74話 わがままの勝ち。
74話 わがままの勝ち。
「トウシが本気を出せば、本物のサーバーを発見するぐらいまではいけるかもね。ただ、暗号解読するのに、どれだけ脳を爆発させても2分はかかる。そこらの天才なら100垓年をかけても無理なものを2分に短縮できるトウシの頭脳は敬服に値するけど……時間が足りない。なんて言っている間に残り35秒だ」
「降参だ。お前の勝ち。というわけで、交渉する。俺を殺していい。あのガキは殺すな」
「……」
黙ってニコニコ笑っているアサを見て、ペンは奥歯をかみしめる。
「望みを言え。何をしてほしい。俺にできることは全部やってやる。だから――」
いつもの軽薄さが消え、その声には初めて、切迫した本気の色が滲む。
「すごいねぇ。この期に及んで、まだ、本当に諦めてないもんね」
「時間がねぇ! 感想はいらねぇ! はやく――」
「君が、もし、本当に、『本質的な意味』で魔王の『身代わり』になる、というのであれば、その要請を受け入れるけど?」
「なんじゃそりゃ。じゃあ、最初からそう言えや。ボケが。オッケーだ、受け入れる」
「了解だ。じゃあ、田中トウシ……ペンを殺してあげて」
残り時間は数秒。
トウシも悩んでいる時間はなかった。
それにトウシは合理的な男。
だから、
「……」
カウントダウンのように迫る沈黙の中、
何も言わずに、エグゾギアを起動し、ペンの心臓を、狂気の拳で貫いた。
殺す直前まで、何か言おうとしたのだが、何を言えばいいか分からず、結局、黙って殺害することにした。
「ぐふっ……ぐぅ……く、くく……そ、総合的な判断だと、これは俺の勝利だ。俺のワガママは果たされた。……つまり、てめぇは俺に負けたんだ。ここまで俺はお前に負けっぱなしだったが……ついに! 俺はトウシに勝った! この超天才に俺は勝利した! こんなにうれしいことはない!」
「おどれ、マジでどういう性格してんねん。異常すぎるぞ……もう、とにかく全方位において……」
「ゼノリカを……頼んだぞ……詳しいことは……ミカンたちに……聞いて――」
直後、鳴り響く、ファンファーレ。
RPGのエンディングよろしく、軽快で荘厳でハッピーなエンドロールが、全てのプレイヤーの耳に届く。
【SYSTEM BROADCAST】
『魔王』とペン・ケースの討伐を確認
Killing Blow:サトー
与ダメージ比率:
Player:サトー 100%
External 0%(非プレイヤー存在、環境干渉、継続効果を含む)




