60話 悪いな、トウシ。
60話 悪いな、トウシ。
(必要になる計算量は指数関数的に増大する。スーパーコンピュータを銀河規模で並べても足りん。真空揺らぎの中から特定の量子状態だけを引き当てる方がまだ現実的や。10の60乗回に一回成功するかどうかの事象を、あいつは戦闘中に任意発動した。コインを百回投げて百回とも縁で立たせるような奇跡……それを、あいつは偶然やなく技術として成立させとる……)
「そんな顔をするほどのことじゃねぇ。お前なら、ちょっと練習するだけで使えるようになるさ。お前は俺なんかとは比べ物にならない天才なんだから。なんせ、本物の王だから。本当の王様はすごいんだ。知らんけど」
「……」
「お前は完璧な天才で最強。総合力を比べれば、俺はゴミカス……だが……耐久性能に限っていえば、ギリギリ争えると自負している。うぬぼれだと笑ってくれてもいいが……そう簡単に俺は殺せねぇぜ、たぶんな」
「さ、さっきみたいなイカつい技を……連発できるとは思えん。物量で圧殺する……」
そう結論づけたトウシは、エグゾギアの出力をさらに引き上げる。
限界以上に引き出された莫大なエネルギーが各部へ流れ込み、黒い外殻が脈動した。
直後、マシンガンのような異次元砲の連打。
通常なら一発放つだけでも莫大な消耗を伴う最高位の攻撃。
しかし、存在値十垓を誇るトウシにとっては話が別だった。
膨大なメモリとリソースを惜しみなく投入することで、異次元砲の連射すら成立させる。
無数の異次元砲が連続で放たれる。
一発ごとに空間が軋み、重なり合う破滅の奔流が玉座の間を埋め尽くしていく。
無数の破滅が玉座の間を埋め尽くす。
千を超える砲撃。
回避も防御も成立しない物量。
さすがにこれを防ぎきることは不可能。
――と、思っていた時期がトウシにもありました。
「……うそ……やろ……」
砲撃が終わる。
そこに立っていたのは、変わらず生存しているペンだった。
まったくの無傷。
すべて、オメガバスティオンで完全無効化させてしまった模様。
「悪いな、トウシ。この程度の絶望じゃあ、弱音の一つも吐いてやれねぇよ」
「……こ、こんな最悪の想定が当たるとは思っとらんかった」
「ん? どういうことかな?」
「1000以上乱射して……それを全部防がれるなんてことはありえん……とは思ったものの、万が一、億が一のために……用意しとって良かった……これぞまさに、不幸中の幸い」
その瞬間、ペンの死角――
何もないはずの領域外――亜空間から、異次元砲が噴き出した。
トウシは千を超える異次元砲が防がれる可能性まで考慮していた。
狂気的なディレイ。
発射タイミングを遅延させた異次元砲を亜空間へ待機させていたのだ。
次回、センエース死す!
舞い散る閃光「やめて! とっくに俺のライフはゼロよ!」




