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争い嫌いの元社畜ですが、『ハーモニー』スキルで魔物たちとノーストレスな共存生活を始めました。  作者: 遠峰 黎


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第2話:最初の家族

 町を出て、静かに暮らせる場所を探した。歩いていると、森が見えてきた。さっき聞いた話によると、あまり人は近づかないそうだ。


 入り口は木々が密集しており、中は薄暗く見えた。しかし、その奥へと続く道は、俺の心を奇妙な期待で満たしていた。


 サバイバル自体はストレスだが、誰にも干渉されないなら、それはそれで気楽だ。幸い凶暴なモンスターはいないらしい。ゼロから穏やかな生活を築いていきたいとも思っていた。


 不安よりも、自由な未来への希望が勝った。


(よし、行くか!)


 そう思った矢先、早速モンスターが現れた。

 小さな青い塊。

 俺は魔道士の言葉を思い出し、その生物を注視した。

 すると、頭の中に文字が浮かび上がった。


【ミニスライム:レベル 1】


(なるほど、こうやって見えるわけか。レベル1……俺と同じ。武器も持ってないし、当然、争う気も一切ないがどうしたもんか……)


 そんなことを思っていると、ミニスライムがプルプルと震えながら、小さな声をかけてきた。


「……ぶたないで」

「え?」


 俺は思わず立ち止まった。


「敵じゃないよ」

「え……? お前、人の言葉、話せるのか?」

「僕の言葉、通じた!」


 俺はハッとした。

 これが『ハーモニー』のスキルか。異種族と心を通わせる力。

 相手の「心」の部分に、アクセスしているような感覚だった。


「分かった! 仲良くしよう。俺から攻撃することは、絶対にないから!」


 それを聞くなり、目の前のミニスライムは弾んだ。


「よかったー! 酷いことされると思った! 良い人! 僕についてきて」

「そうだな。分かった、ついていくよ」


 こうして俺は、ミニスライムに案内されて、人知れぬ森の奥へと足を踏み入れた。


◆◇◆


「俺はヤマダだ。お前はなんて名前なんだ?」


 俺は目の前のミニスライムにそう尋ねた。

 スライムはプルプルと揺れながら、純粋な感情を返してきた。


「ナマエ? ナマエってなに?」

「名前っていうのは、自分とみんなを区別するための呼び名のことだよ」

「そうなんだー。ナマエないよー」


 争いを避けて隠れているモンスターにとって、個体識別の必要性がなかったことに思い至った。


「そうか。じゃあ、お前はミニスライムだから、『ミー』でどうかな?」

「ミー!」


 そう言って、ミーは嬉しそうに弾んだ。


「俺はヤマダだ」

「ヤマダー!」


 なんだか語尾を伸ばされてしまったように聞こえたが、俺は訂正しなかった。


(まあいいか……互いに対等な関係を目指したいな)


 そして俺はミーと共に、森の奥深く、小高い丘の斜面に口を開けた小さな横穴で生活を始めることになった。


 入り口は木々の根に隠され、中は狭く湿っており、土と苔の匂いが充満している。


 ミーは俺に、その洞窟が他のモンスターも近づかない安全な場所であることを教えてくれた。


「外は怖いよ。ミーは弱いから、強くなりたいな。強くなったら、隠れなくて済むんだー。でも、どうやったら強くなれるか、わからないー」


 俺は、ミーの小さな体を眺めた。

 レベル1の、ミニスライム。


(この森のモンスターの中でも、きっと最弱なんだろうな……)


 なぜか、新入社員の頃の自分を思い出した。

 会社の中でも、弱い存在。

 立場や種族は違えど、きっと本質的な悩みは同じなんだと感じた。


「強くなりたいのか。じゃあ、まずはこの洞窟を、最高の場所にしよう。基地って言ったらいいかな。俺も、もう争いにはうんざりなんだ。ここで穏やかに暮らしたい。一緒に頑張ろう!」


 俺の言葉に、ミーは小さく弾んだ。


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