13話 俺はお前らに何をしてもいい。
13話 俺はお前らに何をしてもいい。
センCは彼らの前に姿を現した。
何の前触れもなく、事務所の中央に。
突然現れた青年に、その場の全員が数秒硬直する。
センCは三人を見渡しながら、静かに言った。
「所詮この世は弱肉強食。強い奴は弱い奴に何をしてもいい。正解だ。何も間違ってねぇ。弱い奴が悪い」
「――あ?」
最初に反応したのはバズだった。
「て、てめぇなにもんだ。ここをどこだと――」
「まて、バズ」
ギャンが鋭く制止する。
その額には汗が浮かんでいた。
「まったく気配を感じなかった。警備魔導システムも反応していない。……ただ者じゃない。あ、あなたは、まさか、護衛軍の方ですか?」
ラッキ護衛軍。
この世界最強の戦力。
その選定はラッキの一存で行われる。
新メンバーのお披露目会などもない。
だから、見知らぬ顔でも不思議ではなかった。
センCはギャンの問いをシカトして、
「……弱い奴が悪い。強い奴は何をしてもいい。だから……」
そう呟きながら、ゴキゴキと拳の関節を鳴らす。
そして、凍りついた空気の中で、淡々と告げた。
「俺はお前らに何をしてもいい。文句は言わせねぇ。自分だけ例外なんてご都合主義は許さねぇ」
★
数分後、事務所は静まり返っていた。
バズは死んでいる。
原形を留めない死体だけが床に転がっていた。
ギャンとアークは生かされたまま拘束されている。
「恐怖の色が足りねぇ。もっとおぞましいものを見る目で俺を見ろ」
脅しながら、センCは二人の記憶を読み取り、開運商会の全貌を把握していく。
ある程度、記憶情報を獲得したら、書類の確認に入る。
事務所中の引き出しをこじあけて、あらかたのデータに目を通す。
開運商会は想像以上に巨大だった。
各国の貴族、有力商人、地方領主と繋がり、裏社会の資金の流れ、勢力図、縄張り争い、犯罪組織同士の力関係にも深く関わっている。
この世界の裏側が、だんだんくっきりと見えてきた。
予想通り、開運商会の根底にはラッキの存在があった。
直接支配しているわけではない。
だが暗黙のうちに許可している。
一定のルールを与え、一定の枠組みを設け、その中で悪を管理している。
「悪で悪をコントロールする手法……なかなか見事な手腕だ。まだまだ完璧とは言えねぇが……まあ、及第点だろう。そこのゴミみたいなやつを『完全に封じる』ことなんてできねぇしなぁ……」




