12話 必要悪という合理。
12話 必要悪という合理。
(……かつての日本のヤクザ同様、『必要悪』として『容認されている』とみて間違いないだろう)
センCは施設全体を眺めながら、そう結論付けた。
存在が許可されている。
その理由も大体見えていた。
監禁施設を覗けば分かる。
親の借金のせいで売られた娘。
誘拐された子供。
騙されて売られた者。
――そういう純粋な被害者もいる。
しかし、それだけではない。
薬物中毒者、ギャンブル中毒者、詐欺師、暴力犯。
どうしようもないクズも大量にいた。
(悪の受け皿は必要……悪人は悪人に管理させておくのがベスト)
この一手……決して綺麗な手法ではない。
だが、一定の合理性はある。
悪を根絶やしにする完全な統治など不可能。
『害悪を害悪に任せて管理させる』というのは合理的な判断。
それは王としての責任を放棄しているわけではなく、現実的な統治手段の一つといえる。
センCは淡々と内部を見て回り、そのまま地下事務所へ侵入した。
★
事務所では、数人の組織員が酒を飲みながら談笑していた。
中心にいるのは幹部のギャン。
その隣には部下のアーク。
同じく部下の一人であるバズが下卑た笑い顔で、
「今回の獲物も、なかなかイキがいい! いいショーになりそうですねアニキ」
バズは楽しそうに笑う。
それに対し、同僚のアークは嫌そうな顔をした。
「親の借金のカタに売られただけのガキとかは、流石に勘弁してやれねぇですか? 自業自得の借金バカはどうなってもいいですが……」
「バカぬかすんじゃねぇ、アーク。親の責任はガキの責任だ」
バズは鼻で笑い、
「むしろ、そういう可哀そうなガキの方が客は喜ぶんだよ」
アークは露骨に眉をひそめた。
しかし反論はしない。
代わりに、上司のギャンが冷めた声で口を開く。
「今月は上納金がたりねぇ。カスを甚振るだけじゃ満足しない層からも金を引っ張るには、『同情の余地がある可哀そうな子供を殺す』というエンタメも必要なんだ。きれいごとでメシが食いたいなら反社から足を洗って公務員にでもなるんだな」
事務所に沈黙が落ちる。
不可視化状態でその様子を観察していたセンCが、心の中で、
(……言っていることは間違ってねぇ。間違ってないだけだが)
そうつぶやいた直後、センCは彼らの前に姿を現した。




