51話 あんたが代わりに行ってくれるんやったら、ワシは行かんですむんやけど?
51話 あんたが代わりに行ってくれるんやったら、ワシは行かんですむんやけど?
次の瞬間、トウシの周囲に、数十枚ものエアウインドウが展開される。
半透明の情報画面には、アサルトアルファ内部の解析情報が映し出されていた。
構造図、演算ログ、世界法則の変遷履歴、認証階層、防衛構造、座標データ。
それらは、今この瞬間も絶えず変化を続けている。
数秒前まで存在していた経路が消え、新たな構造が生まれ、法則そのものが書き換わっていく。
その様子は、まるで世界そのものが生きているかのようだった。
「不確定要素は山ほどあるけど……流石に、ここまでやれば余裕やろう」
静かに呟きながら、トウシはエグゾギアとシンクロするように呼吸を合わせる。
「ペン・ケースと魔王を討伐し、ゲーム内に閉じ込められとる百万以上の一般人を救出する……これはワシにしか出来ん不可能や」
白い演算空間に、その声が静かに響いた。
と、そこで、良識ある常識的なスタッフの一人が、恐る恐る口を開いた。
「……あの……ミスター・イス……本当に行くんですか? 帰還保証は一切ありません。あなたを失うことは人類史の多大なる損失で――」
「あんたが代わりに行ってくれるんやったら、ワシは行かんですむんやけど?」
合理的で論理的な一刀両断。
スタッフは黙り込み、トウシはあくびをする。
「もうごちゃごちゃ言わんでええよ」
そこで、トウシは『とあるアイテム』の複製にかかった。
《イシコロヴェール》
サトーが愛用していた、認識阻害系のレア装備――その、超強化改造版だった。
「存在認識阻害、感覚同期ズラし、観測優先度低下、脳内補正誘導……ついでに、神経反射レベルでも『気にせんでええ対象』として誤認させるようにしといた。これなら感知されることはない。普通にやっても勝てるやろうけど、念には念を。背後からキッチリ忍殺かましたる」
トウシは、一度だけ深呼吸すると、小さく呟いた。
「……ほな、行ってくる」
直後、アサルトアルファ2とアサルトアルファを接続する、巨大な演算陣が起動した。
白い世界の床面いっぱいに、無数の演算式が展開されていく。
幾何学模様、神経回路、魔法陣、量子演算式。
それらすべてが混ざり合い、一つの巨大な構造体を形成していった。
やがて、中央から黒い光が噴き上がる。
空間そのものが裂け、解析センターのモニター群が、一斉に警告表示へ切り替わった。
『内部領域接続』
『魔王城座標固定』
『存在値変換開始』
『同期――』




