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僕が死ぬとき、世界は無に還る ―自覚なき刻術士のやり直し無双―  作者: 七鳳


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第22話 魔法の掲示板と最初の依頼

 一歩、薄暗い集会所へと足を踏み入れた瞬間だった。


 それまでざわついていた空間の空気が、まるで刃物で切り裂かれたように一変する。中にいた数多くの裏の住人たちの鋭い視線が、一斉にセナたち四人へと突き刺さった。


 値踏みするような、あるいは明確な敵意を孕んだ視線の暴力に、リリアとエルナは思わず息を呑み、アヤはいつでも動けるよう静かに重心を落とす。しかし、そんな一触即発の空気の中でも、ワディだけは少しも態度を変えなかった。


「おっと、みんなそんなに睨まないでよ。僕の大事なお客さんなんだから。……さて、まずは受付を済ませないとね」


 ワディはひょうひょうとした調子でそう言い、四人を促して集会所の奥へと進んでいく。


 すると、周囲の連中はワディの姿をハッキリと視界に捉えた瞬間、それまでの威嚇するような態度を一転させ、蜘蛛の子を散らすように視線をそらした。そして、顔を突き合わせるようにして、何やら一斉にヒソヒソと話し始めたのだ。


 その囁き声はどこか怯えを含んでいるようでもあり、あるいは何かを確信したような不気味さがあった。セナはその様子を冷静に観察しながら、ワディの背中を追った。


 案内された受付に着くと、ワディは手際よく手続きを進めてくれた。裏の組織特有の面倒な洗礼や滞りもなく、セナたちは驚くほどスムーズに、裏ギルドでの依頼を受けられる資格を手に入れた。


 手続きの合間、セナたちは壁際に集まり、これからの動きについて声を潜めて作戦を立てる。


「前王や新王の情報を掴むためには、まずはこのギルドで実績を作るしかない。もっと上の、情報の核心を握る権力者に会うためには、今の僕たちはあまりに無名すぎるからね」


 セナが静かに告げると、アヤも深く頷いた。


「同感です。まずは依頼を確実にこなし、組織内での格を上げるのが最善手でしょう」


 四人は改めて気を引き締め、この裏の世界での初陣を飾るための依頼を探すことにした。


 ワディに案内された掲示板の前へ移動した一同は、思わず目を見張った。


 そこには、普通のギルドにあるような紙の依頼書など一枚も貼られていなかった。代わりに、壁一面に魔法によって生み出された妖しい光の文字――魔法の依頼書が、無数に浮かび上がっていたのだ。


「すごい……全部魔法で管理されているのね」


 リリアが感嘆の声を漏らす。見れば、新米用や上級用といった区切りすら存在せず、すべての依頼がフラットに並んでいた。実力さえあれば、新参者でも上級冒険者と同じ高難度の依頼を自由に選べるという、裏ギルドらしい徹底した実力至上主義の現れだった。


 あまりに異質な光景を前に、セナは隣に立つワディに視線を向けた。


「ワディ、この中から選ぶにしても、僕たちはまだここのルールに慣れていない。普通のギルドにあるような、まずは基本となるような依頼はないかい?」


「おや、手堅いね。いいよ、それなら……そうだね、これが丁度いいんじゃないかな」


 ワディは目を細めて不敵に笑うと、浮かび上がる光の文字の一つを細い指先でパチンと弾いた。


 セナたちの前にスッと押し出されたその依頼内容を読み上げ、一同は顔を見合わせる。


『依頼内容:ダンジョンの清掃』


 表の世界のギルドなら、ただの雑用、あるいは新人の小遣い稼ぎに見える名目。けれど、ここは無法者たちが集う裏ギルドだ。その「清掃」という二文字の裏に、どれほど血生臭い、あるいは危険な裏の意味が隠されているのか――。


 セナは浮かび上がる文字をじっと見つめ、これから始まる奇妙な任務に向けて、静かに闘志を燃やすのだった。

お読みいただきありがとうございます!(´▽`)

何とか台風を乗り越えて書き上げることができました!


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