73話 『具体的に』の意味をはき違えるんじゃねぇ!!
73話 『具体的に』の意味をはき違えるんじゃねぇ!!
「なんか……いけた気がしない……」
などとペンが困惑していると、
そこで、ツボが、ぐにゃぐにゃと変形する。
そして、『アサ』の姿になった。
この世界に転移した際、最初に出会った謎のクソガキ。
年の頃は十前後。
中世風の簡素な衣服。
中性的な風貌。
アサは、淡々と、
「アサルトアルファ内部では、《銀の鍵》系統の因果遡行は意味を持たない」
「……ツボがアサだったんかい……とか、そんなしょうもないツッコミはしてやらねぇ。そんなことより重大すぎる問題が溢れているからな……具体的に教えてくれ。どういうことだ?」
「基底時空が、《超時空収束演算層》によって、『結果固定済みの閉鎖因果樹』へ圧縮変換されているからね。通常の時間跳躍は、無数の分岐宇宙を生成し、その中から最適な終着点を選択することで成立する。けど、《アサルトアルファ》では、その『途中式宇宙』そのものが、《観測同期型因果圧縮プロトコル》によって強制統合される。もっと言えば、時空分岐が発生した瞬間、《アザトースサーバー》側が、全分岐の主観連続性を再ハッシュ化し、『現在時刻の唯一解』へ回収しているんだ。だから、《銀の鍵》で過去へ跳躍しても、その試行世界は独立宇宙として保持されない。失敗も成功も、途中で得た情報も、全部、《現在のアサルトアルファ》へ吸収・折り畳み・再統合される。君が何兆回やり直そうと、最後には必ず、『今この瞬間』へ収束させられる。まあ、《アザトースサーバー》の《根源因果統合レイヤー》を書き換えて、途中式側へ『宇宙としての実在権』を付与できれば、時間遡行ループを独立維持できる可能性はあるけど……現状では無理だね」
「一ミリもわからん。この時間がない中、ダラダラなに言ってんだ、お前。確かに俺は『具体的に教えてくれ』といったが、いくらなんでも限度があるだろ。俺のことは常に幼稚園児だと思え。やりなおし」
「銀のカギは機能しているけど、使っても無駄なようになっている……と思ってくれればいい。その仕組みを変更しようと思えば、サーバーをハックしないといけないけど、時間的に無理。ユズが保有している『バチャルの鍵』を使っても同じだよ。時間遡行系は意味をなさない」
「……」
「残り時間1分。いい感じに時間を稼げた」
「やっぱ時間稼ぎかい……だろうなぁとは思っていたが――」




