77話 たすけて。
77話 たすけて。
「別に助けたくないんだが……アダムやシューリやミシャならともかく……あんなメスガキども、どうなろうと知ったことか。てめぇのケツはてめぇで拭け、とでも伝えてくれ」
「伝えるよ。じゃあ、彼女たちのメッセージも君に伝えようか」
「あん?」
「――たすけて」
「……ちっ」
「ヒーローは大変だね」
「くっそ、マジで……あいつらがどうなろうが、どうでもいいのに……ちっ」
悪態をつきながらも、センの視線は、消えていく魂の光からしばらく離れなかった。
★
――東京大学。
キャンパス内のカフェテリアでは、壁掛けテレビが今日も同じニュースを流し続けていた。
『電脳英雄神サトー、人類を救う』
『奇跡の生還。アサルトアルファ事件、完全解決』
『被害者全員の蘇生を確認』
『英雄サトーを信仰する新興宗教、信者数が急増』
連日連夜、そればかり。
テロップの文字だけが空虚に流れ続け、周囲の学生たちの喧騒とは対照的に、その一角だけ現実味を失っているようだった。
サトーが魔王とペンを倒したことで、アサルトアルファに囚われていた数百万のプレイヤーは解放された。
さらに、アサルトアルファによって死亡したプレイヤーが全員蘇生。
世界規模の奇跡。
当然、人々は熱狂した。
救世主。
英雄。
人類史上最大の功労者。
そんな騒ぎをよそに、当の本人はコーヒーを飲みながら『バカバカしい』と苦笑していた。
「ぴよぴよ(名乗り出たら? 我こそはサトーですって。そうすれば、神になれるわよ)」
テーブルの上に座ったホウマがそう言う。
「誰も信じませんよ」
「ぴよぴよ(スマホの連結アプリにステータスは残っているでしょ。それを証拠にすれば、あなたが伝説狩りのサトーだって疑う余地はない)」
「そもそも神になりたくないので、パスですね」
サトーは肩をすくめた。
「なっていいことがあるとは思えません。もう二度と、無責任な期待を背負いたくないですし。そもそも、僕は何もしていませんし。レジェモンスターを倒したのはペン・ケースですし、そのペンと魔王を倒したのはトウシくんです」
そこで、感嘆を込めて笑いながら、
「いやぁ。しかし、トウシくんは本当にすごいですね」
「ぴよぴよ(トウシ?)」
「ああ、そういえば言っていませんでしたね」




