8話 再連なんかどうでもいい。
8話 再連なんかどうでもいい。
「……『妙な感染症』とか、『壊れたモンスターが暴れている』とか、そういう系統の問題点は?」
ゼンバイは視線を外さず、事務的に確認した。
異世界探索部署の仕事は、未知の世界を見つけることだけではない。
できるだけ、最初に問題点を洗い出しておくことも大事な仕事。
「そっち系は……ないですかねぇ。普通の感染症は普通にあるけれど、高次回復魔法なら対応可能なレベル。……存在値のバランスが妙ってだけで……他は普通というか……少なくとも、いま観測できる範囲では、環境災害も伝染系の異常も、目立った兆候はありません」
「じゃあ、予定通りでいいだろ。何か問題が起きたとしても、再連の連中が被害を受けるだけ。よそ者がどうなろうと、正直、知ったこっちゃない」
ゼンバイは淡々と言い切った。
本当に、そこには何の感情も乗っていなかった。
再連の連中を嫌っているわけではない。
期待しているわけでもない。
ただただ、フラットに……関心の外にあるものとして処理している。
「先輩、非情ですねぇ」
ゴーバイが半ば冗談めかして言う。
だがその声には、少しだけ探るような響きが混じっていた。
「素直なだけさ」
ゼンバイはそこで初めて視線を上げ、ゴーバイの方を見た。
「第二~第九アルファを守るために、日夜働き続けてくれている愚連の面々とかだったら、こっちも必要な敬意を払うが……再連の連中は、よそからきて、ひたすら施設内で訓練しているだけだろ? たまに、愚連のメンバーと仕事もしているようだが、それも単なる研修だって話だしな」
言葉は鋭かったが、感情は薄い。
そこにあるのは激情ではなく、徹底した線引きだった。
誰に責任を感じ、誰に義理を感じるべきか。
その境界が、ゼンバイの中では明確に引かれている。
「そんな連中がどうなろうと、知ったことじゃないと思うのは当然だと思うが? それとも、そいつらの誰かが死んで、お前、泣くのか?」
ゴーバイはわずかに視線を逸らし、苦笑を浮かべた。
「……いやぁ、まあ、泣きはしませんけどね……誰一人、名前も知らないし……」
その答えを聞いて、ゼンバイは小さく鼻を鳴らす。
「だろ」
「……上への報告はどうします? なんなら、異常性に関しては記載しないで報告しても構いませんが?」
そんなゴーバイの提案を受けて、
ゼンバイの目つきが、わずかに冷えた。
「あほか。ちゃんと全部記せ。断っておくが、別に俺は、再連の連中を殺したいとか考えているわけじゃないぜ。貶めて苦しめてやろうなんて、まったく考えちゃいない。単にどうでもいいだけさ」
そこは似て非なるもの。
悪意を向けて陥れたいわけではない。
シンプルに興味がないだけ。




