63話 それがわかったら、誰も苦労しねぇ。
63話 それがわかったら、誰も苦労しねぇ。
「……というわけで、さあ、考えろ、トウシ。俺は死なない。この頑固ワガママモードになった時の俺を殺す手段はない。人類が生き残る方法は、別プランを考えることのみだ」
「だから、ないってぇえええええ!!」
咆哮しながら、
トウシはさらに演算領域を拡張する。
脳が焼ける。
神経が悲鳴を上げる。
それでも止まらない。
――そこからもトウシは努力を尽くした。
考え得る限りの勝ち筋を試した。
未来を読み、
行動を先回りし、
逃げ場のない空間を構築し、
理論上の必殺を何度も叩き込む。
とにかくできる全てを駆使して、ペンを殺そうとした。
しかし、全てにおいて、ペンはトウシを上回る。
どんな攻撃もオメガバスティオンで防がれ、
仮に運よく貫通して直撃しても、ケロっとしている。
骨が砕けても。
内臓が潰れても。
全身が血塗れになっても。
当り前に立ちあがって笑ってみせた。
「なんで……死なへんねん!」
「さぁな。それが分かったら、誰も苦労しねぇ」
ペン・ケースは、『守るべき対象がある時』と『なんでもない時』で、あらゆるステータスに大きな差がでる。
『魔王を守るために命を賭している今』と『ただスペックを20倍にしただけの模擬ペン』では、前者の方が圧倒的に厄介。
単純な数値では測れない。
意思。
覚悟。
執念。
そういった曖昧な要素が、
ペンという男を化け物へ変えていた。
★
「――いやいや……普通、戦闘が長期化して疲れてきたら、スピードもパワーも、すべての精度が落ちるもんやろ……なんで、お前は逆に強くなってんねん。どういうこと?」
「さぁな。それが分かったら、誰も苦労しねぇ」
「そればっかりか。ちょっとは自分の強さにロジックを持ってくれや」
「理屈なんていう甘ったれた屁に頼ってるから、いざという時に狂えねぇんだよ……ぶっ壊れて歪んで腐って……それでもなくさなかったものをかき集めた時にだけ光る何かを……教えてやるよ」
長期化する戦闘の中で、
しだいにペンは『トウシの思考の癖』を読み始める。
『大事なものを守るために死に続けた経験量』で、
――トウシの合理性を踏み越えてくる。
「なんでこのタイミングで前へ出んねん。その行動は流石に悪手やろ」
「悪手を嫌うよな、お前は……合理的で天才だから。『完璧な答え』だけがデフォルトになる。だから、読める……容易くはないが、極限の中でほのかに香る」
「ワンパターンにはしてへんど。呼吸を外す手法も随時取り入れとる」




