9話 小僧から石を取り戻せ。
9話 小僧から石を取り戻せ。
「よし」
完成した拠点を眺めながら、センは小さく頷いた。
「とりあえず、これで最低限は確保できたな。次は情報収集だ。――【オーラドール・アバターラ】――」
そう呟くと、センの周囲にジオメトリが連鎖する。
複雑な図形が空中に幾重にも展開され、眩い光が脈動する。
次の瞬間、大量の人影が生成された。
そこに立っていたのは、20人のセンエース。
一体一体が、通常の分身とは比較にならない超高性能個体のアバターラ。
存在値も知能も戦闘力も極限まで高められた、センの分身たち。
「とにかく情報を集めたい。怪しいもんを見つけたら即報告。では、出撃」
本体から命令を受けると、20人のアバターラが同時に、
「うるせえ」
「黙れ」
「跪け」
「命乞いをしろ」
「小僧から石を取り戻せ」
好き勝手な返事をぶつけてくる。
全員が同じ顔。
全員が同じ声。
そして、揃いも揃って態度が均等に最悪だった。
直後、20人の分身は一斉に不可視化。
気配も魔力も完全に消し去ったまま、森の各方向へ散開していく。
空を飛ぶ者。
普通にダッシュする者。
遠方へ転移する者。
「なんで俺の分身は、あんなにも性格が悪いんだろう……本体の俺は、こんなにも素直でピュアでチャーミングなのに」
あえて心底不思議そうな顔で呟くセン。
その横で、一連の流れを眺めていたトウシが呆れ顔になり、
「おどれの分身、反骨はするけど、一応命令は聞くんやな」
「ふふん、鬱陶しいだけで、決して無能ではないのだ」
★
アバターラたちが散開していく様子を見届けた配下たちは、当然のように立ち上がった。
「師よ。ボクも行きます」
最初に声を上げたのは平熱マンだった。
それを皮切りに、
「ならば私も」
「情報収集なら人数は多い方が」
「せめて周辺調査だけでも」
次々と名乗りを上げていく。
だが、センは即座に首を横に振った。
「どう考えても、俺の分身を使った方が効率がいい。俺のアバターラなら、ステルス性能もハンパないから、この銀河のコスモブラッドにバレる可能性も低い」
冷静かつ論理的な説明。
しかし、それで納得するような配下連中ではない。
「しかし……主上様だけに働かせておいて、配下である私たちが、ここで呑気に待っているだけというのは……」
アダムが苦い顔でそう言うと、周囲も同意するように頷いた。




