第20話 光の矢と新拠点
これまでの宿を引き払い、僕たちはエルナの案内で、大商人トルク家の屋敷へと拠点を移すことになった。
「広い部屋ね……! 宿屋の部屋とは大違いだわ」
案内された上層階の客室で、リリアが感嘆の声を漏らす。アヤも周囲の防衛環境を確認しながら、少しだけ肩の力を抜いたようだった。
「エルナ、こんな立派な場所を宿代わりにしていいのかい?」
「ええ、もちろんよ。パパも、セナたちにはいくら感謝しても足りないって言っていたもの。ここでゆっくり旅の疲れを癒して頂戴」
エルナが嬉しそうに微笑み、僕たちはこれからの裏ギルドへの接触について話し合おうと、窓際のテーブルを囲んだ。
――その、まさに直後だった。
シュッ……!
静寂を切り裂く鋭い風切り音と共に、夜闇の向こうから一本のまばゆい『光の矢』がベランダへと撃ち込まれた。
「――っ! 敵襲!」
アヤが驚異的な反応速度で抜刀し、僕たちの前に立ちはだかる。リリアも即座に魔力を練り上げた。
しかし、ベランダの床を穿ったその矢は、追撃の爆発を起こすこともなく、ただ静かにまばゆい光の粒子を散らしているだけだった。
「待って、攻撃じゃないみたいだ。……矢の先に、何かある」
アヤを制し、探るようにベランダへ近づく。光が完全に消えかける直前、その矢の先端に、見覚えのある雑にちぎられた紙の切れ端が括り付けられているのが見えた。
「これって……」
リリアが今にも消えそうな光の粒子をまとった矢じりを見つめ、驚きで顔をこわばらせた。
「嘘でしょ? 光属性の魔法なんて、この国でもごく一部の人間しか使えない貴重で強力な魔法よ……。それを、こんな手紙を届けるためだけの矢に使うなんて。ワディが自分で撃ったのだとしたら、あいつ、間違いなく上級魔法使い並みの実力者よ」
大商人の屋敷の警備を事もなげにすり抜け、この上層階のベランダを正確に射抜く精密さと、それを平然とやってのける圧倒的な魔力。
アヤが感嘆と緊張の入り混じった溜息を漏らす。
「移動したばかりのこの場所を一瞬で突き止める情報網に、この破格の魔法……。これが、国家の軍から逃れ続けている『裏ギルド』の本物の実力ということか」
僕は静かにその紙切れを解き、部屋の明かりに透かしてみた。
そこには、インクの擦れたサササッという粗い筆跡で、こう書き残されていた。
『明日の夜、門の前で待つ。』
――明日の夜、この屋敷のすぐ目の前で、いよいよ裏ギルドへの扉が開く。
その大胆で規格外なコンタクトに、部屋の空気が心地よい緊張感で満たされる中、僕はじっとその文面を見つめ、明日の対峙に向けて静かに思考を巡らせるのだった。
お読みいただきありがとうございます
20話何とか書き切りました!
大変ですね笑
まぁこれからも頑張って書きますので読んでいただけるとありがたいです。




