見つめたまま、軽い調子で声をかける。


「はい。9名の方が亡くなってしまいましたが、レルマ石の鉱脈をみつけましたよ」


「えっ!? じゃあ残った一人が鉱脈総取り!?」


ネリアは驚愕して椅子から飛び上がった。


「いいえ、段野様は作業に参加してなかったので、鉱脈の取り分はありません」


「……あ。そう言えばあったわ、段野の名前……」


ネリアは顎に手を当てて、ふむと感心したようにつぶやいた。


「ミーエル! 今度、段野がツアーに来たら私も一緒に行くわ! あいつがどうやって生き残って――じゃなくて、ツアーでどうしてるか興味があるわ!」


「かしこまりました」


「それより……!」


ネリアは一瞬で満面の笑みに切り替わると、勝ち誇ったように両手を突き上げた。


「見つけた鉱脈はアザール観光の総取りね! やっほー! 女神様に報告よー!」


嬉々として部屋を飛び出していくネリアの後ろ姿を見送りながら、ミーエルは静かに手帳を取り出した。


彼女はペンを走らせ、今回のツアー客のリストの横にバツの印を9つ、そして一番下の『段野』の名前にマルの印を1つ書き加えた。


手帳をそっと閉じると、ミーエルはこちらを向き、いつもの笑顔で深く一礼した。


「皆様、またのご利用を心よりお待ちしております」

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