4話 『センエース』VS『山賊』。
4話 『センエース』VS『山賊』。
張り裂けそうな心臓を抱えて、
センは森の中を駆けまわった。
小さな身体で踏みしめる土は柔らかく、そのくせ、一歩ごとに息が上がっていく感覚が、これまで感じたことのないほど鮮明だった。
どうやら近くには誰もいない模様。
木の根に何度もつまずきながら、それでも足を止めずに走っていると、前方の茂みが不自然に揺れた。
「ん……ゼノリカのメンツか? それとも……」
現れたのは、三人組。
汚れた革鎧、粗末な剣、無精髭。
一目で分かる、出来の悪そうな山賊。
先頭の男が、センを見て下卑た笑みを浮かべ、
「おいおい、なんだ、お前。こんな深い森の中で、ガキが一人で何してんだ」
残りの二人も、下品な笑い声をあげた。
「迷子か? 運が悪いな、坊主。これからお前は地獄を見るぜ」
「けど、しかたねぇ。自分の運の悪さを恨みな」
三人が、じりじりと距離を詰めてくる。
土を踏みしめる重い足音が、幼い身体には妙な圧を伴って迫ってきた。
サードアイすら使えない今のセンではわからないことだが……
三人とも、存在値でいえば、30ちょっと。
普段のセンからすれば、羽虫となんら変わらない数値だが、
今のセンからすれば、15倍ほど強い相手。
……まあ、とはいえ、
「らっきぃだぜ。おい、そこの情報源ども、俺以外に、俺みたいな、弱そうなガキを見なかったか? ただの弱そうなガキじゃなく、『顔がよくて、弱そうなのに、ちょっと強い』みたいな感じの変なガキな」
山賊たちは、一瞬、呆けた顔になった。
絶体絶命のはずのガキが、震えるでもなく、泣きわめくでもなく、やけに落ち着いた声で、しかも意味不明な質問を投げてきたからだ。
恐怖にすくむどころか、値踏みするような視線をこちらへ向けてくる目の色が、三人の頭の中にある『遭難したガキ』というイメージと、まるで噛み合っていなかった。
「……あぁ? なに寝ぼけたこと言ってやがる。イカれてんのか、クソガキ」
先頭の男が、剣を抜きながら鼻で笑った。
刃の切っ先が、朝の光を鈍く跳ね返す。
「命乞いの仕方も知らねぇんじゃあ話にならねえ。まあいい。ちょうど暇だったんだ。おもちゃにしてやる」
「バカそうだが、よく見れば、健康的できれいな肌をしていやがる」
「お前ら、完全には壊すなよ。あとで、奴隷商人に売るんだからなぁ」




