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僕が死ぬとき、世界は無に還る ―自覚なき刻術士のやり直し無双―  作者: 七鳳


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第18話 突然の訪問者

 トルク家を後にし、ルフニカの宿屋――前と同じ、見慣れた自分たちの部屋へと戻ってきた一行。


「とりあえず宿に戻って、作戦を立てようか」


 セナがそう言って宿に戻りテーブルを囲み、みんなで椅子に腰掛けようとした、まさにその時だった。


 コン、コン。


 短く、しかし明確なノックの音が、静かな部屋に響き渡った。


「……っ! 誰だ?」


 アヤが即座に腰の剣の柄に手をかけ、鋭い視線をドアへと向ける。


「僕が出るよ」


 セナが落ち着いた足取りでドアへと近づき、警戒しながらサッと扉を開けた。しかし、廊下の左右を見回しても人影はなく、夜の静寂が広がっているだけだった。


「誰もいないな。……あ、いや、これ」


 セナが視線を落とすと、足元に一枚の紙切れが落ちていた。


 それを拾い上げてドアを閉め、部屋の明かりに透かしてみる。そこには、インクが少し擦れたような跡と共に、サササッと殴り書きされたような粗い筆跡で、短いメッセージが残されていた。


『明日の夜、ギルドの窓際の席で待つ。』


「セナ、それは……?」


 近づいてきたアヤやリリアたちに、セナは紙切れを見せた。


「これって、ヴァルターさんが言っていた仲介人からなのかな?」


 セナが首を傾げながら呟くと、エルナがその文面をじっと見つめ、不安そうに身を乗り出してきた。


「ええ、きっとそうよ。パパが裏ギルドの立ち入り方を教えようって言っていた矢先だもの。でも、どうして私たちの部屋が分かったのかしら」


「これはきっと、僕たちがこの宿に戻ってきた直後を狙ったんだと思う」


 セナは雑にちぎられたような紙の端に目をやりながら、静かに思考を巡らせた。


「『お前たちの動向はすべて掴んでいる』っていう、向こうからの挨拶みたいなものだよ。わざわざ足元を見せてくれたんだ」


「……なるほど。私たちがヴァルター卿に接触した時点で、すでに網に掛かっていたというわけですか」


 アヤが悔しそうに拳を握る。セナはそんなアヤの肩の力を抜くように、ふっと口元を緩めた。


「まあ、僕たちから怪しい裏路地を探し回る手間が省けたと思えば悪くないよ。罠かもしれないけど、ここは行くしかないね」


「どうするの、セナ? みんなで行く?」


 リリアが尋ねると、セナは少し考えてから首を横に振った。


「いや、エルナはお父様の顔のこともあるし、ここで待機。僕がまず窓際の席に向かうから、リリアとアヤはギルドの別の席、あるいは外で待機して、何かあったらすぐに動けるように裏でサポートしてほしいんだ」


「分かりました。セナの身は、私が必ず守ります」


 アヤが頼もしい、真っ直ぐな眼差しで力強く頷く。


 セナはその言葉に深く頷き返し、明日の夜に向けた具体的な配置と連携の作戦を立て始めるのだった。

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