52話 だれか助けて……
52話 だれか助けて……
轟音とともに、空間が激しく震える。
世界そのものが軋み、白い演算空間が歪み、裂け、悲鳴を上げた。
その中心で、黒い奔流が、トウシを飲み込んだ。
尾部ユニットが最後に一度だけ脈動し、漆黒の外殻が妖しく輝く。
その姿は、まるで深淵へと降り立つ、一柱の神のようだった。
そして、次の瞬間。
トウシの姿は、完全に消失していた。
静まり返った演算空間に残されたのは、
――ゆっくりと消えていく黒紫色の残光だけだった。
★
――魔王城、玉座の間。
そこは、異様な静寂に包まれていた。
高い天井、赤黒い絨毯、左右へ並ぶ巨大な柱。
いかにも『魔王城の最奥』といった造りだが、その空間には、どこか生物めいた嫌悪感が混ざっている。
壁面を走る黒い紋様は血管のように脈打ち、空間そのものも呼吸するように微かに揺れていた。
まるで世界そのものが、巨大な内臓へ変質したかのような光景だった。
その中心で、ペン・ケースは、玉座の前に座り込み、頭を抱えていた。
「マジで方法がねぇ……詰み方がえぐすぎる……」
掠れた声が、静寂の中へ溶けていく。
その背後には幼女魔王が立ち、壁際ではミカン、ユズ、レンの三人が、黙って様子を見守っていた。
周囲には、大量の紙束が散乱している。
絨毯の上にも、玉座へ続く階段にも、柱の根元にも、そして幼女魔王の足元にまで。
乱雑に放り投げられた紙には、びっしりと文字が書き込まれていた。
【魔王を殺害→即時蘇生】
【死亡判定と復活判定のラグ悪用 ゲームならありえる】
【魔王以外の雑魚モンスターへ魔王属性を転移させる】
【プレイヤー全滅によるゲーム強制終了からの全員蘇生】
【いったん第二アルファに帰ってから、神器を使い世界法則を書き換え】
【アサルトアルファ自体を破壊し、再構築】
【魔王を別宇宙(異世界・異銀河)へ隔離】
【Cルートとやらの構造を解析し条件を再改変】
【謎の壺の管理権限奪取】
【アサへの交渉】
【死亡条件バグを発見し利用】
どの案にも共通していたのは、その末尾に書かれた三文字だった。
【不可能】
しかも、単に否定されているだけではない。
紙の余白には、細かな注釈がびっしりと書き込まれていた。
【アサルトアルファでの生死処理が通常世界とは大きく異なるため、蘇生不可】
【魔王概念は世界基盤へ固定済み。ゆえに、いかなる変換技法も受け付けない】
【管理層への干渉は観測時点で遮断。コアネットワークが隔離されているためハックすることも不可能】
すいません<m(__)m>
昨日のまえがきで、クロッカ編もふくめて投稿と間違えて書いておりました。
投稿するのは今日でした。
本当に申し訳ありません(/ω\)




