53話 完璧な閉塞。
53話 完璧な閉塞。
アサルトアルファがデスゲーム化した直後、『壺とのディスカッションが可能』と気づいたペンは、この問題を解決するための案を思いつくたびに、壺へ確認していた。
『こうしたらいけるんじゃね?』
そう問いかけるたび、壺は楽しそうに答える。
『不可能。なぜなら――』
そして、システム構造の強制力、世界法則の絶対性、魂固定論の強固さ、主観連続性の破綻、管理権限の有無といった無数の要素を持ち出しながら、なぜ成立しないのかを理論立てて説明してくる。
厄介なのは、その説明に納得できてしまうことだった。
壺は、ペンでも理解できるレベルまで噛み砕き、どこに問題があり、なぜ失敗するのかを丁寧に教えてくるのだ。
もちろん、ペンは、説明を聞いただけで諦める男ではない。
実際に、色々と試した。
蘇生案も試した。
権限奪取も試した。
概念操作も試した。
思いつく限りの抜け道を探し、実際に手を動かした。
その結果――全部、失敗した。
「……何かしら、方法があるはずだ……今までずっとそうだった……この世界に不可能は存在しない……」
ペンは、紙束へ視線を落としたまま呟いた。
どれほど強固なシステムにも、綻びはある。
今までだって、そうだった。
絶望的に見える状況は何度もあったが、その度に、突破口は存在した。
だから、考え続ける。
それしかできない。
しかし、アイデアをまとめた紙束が増えるたびに、同じだけ絶望も積み上がっていった。
「ここまで完璧に閉塞的な絶望は、コレまでの永い神生の中でも、一、二を争うかもしれねぇ……」
ガシガシと頭を掻きむしる。
「どうする……考えろ……考えろ……ぐぅ……だめだ……アホの俺じゃあ、会心の一手には届かねぇ……」
背後では、黒いワンピース姿の幼女魔王が、不安そうにペンを見つめていた。
両手には手錠、足には鉄球。
顔色は悪く、今にも泣き出しそうだった。
「……『トウシ』さえいれば……クソォ……」
ペンの口から、血が流れる。
歯ぎしりをしすぎた結果だった。
「あのアホがゼノリカ召喚リストに入ってさえいればぁ……くそがぁ……」
その独り言を、少し離れた場所で聞いていた男がいた。
――アサルトアルファ2から、このアサルトアルファに潜入したトウシだった。
存在認識阻害装備の効果によって、その場に立っているにもかかわらず、誰一人として彼の存在に気づいていない。
トウシは、僅かに眉をひそめた。
(……トウシ? どういうことや? ワシのことか? それとも同名の別人?)
一瞬だけ疑問を抱いたものの、すぐに、
(……まあええわ)




