23話 プライド。
本日の2話目!
23話 プライド。
オイタの許しを請うペンの声色は柔らかい。
態度は低い。
ほとんど媚態に近いほど、徹底した下手。
柔らかな声音の裏、ペンの神経は張り詰め切っていた。
いま重要なのは、プライドをかなぐり捨てる事。
アサは、そんなペンを見て、やはり微笑んだままだった。
「問題ないよ、ペン・ケース。私のような『不穏な者』に対して反射的に敵対的行動をとってしまうのは弱者の本能だ」
声質は穏やかだった。
咎める響きはない。
怒気もない。
ただ、事実を事実として述べただけのような平坦さ。
しかし、その一言に含まれる位置の違いは、あまりにも明白。
ペンは、一瞬たりとも間を空けない。
「命の脆さに対する理解度の高さ……さすが、あのアサさんだ。ウワサ通り、器が違ぇや。俺みたいなカスとはランクが違う」
言いながら、ペンはすりすりと両手を擦り合わせる。
揉み手が止まらない。
『わざとらしさ』の向こう側に達したへりくだり。
普通なら、見ていられないほどの低姿勢。
恥も外聞も無秩序に利用する、もはや逆に傲慢な態度。
……レンはなおも動けないまま、目だけで激しく抗議している。
鋭い視線が、突き刺さる。
『さっさと魔法を解除しろ』と。
だが、ペンは一切視線を返さない。
レンの若さは、この状況で無駄に危険と判断。
その張り詰めた空気の中で、ミカンが小さく声を漏らす。
「ちょ、ちょっと……何をしているの? なぜ、レンに魔法を?」
困惑。
理解が追いついていない。
無理もない。
ミカンレベルでは、『レンがアサに対して呪縛を使おうとしていた』ということに気づいてもいない。
ゆえに、ミカン視点では、『ペンが突然、レンに呪縛を使った』という認識しかない。
しかも、目の前には、セブンスアイを使っても存在値が見えない奇妙な言動の子供。
状況の異常性と、仲間内での不可解な行動の連鎖。
混乱しない方がおかしい。
だが、その疑問にペンが答える前に、
ユズが、ボソっと、
「アタシのセブンスアイでも何も見えない……あのアサとかいう子供、言動からしても、かなりヤバそう。本能的に、レンもやばいと思って、反射的にアサに対し魔法を使おうとして……ペンはそれに気づいたから、レンを止めた……そんな感じじゃない? たぶんだけど」
ユズの声は淡々としていた。
だが、その内容は極めて鋭い。
彼女は性格こそアレだが、スペックは極めて高性能。
ペンは、アサから視線を外さないまま、口の端だけでわずかに笑う。
「いい観察力だ。褒めてやる、ユズ。あとで抱いてやろう。光栄に思うがいい」
「悪いけど、アタシ、ナンバーワンの男にしか興味ないから」
短い応酬。
軽薄すぎる軽口で、場の主導権にヘッドロックをかけていく。




