68話 アザトースサーバー。
68話 アザトースサーバー。
普通に素材を集めていたのでは到底間に合わない。
そこでトウシが考えたのが、『英雄サトー』の名前を利用する作戦。
サトーは今や全プレイヤーにとって望外の救世主。
その知名度と信用を利用しない手はない。
作戦内容は単純。
『魔王が強すぎて、英雄サトーでも苦戦している。助けるために手を貸してくれ』
そう全プレイヤーへ呼びかける。
いわばミスタ〇サタン方式。
効果は絶大。
プレイヤーたちは一刻も早く現実へ帰還したい。
そのためなら素材など惜しくない。
『全部もっていけ』という勢いで各地から物資が集まった。
レア素材。
高級素材。
攻略用に貯め込まれていた備蓄。
ありとあらゆる資源が雪崩のように集積されていく。
その結果、トウシは、あっさりと、携帯ドラゴンの生成に成功した。
『できたー、やったー』などと言っているヒマはない。
完成直後からフル稼働。
携帯ドラゴンの演算能力と解析能力を総動員し、コスモゾーンへのハックを開始する。
そこで予想外の事実が判明した。
アサルトアルファはコスモゾーンの管理下ではなく、『別系統』の支配を受けている。
コスモゾーン経由では中枢へ辿り着けない。
「めんどくさぁ……コスモゾーンやったらルート権限握った状態から始められるのに、こっちは信頼チェーンごと別系統や。認証基盤は独立、権限継承なし、通信経路不明、実質エアギャップ環境、暗号体系も未知数。鍵空間の解析から権限昇格ルートの探索、サイドチャネルの洗い出しまで全部やり直しやんけ……」
トウシはさらに深く潜り、膨大なログの痕跡を追跡しながら隠蔽された通信経路を暴いていく。
視界に流れ続ける文字列の奔流は、常人であれば意識を保つことすら困難な密度だった。
その末に、ようやく発見した。
特殊サーバー。
通称――アザトースサーバー。
しかし、発見できたことと侵入できることは別問題。
アザトースサーバーはコスモゾーンの権限体系と完全に切り離されていた。
通信は成立しているはずなのにルーティング情報が取得できない。
防壁は何重にも重なり、暗号体系も既存理論の延長では説明できない。
一応、認証アルゴリズムを解析し、鍵空間を洗い出し、権限昇格の経路を構築していけば、理論上は侵入可能。
――問題は時間。




