70話 合理性。
70話 合理性。
「――アザトースサーバーは所詮、コスモゾーンの子供みたいなもの……」
ならば、アザトースサーバーのセキュリティもまた、無意識に最適解を選んでいる。
最も効率的な防壁。
最も合理的な認証。
最も堅牢な構造。
一見ランダムに見えても、そこには『コスモゾーン的な合理性』という癖がある。
最適化という思考の指紋が残っている。
3桁のダイヤルロックをイメージしてほしい。
総当たりで開けようとしたら、000から999まで千通り。
だが、設計者の癖が分かっていたら話は変わる。
設計者が徹底した合理主義者であり、『突破時間を最大化する』『記憶しやすい数字は避ける』『推測されやすい規則性を嫌う』という思考傾向を持つなら……そして、その思考形態から脱却できていないなら……千通りを試す必要はなくなる。
候補は百通りになり、やがて数十通りになる。
さらに、その設計者が過去にどのような最適化を好んだかまで分かっていれば、十通り、あるいは五通りまで絞り込むことすら可能。
既に、トウシは一度、アサルトアルファの解析に心血を注いでいる。
だから分かる。
設計者の思考。
設計者の趣味嗜好。
コスモゾーンの設計思想。
そして、それを模倣して生み出されたアサルトアルファの癖。
個々の鍵を解いたわけではない。
設計者がどのような最適解を好むのか。
その思考そのものを逆算した。
こめかみを伝う鼻血が、思考の限界を超えつつあることを静かに物語っていた。
――結果、
「……突破……」
鼻血を拭いながら、トウシは小さく呟く。
タイムリミットぎりぎり。
残り時間が1時間を切ったところで、どうにか壁を破壊することに成功。
「マジかよ。ハッパかけておいてなんだけど、マジかよ。……お前、キモいなぁ。引くわぁ」
「うっさい、ぼけぇ……ぁ」
言い返そうとした直後だった。
トウシの顔色が変わる。
「! どうしたぁ?!」
「締め出され……た……」
アサルトアルファは侵入成功を検知した瞬間、鍵体系そのものを再構築する仕組みになっていた。
認証キーは固定ではない。
観測された瞬間に変質する。
解読された鍵は、その時点で既に過去のもの。
「どういうことだ! 幼稚園児にもわかるように!」
「これも、サマーウォ〇ズのラストと同じ……」




