3話 終わってる心臓。
3話 終わってる心臓。
センは短く息を吐き、立ち上がった。
子供の身体は頼りなく、少しふらついたが、すぐに体勢を立て直す。
そして、
「閃拳」
拳を振ってみた。
恐ろしく弱弱しい……が、
「戦闘力は……かなりゴッソリと削られているっぽいが、完全に消えたわけじゃねぇな。助かったぜ。それなら、正直、どうとでもなる。ヌルゲーと言ってもいい」
記憶も、戦闘力も、レベルも、アイテムも、体も……全部を失って、それでも、爆裂強大な敵を倒したことだってある。
記憶と戦闘力の一部がある現状は、そこまで悲観すべきものじゃない。
持つべきものは、長年の経験値。
これまで、散々、地獄を見てきたが、
おかげで、こんな素っ頓狂な状態だというのに、ほとんど慌てることなく、現実と向き合えている。
「俺のことはどうとでもなる……となると、あいつらのことが最優先」
状況把握後……真っ先に頭に浮かんだのは、配下たちのこと。
トウシ。
平熱マン。
アダム。
シューリ。
他の配下たち。
「考えたくないが……もしかしたら、他の連中も、俺と同じように、何もない状態で放り出されているかもしれない……」
だとしたら、悠長にしている場合ではない。
「俺とまったく同じ状態なら、戦闘力も多少は残っているだろうから、そこらの山賊なんかに襲われることはないだろうが……ラッキ護衛軍的なやつらにつかまればやばいかも。……ラッキは、ある程度、善政をしいているが、悪を悪で管理するタイプの統治者……ゼノリカみたいな潔癖じゃねぇ。配下にゴミが何人もいるのは確認済み……くそ、調査の段階で、ガチでやばいのは殲滅しておくべきだった……」
ゼノリカが支配している第二アルファで、これと同じ状況になった場合、そこまで焦らないが、
この世界では、厄介なことになる可能性がゼロではない……というか、結構な割合でありそう……
「探さないと……くそ、めんどくせぇ……」
センは周囲を見渡した。
木々が続くばかりで、目印になるようなものは何もない。
風が枝を揺らす音と、遠くで鳴く鳥の声だけが、やけにはっきりと耳に届く。
だが、探すしかない。
情報がなければ、何も始まらない。
小さな足で、センは走り出す。
「はぁ……はぁ……終わってる心臓だぜ……500メートルも走ってねぇのに、切れてんじゃねぇよ息……」




